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「アデライン,100年目の恋」という名作映画を観て

こんにちは,物書きになりたかった医学生あさひです。

とてつもなくいい映画でした。ネタバレになりますので詳細は省きますが,あらすじを少しだけ。

ある出来事をきっかけに年を取らなくなってしまった主人公のブロンズヘアの美しい女性アデライン・ボウマンは,実際には100歳を超えているのに29歳として暮らしていました。その事実を知っているのは年老いた娘だけで,バレないように定期的に住む場所や職を転々とし,孤独に時を過ごしていました。そのアデラインの前に,エリスというイケメンが現れ,恋に落ちていく,というあらすじです。

年を取らないというのは,作品中でアデラインも語るところによると,「愛する人と同じように年を重ねていけない」ということがつらいと。周りはどんどん年をとっていくのに,自分だけは若いままで孤独を感じてしまう。このアデラインの孤独をテーマに物語は進んでいきます。

本筋とは離れますが,テーマが切なくてストーリーが面白いというのはもちろんのこと,役者の演技がとんでもなく上手なところも見どころです。主演女優のBlake Livelyが演じるアデラインは,確かに見た目は若いんだけど,表情や仕草に高貴で洗練されたニュアンスがにじみ出てきています。また,エリスの父ウィリアム役のHarrison Fordの熟練の演技にもうならされました。顔の繊細な表情の違いだけで,ここまで観ている人の感情を動かせるというのは素晴らしいことです。また,情景描写がどの場面も素敵です。豊かな自然をふんだんに撮影しており,それがより物語を情緒的に感じさせます。

そして,アデラインとエリスは恋に落ちるのですが,アデラインはやはりエリスのもとを何も言わずに離れることになります。それを悟ったエリスの父ウィリアムの一言がこの映画の全てを表していると言っても過言ではないと思います。エリスがウィリアムに,なぜアデラインが出ていったのか?とたずねている場面です。

ウィリアム;"She isn't capable." 「彼女は自分には無理だと言ったんだ。」

エリス;"Of what??"「何が?」

ウィリアム;"Of change." 「変化だ。」

仮にエリスとアデラインが深く愛し合っても,やがてエリスは年をとり,死を迎えます。その過程を共有できないばかりか,アデラインは年をとることなく,それをただ受容するしかありません。どれだけ苦しくても,年を取らないので死ぬこともありません。変化することも,変化しないことも彼女にとって辛く苦しいことであり,さらに,自分だけが変化せず周りが変化するというミスマッチが生む悲しみにも苦しんできたのでしょう。変化自体が怖いというよりかは,周りに変化があるということによって,変化しないという自分の境遇がより際立って感じられてしまうことが苦しいとも言えます。

また,もう一つの意味としては,アデラインの心情の変化という意味もくみ取れそうです。彼女が誰かを深く愛するという変化をきたすと,愛する人を失うという変化も訪れます。もうそれなら変化を起こしさえしなければ,淡々と日々を過ごせるという境地に達しているのかもしれません。

他にもテーマはありそうなのですが,ネタバレになるため割愛。何度も見たいと思える映画ですし,また年齢を重ねてからも見直したい作品でした。

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