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第154話 光の彼と三種の神器


 その年の大晦日の晩は、見事な満月だった。
去年、たくさん着込んでけーこと出かけた寺へは行かず、今年はあきらと年越しを迎えた。

 除夜の鐘の音に耳を澄ませながらベッドに入ると、やがて肉体は金縛りに遭い、その間幽体は幽体で低層四次元の化け物とバトルをしていた。
 力が拮抗してる。しばらく戦っているのになかなか決着つかなくて、少しずつ焦ってきてしまった。
 ふと、「あなたのいちばん大きな感情は何?」と聞いてみると、「淋しさ。」との答えが返ってきた。
 そうか、と思って理解を示すと金縛りは解け、その人はどこかに行ってしまった。

 スマホを点けるとまだ2時半。
うっかり起きてしまったので、スサナル先生のエゴセルフと他愛もない会話をする。顕在意識本人の自覚はなくてもまだまだ酷い苦しみの中にいる先生を想い、能うる(あたうる)限りの心を込めて、エゴセルフに向け「愛してる」と、そう伝えた。
 そして、「あなたのレイヤーの中で、今いちばん愛を伝えるべき人に私の愛を伝えたいの。」とリクエストしたら、即座に「案内するよ」と応えてくれてとても驚いてしまった。

 エゴセルフさんが案内してくれる『感情体』。どれほど深い場所にいる人なんだろう……。


 現れたビジョンは、意外なことに立派な帆船(はんせん)。
なんとそれは、宇宙空間を航行する大型船だった。ゆっくり、ゆっくりと前進していく様は圧巻で、画面の切り替わりと共に横からも下からも眺めると、見事な曲線が美しい。

 中に入る。
船そのものに向けてと、それからまだ誰にも会っていないけど中の人たちに挨拶をしてから乗り口へ。
「お邪魔します。地球人の、ひみです。」

 ここ、どこの部屋だろう。操舵室なのかな。

 地球人と名乗ったけど、結局そこにいたのはいつものみんな。けーこ、タケくん、それにあきら。まだタケくんとは面識が浅く、おそらく会うのはニ、三回目。

 ねぇところで、スサナル先生はどこ?

 キャプテン席に回り込むと、ようやくライトボディーの彼を発見する。闇に沈んだ彼と会うことを覚悟していたのに、エゴセルフが会わせてくれたのはまさかの高次元の彼だった。
 本当に見事な人型の発光体にしか見えず、個別の顔の造形があるのかすらわからない。けど発せられる彼のエネルギーは間違いなく魅力的だった。
 そしてそんな彼が近づいてくるとハグをしてくれる……のは私にじゃなくて、なんと私の別レイヤーに対して。
 “こっちの私”はただただそれを観察していて、何とも少しだけ複雑な気持ちになってしまったけど、今さっき私が届けたかった彼への愛がこうして“届いた”ことは嬉しかった。


 やがて、“私”に近い周波数帯のスサナル先生から着替えを渡される。船員服のようだった。何だかカートゥーンヒーローみたいだなと思いながらさっそく二人で船外活動を開始すると、レーザー光線が当たってきて、素早く彼に庇ってもらう。
 船、ワープ!

 今度は宇宙を背景に、その船全体のビジョンが視えてきた。そしてその宇宙空間には、にこやかなおじいさんの顔が浮いている。

「わ!おじいちゃんだ!!」

 初めて視る顔なのに、自然と涙が出てきてしまってそれからすべてを把握した。
 私にとっての重要な夢でも現実でも……スサナル先生との大事な局面で今まで出てきてた“おじさん”や“おじいさん”とは、その正体とはリトのおじいちゃんだったのだ!

 リハビリルームに観客席に公園にそれからそれから……ずっと、私のことをいつも守護してくれてたんだ!

「おじいちゃん良かったね。おじいちゃん良かったね。」

 宇宙空間に船が出る。泣きじゃくっているリトと一緒にその様子を見守った。

……

 気がつくと喉がカラカラになっていて、枕元のお茶でも足りなくなってしまい、迷ったけど階下に降りた。
 その時、さっきの化け物は、時々来る配送業者さんだと直感した。その日の満月の光は、年越しという節目の日とも相まって、いつも以上に人心の闇を浮かび上がらせたのだろう。

 再び階段を上がってベッドに転がりカーテンの隙間から空を見ると、逆さま視点の満月が見えた。私の口から「ふははっ」という笑い声が漏れてきた。

「だれ?」

 優しい笑い声と共に、あの綺麗な月はあなただと、スサナル先生の魂が言う。「宇宙一美しいあなた」だと。

「……太陽から出た剣があなたでしょ?月に勾玉があるの?私もそれを手にするの?」

「もう持ってるよ。」

「え?もう私、勾玉持ってるの?」

「うん。持ってる。
勾玉があなた。剣が僕。鏡が地球で、僕らだよ。」

 その言葉を聞くだけ聞くと、すーっと意識が遠のいてしまった。次に気がついた時にはぐっすり眠った後の、少し南に寄ってしまった日の出の光の中だった。




written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

⭐︎⭐︎⭐︎ 

嬉しーい!!うれしいうれしい!!
私、めっちゃおじいちゃん子なんですよ笑
シリウスの笑笑

ここでネタばらしができるのもとても嬉しい!
今までお話に書いた分だけですが、おじいちゃん、実はこんなに登場してました。そしてその全部に、必ずスサナル先生も出てきます。
おじいちゃん大好きだよー!!

初登場→第35話 『約束』
2回目→第65話 『発火』
3回目→第79話 『異世界の日』
4回目→第125話 『歌声に花のひらく』 

この夢の後半で流れていたのは宇宙戦艦ヤマトのテーマソングでした。
ガミラス=イスカンダル(闇=光)だったというあれです。女性側のハイヤーセルフが三次元男性に気づいてくれよと奮闘するあれです。
…といっても、私もあきらの入院中に、小学生向けの文庫で読んで知りました。
記紀にしてもヤマトにしても曲でも芸術でも、世の中、もう一人の自分との統合を求めて足掻いた作品だらけだということがよくわかる。
それだけたくさんの導きに溢れているのにね。みんな勿体ねぇな……。

⭐︎⭐︎⭐︎

←今までのお話はこちら

→第155話 性のブロック

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