第166話 オレンジ色のタンクトップ
スサナル先生の闇感情は間もなく、私に対する当てつけとしてその牙を剥いた。
「あっ、どうも。」
先生の方から私に向かってニコッと声だけかけてくると、彼はそのまま建物の奥へと消えていった。姿勢も堂々として、まるで余裕の素振りだった。初めて見るスーツを着ていた。
うわ、夢にやってきてくれたの、いつぶりだろう。
睡眠中、彼の意識そのものには時々触れることはあっても、顔まで見るのは久しぶりのことだった。そのまま私に構わずに行ってしまったことは悲しかったけど、それでも会えたこと自体が嬉しくて後を追うようについていった。
ここは……、教室だ。うん。中学校の教室。
少し懐かしさを覚えながら、何人かの生徒が自習で居残る教室で、今は女子生徒の学習を見ている彼のことを目で追った。
それがひと段落つくと、今度は彼は大きく「ふぅ」と声を漏らし、取り出したタバコに火をつけた。昔はヘビースモーカーだった彼は、私と出会う少し前にタバコそのものをやめている。
喫煙に頼ることもそうだけど、なんだかちょっと体調が悪そう、不健康そうだなと思いながらそのまま視ていると、後から部屋に入ってきたスレンダーな女性と親しげに会話をし始めた。
その彼女、180センチはありそうなモデルのような美人で、鮮やかなオレンジ色のタンクトップにスキニージーンズ。胸の長さまである巻いた黒髪は美しく、おそらく彼の中での、男性が連れて歩く時には自慢の“ステイタス”の象徴なのだろうと思った。
“私の意識”が観察していることをわかった上での、彼の見せつけ。彼女とお揃いのタバコのケースは親密さを窺わせ、現に二人が並ぶと高身長同士、よく似合っていた。
幸い『嫉妬』感情がかなり軽くなっていて振り回されることが少なかったおかげで、彼の表面上の振る舞いの意図と、さらにもっと奥底にある“窮状”とでもいうべきものが読めてしまった。
「僕は今、“敢えて”古い世界を謳歌してるんだ。選択的に、不真実の世界にいるんだ。だからあなたなんかいなくたってそれなりに楽しくやってるし、そっちが羨ましいなんて思わないんだ……。」
上体を起こしてから首の後ろを掻くと、天を仰いで少しだけ苦笑いをしてしまった。
なんだこの夢。こんなのあの人のSOSじゃない。本当は苦しい、わかってほしいって言ってるじゃない。
オレンジ色とは第2チャクラ。偽りの女性にそれを求めるということは、彼自身の生命力が枯渇していることへと繋がる。改めて、彼の意識に向かってこう告げた。
「あなたの選択は尊重するよ。だからといって絶対に見捨てたりすることはないから、もがきたいだけやりきっておいで。」
彼のことはそれとして受け入れつつも、この夢を見たことで気づいてしまった。一時はサイレントがもうすぐ終わるかもしれないなんて期待してみたけど、おそらくそれはエゴの早計だろう。
三次元的な長い分離は仕方がないけど身に堪える。まだあとどのくらい続くのだろうと、さすがにちょっとだけ落胆した。
……
後日談がある。
何か月も後になってから、この日のことを彼のエゴセルフに聞いてみた時のこと。
この夢の中での振る舞いを、彼はとても後悔していた。嫉妬させようとしたことと、本心ではないのに見せつけたことで“私を傷つけた”と悔やんでいて、そしてまた、見る見る光輝いて昇っていく私に対して焦り、拗ねて、置いて行かれてしまうかもしれないと思うと怖かったのだと伝えてくれた。
ツインレイとは自分の鏡。
この時点で“彼が私に”素直に感情を吐露できたということは、“私が私に”素直になって、“彼も彼に”素直になってきたことに他ならない。
この状態まで自己統合が進んで軽くなってくると、日常生活においてもだいぶ楽に過ごせるようになるのだが……。
私たちがそこまでは行くのは、まだもう少し先の話。
written by ひみ
⭐︎⭐︎⭐︎
実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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ま、しょうがない笑
ツインレイ男性は多かれ少なかれそんなもんです。闇がないほうが不自然。
けーこにこの夢の話をした時も、「やぁねぇ。」の一言で終わったけどそんなもんです笑
100話を越えてからちょっとずつちょっとずつ私が感じていた『彼の私への憎悪』が、この辺から具体的になってきましたね。
もしも今日のお話を読んで「ひみさん甘い、うちの彼は私にもっと酷かった!」って嫉妬や怒りを感じたなら、それはあなたにわかってほしい感情です。内観チャンス到来。
あなたの中に『烈火』がいるということ。
『闇の子』〜『何度も何度も、……』あたりを読み返してみてください。
よく「闇が深そう」とか言うけど、光の人ほど奥に闇を持っていたりします。
『第114話 反乱分子よ気高くあれ』でも書いたけどね。孤高の人ほど闇を学ばされます。本当に尊敬します。
だから大きいツインレイになればなるほど闇も光も多いんじゃないでしょうか。ツインレイをやれる魂とは、顕在意識では誰よりも必死に善であろうと生きていたりするから、周りはもちろん本人さえも、それほどの闇を抱えて生きていたなんてなかなか気づけません。
でもそういう時、“スサナル先生”でいえば、みんなから「いい先生だね」って言われながら事実いい先生であろうと現在意識が頑張っている時。本当はね、生命力なんてカラッカラ。サイレント前であろうと、ボロボロです。
だからこそ彼も自分も救えるのは、そうです。自分だけです。
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