記事一覧
『がんサバイバーシップ学 がんにかかわるすべての人へ』書評
「がんサバイバーの時代における教科書」
評者:勝俣範之(日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授)
がんサバイバーとは,「がんと診断されたときから,人生の最期までサバイバーである。家族,友人,介護者もサバイバーシップの経験によって影響を受けるため,サバイバーに含まれる」。これが,全米がんサバイバーシップ連合の定義です。
日本人のがん罹患数は年々増え続け,現在では年間 100 万人以上ががんと診
『熱、諍い、ダイヤモンド』書評
評者:札幌厚生病院病理診断科 市原 真
そもそも私の心の中にはニヒリズムがあった。「日本に住む私が今さらエボラから何を学べるのか?」と。今あえてエボラ? 専門科をまたぎ,国をまたぎ,文化や人種をまたいだ別世界の話ではないのか? 緒言をめくり,本文をしばらく読み進めてもなお虚無に浸っていた。帯には「コロナ問題を考える上でも役に立つ」という惹句が踊る。まあ,そのへんがモチベーションのコアになるんだろ
書評「誤診の解体 診断エラーに潜む認知バイアス」
『人のふり見て我がふり直せ』を丁寧に導いてくれる
重症患者がみんな救急車を利用してくると思ったら大間違い。救急外来では歩いてくる患者の0.2~0.7%はとんでもない重症なんだ。大動脈解離なんて歩いてくると4.78倍も見逃す。臨床の最前線で働く者としては「勘弁してほしい」という思いに尽きる。医師の勘なんて感度66.2%,特異度88.4%しかないのだから,自分の経験や勘に頼っていたのでは太刀打ちでき
書評「患者をエンパワーする 慢性疾患セルフマネジメントの手引き」
慢性疾患をもった患者さんが,幸せに生きることを支えていくための本
本書は米国では患者向けのベストセラー書籍であるとのことである。本書を読むと,慢性疾患をもちながら,自分が最高の状態でいられるようにする「セルフマネジメント」のスキルは,こんなに多種多様なものがあるのかと驚かされる。
例えば,我々が生活習慣病の患者さんを診療するときに,よく病気や薬の説明に加えて「運動を毎日定期的にしましょう」「(
書評「2週間で学ぶ臨床感染症」
2週間後のあなたはきっと変わっている
「感染症は苦手です」「微生物や薬の種類が多すぎて覚えられません!」「教科書を読んでも頭に入りません!」
私の勤務している大学病院の感染症内科に,実習や研修で回ってくる医学生や研修医の皆さんの口から日々出る言葉である。今でこそ偉そうに指導医として勤務している私も,振り返れば不真面目な医学生時代の試験前夜に同じ思いを抱いていた。その気持ちはとてもよくわかる。しか
書評「フレームワークで考える内科診断」
評者:山田徹 東京医科歯科大学病院 総合診療科
バランスのとれた入門書であり,診断学の名著である後期研修医として飯塚病院でトレーニングを開始した頃,毎朝行われていた臨床推論のカンファレンスでうまく鑑別を挙げることができず,苦労した記憶がある。当時の上司に普段どうやって診断しているかを質問したところ,「まず最初に主訴を聞いた時点でずらっと鑑別疾患が挙がる。その後の病歴からキーワードが出てくるたびに
近刊『終末期ディスカッション』序章その3
まもなく刊行となる『終末期ディスカッション』から,序章(その3)のご紹介です。医療従事者,非医療従事者,すべての方へ。近い未来のあなた自身かもしれません。「もし自分だったら」と想像しながら読んでください。
その3
あなたの父は会社を退職してからも警備員の仕事を続けており,まだ孫たちを肩車することができるほど元気です。耳が多少遠いこと以外は,いままで病気らしい病気をしたことがありません。ご飯も必ずお
近刊『終末期ディスカッション』序章その2
まもなく刊行となる『終末期ディスカッション』から,序章(その2)のご紹介です。医療従事者,非医療従事者,すべての方へ。近い未来のあなた自身かもしれません。「もし自分だったら」と想像しながら読んでください。その2
あなたの母親は認知症が徐々に進行しており,2年前から介護老人保健施設で暮らしています。本当は家で面倒をみてあげたいのだけれど,自分の生活も大切なので,施設で暮らしてもらっています。まだ何も
近刊『終末期ディスカッション』序章その1
まもなく刊行となる『終末期ディスカッション』から,序章(その1)のご紹介です。医療従事者,非医療従事者,すべての方へ。近い未来のあなた自身かもしれません。「もし自分だったら」と想像しながら読んでください。その1
あなたは10年前に心筋梗塞を起こしカテーテル治療を受けてから,「心不全の悪化」で入退院を繰り返しています。前回入院してからは息切れのせいで歩くのが大変で,枕やクッションを肩と頭の下に敷
『フレームワークで考える内科診断』書評
評者:國松淳和 (南多摩病院総合内科・膠原病内科 部長)
思考には「個性/くせ」がある。こう言えば大体皆同意するであろうが,私はこのことについてさらに踏み込んで考えていたことがかつて・・・いや割といつもこのことを意識している。人の見かけは一人一人全然違うし,着ているものも様々。性格も人によっていろいろだよねと言われたらやはりこれにも首肯するだろう。ただ,(考えそのものではなく)考えかたに個性があ