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受験勉強は「急がば回れ」である----本当の効率とは何か (その2)

 皆さん、英語って好きですか。「好きだ」って言える人は相当ラッキーですね。みんな英語で苦労するから。だって、学校の成績がよくて、回りから「英語が得意」と思われているような人ですら苦労しているのが英語なんです。だってね、しょせん日本人なんだからね。「クラスでは一番」だからって、スラスラ読めたりするわけがありません。

 英語というのは、他の教科よりも習得に時間がかかる。一朝一夕には身に付かないという特徴があります。その上、学校の中間テスト、期末テストなどに比べて、大学入試の英語というのは格段に難しいんです。だから学校の成績が悪くないからといって安心していると、いざ受験ということになって模試の問題や過去問なんかを見たら、あまりに出来ないので愕然としますよ。

 それが受験まであと三ヶ月というようなタイミングだったりすると、駆け込み的にどっかの家庭教師センターみたいなところに頼んで集中講座を受けたりしますが、結局のところ大して成績は伸びない、というハメに陥りがちなのが英語なんですよね。
 むろん、こういうことは英語とは限らないわけですが・・・。

 そういうわけで、今回は受験の「短期対策」「直前対策」についてお話ししたいと思います。
 実は、いわゆる「短期」とか「直前」の対策であっても見違えるほど成果が出る場合がないわけではありません。

 そういうケースもあるから、家庭教師センターなどでは「それまで伸び悩んでいた生徒さんが、うちの講師が付いたとたんに、わずか二ヶ月で伸びて合格できた例もあります」なんて言うわけですよね。受験生の不安につけこんだ営業トークです。
 それは、表面的な出来事の説明としては全くの嘘ではないかも知れません。

 しかし、いくら何でも、その新しい先生が全く白紙の状態から、つまりゼロから教えるわけではないでしょう。
 というのは、それ以前から、その生徒さんはいろいろ努力していたに違いないんです。でも伸びなかった、と。それで新しい先生が来たら伸びた、と、そういういうケースはあるかも知れません。しかし、だからといって、伸びたのが派遣された新しい先生のおかげだとは必ずしも言えない。

 むしろ私に言わせれば、そういう場合というのは、実はそれ以前の努力の結果が、たまたまそのタイミングで出た、という可能性の方が高いんだと思います。
 付け焼刃では実力はつきません。努力しても結果がすぐに出ないのはむしろ当たり前なんです。結果が出るのは数ヶ月先だと思った方がいい。
 だから一月、二月になって伸びるというのは、年末に来た新しい先生のおかげというより、十月、十一月の成果がその時に出たということではないですか。

 まあ、新しい先生が内容の整理が上手だったり、説明の仕方が生徒さんに上手くはまって、モヤモヤが晴れるということはあるかも知れません。「知識を点に結び付ける技術」を教えてくれることもあるでしょう。しかし、本当に大事なのは、それ以前のモヤモヤだったり、「がんばっているのに点がとれない」と思い悩んでいたりした、そういう経験の蓄積なんじゃないでしょうか。

 そういうモヤモヤとか悩みとかがあって、初めのうちは言葉にもならないんだけど、それが次第にたまって熟していって、あるところでパッと言葉になったり、展望が開けるときがあるんです。新しい先生がそのきっかけになる可能性がないとは言えませんが、その前に蓄積がなかったら誰が来たってしょうがない。だから、その前の経験の方が実は大事なんですよ。

 そういうわけですから、受験業界的には「うちは短期で合格させます」なんて言うかも知れないが、その「短期」というのは、実はそれまでのあなたの長期の努力に乗っかっているにすぎない。そうでない本当の短期対策なんていうのはあり得ないんです。

 もう一度繰り返しますが、受験業界的にいう「入試直前になっても伸びる」というのは、実は、それまで蓄えて来たけれど目に見えなかった力が、そのタイミングで表に出てきたということです。ですから受験業界のいう「短期対策」なんて過信しない方がいい。ましてや「受験勉強は短期で済ませた方がタイムパフォーマンスがいい」とか「自分でコツコツやるのは時間のムダだ」なんて考えるとしたら、それこそ受験業界の思うツボです。気を付けましょう。

 参考

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