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【フード宅配】ドローンデリバリーがUber Eatsに引導を渡すオーストラリア

「Google傘下のドローン企業がオーストラリア首都特別地域とクイーンズランド州でオーストラリア初のフードドローンデリバリーを実現したことで、Uber Eatsを埃の中に置き去りにする」
(Drone company in Google stable leaves Uber Eats in dust with food delivery firsts in ACT, Qld)

この刺激的かつアイロニーたっぷりな魅惑の一文は先月(2022年1月)27日付で『News.com.au』に掲載されたRebecca Le Mayによる記事「Drone company in Google stable leaves Uber Eats in dust with food delivery firsts in ACT, Qld」のタイトルである。(尚、本稿では敬称などを省略することとします。)

豪州の食料品ドローンデリバリー

ドローンデリバリーは活況を呈するフードデリバリービジネスの大部分を占め、KFCのチキンや美味しいベトナム料理がオーストラリアの空を飛び交うこととなった。

当該地域ではAlphabet(Googleの持株会社)傘下Wing Aviation社によって現在、コーヒー、カレー、ハンバーガー、アイスクリーム、グロッサリー、事務用品、薬局用品、さらにはペットのおやつまで幅広くオンデマンド商用ドローンデリバリーサービス(drone delivery service)が実施されている。

Wing社によると2021年のドローンデリバリー取扱量は前年(2020年)の600%以上の増加となった。

Roll’d Vietnamese

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先月(2022年1月)にはベトナム料理チェーン『Roll’d Vietnamese』がWing社と提携し、新たにドローンデリバリーサービスの開始を発表した。

ケンタッキーフライドチキン

そして約1週間後の今月(2022年2月)7日からはWing社と提携したオーストラリアの『ケンタッキーフライドチキン』(KFC)がKFCとしては世界初となるドローンデリバリーを開始した(KFCはトライアル導入)。KFCの念願だった2013年tweetが遂に実現した訳である。

ドローンデリバリーによる経済効果

シンガポールに拠点を置くコンサルティングファームAlphaBeta社の分析によると、ドローンデリバリーはオーストラリアの小売売上高を2030年までに22億ドル押し上げると試算されている。

ドローンデリバリーでコスト9割削減

また、AlphaBeta社によるとドローンデリバリーの活用によってデリバリーコストは今後10年で最大80〜90%低減すると予測されている。これまでのデータでもドローンデリバリーの配送コストは車両ベースの輸送と比較して約9割低コストとされるので実現の確度が高いと言えるかもしれない。

ドローンデリバリーで環境負荷低減

AlphaBeta社はさらに、ドローンデリバリーの使用によって地上の交通渋滞が緩和されることで二酸化炭素排出量を年間50万〜55万トン削減することができるとしている。エコでクリーンなドローンデリバリーの活用はゼロエミッション(カーボンニュートラル)を推進し、環境負担(環境負荷)低減に貢献する。

野鳥との共存共栄が課題

去年(2021年)オーストラリアの首都キャンベラにおいてWing社のドローンがデリバリーの途中でカラスに襲撃される事件が発生したが、墜落することなくデリバリーを完了している(無事故を続けている)。Wing社は大事を取ってキャンベラにおけるネスティングシーズンのドローンデリバリーを一旦中断していたが、現在では再開されている。今後もドローンと野鳥との共存共栄は課題である。(因みに、日本のマスコミはデリバリードローンがカラスに襲われてサービスを一旦中止したことだけ面白おかしくニュースにしたが、再開していることは報道していない。)

ニュージーランドの食料品ドローンデリバリー

また、隣国ニュージーランドにおいて2016年に世界で初めてピザのドローンデリバリーを行なった『Domino's Pizza』はトライアル第2弾としてFlirtey傘下SkyDrop社と改めて商用ドローンデリバリー契約を締結し、今年から再び実施すると先月(2022年1月)26日に発表した。

ドローンがUber Eatsに引導を渡す

世界ではオーストラリアからドローンデリバリーによる「Uber Eats」やアジア最大の「foodpanda」(日本市場からは撤退)などの地上輸送型フードデリバリー(あるいは「フード宅配」または「食料品配達」ないし「出前」)の駆逐が始まったのかもしれない。

「foodpanda」がシンガポールやパキスタンでフードドローンデリバリーサービス「pandaFly」のトライアルを行なっているように「Uber Eats」などもドローンに軸足を移せるようドローンデリバリー事業に挑戦している。

ドローンデリバリーは環境問題や配送コスト削減、配達員不足などの問題を解決するデリバリーヒーロー(『Delivery Hero』は「foodpanda」サービスを運営する会社の社名でもある)となれるのか今後が期待されている。


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