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23年度は800億円超。Vtuber市場急成長の要因は、キティちゃんにある?

■急成長中のVtuber市場

23年度は800億円超えの市場規模に達するといわれるVtuber市場。前年の520億の1.5倍ですから、市場が急成長していることが分かります。Vtuberが登場したての2017年頃は、Vtuberって流行るのか?という懐疑的な見方も多かったように記憶しています。しかし、それから6年あまりが経ち、にじさんじなど、人気のVtuberを多数抱えるエニーカラー社は設立から5年で上場し、直近の通期決算でも253億4100万円の売上と前年比8割増の成長を見せています。

結果的にVtuberは、めちゃくちゃ流行ってるのですが、振り返って分かるのが、Vtuber市場の成功は、キティちゃんの成功と一緒だなと思うのです。

当時、ひろゆき氏のYouTubeチャンネルにて「Vtuberは流行るのか?」という質問が投稿されたことがあるのですが、これに対してひろゆき氏は「Vtuberだろうが何だろうが、面白い人は人気が出るし、面白くない人は人気が出ない」という回答をしていました。しかし、今になってみると、実像のYouTuberに比べるとVtuberであることが人気を増幅させる装置として働いていたように思います。

■キティちゃんが、世界的に受け入れられる理由


キティちゃんは世界的に有名なキャラクターですが、その秘密のひとつが、キティちゃんの表情にあると言われています。笑っても悲しんでもいないキティちゃんの表情は、観る人それぞれが自分の感情を投影出来るので、万人に受け入れやすいキャラクターなのです。
つまり、実像を抽象化するということは、人々が自分の好みを投影する余地が増えて、好みの最大公約数を広げることが出来るので、ファンを獲得しやすいのです。

キティちゃんは、
実像の猫 → キャラクターにより抽象化 →表情をつけないことによりさらに抽象化
というステップを踏んでいます。

Vtuberに関しても
実像の配信者 → アニメ化によりビジュアル抽象化
という抽象化が行われています。

抽象化されることで、人々の好みが類型化されたアニメーションという型にハマることになり、ファンを獲得しやすい構造が出来ます。

■恋愛ゲームにも、同じ構造がある


ちなみに恋愛ゲームにも同じ構造が存在します。ほとんどの恋愛ゲームは、イケメンたちがイラストで描かれています。これがもし実写だった場合、そこにいる「生身の人間が好きか嫌いか」という選択になり、好みがはっきりと分かれることになります。しかし、イラストにすることで存在が抽象化されるため、「キャラクターのタイプが好きか嫌いか」という風に、解釈が広がるのです。

恋愛ゲームでは、女性が好む男性のキャラタイプが類型化されており、俺様系、年下系、眼鏡をかけてる年上系、など鉄板のキャラ付けに属するキャラクターが必ず登場します。キャラクターのタイプを類型化(抽象化)することで「そのキャラが好きか」ではなく「そのキャラのタイプが自分にハマるか」と範囲が広くなるため、やはり好みの最大公約数を取りやすくなります。

これと同じく、人気のVtuberにもキャラ付けが行われています。お嬢様言葉で話す、決めセリフがあるなど、Vtuberごとにキャラクター設定がされているのです。性格面にキャラ付けをすることにより、ビジュアル面以外でも「好みのキャラのタイプかどうか」という抽象化が行われているのです。

このように、Vtuberはビジュアル面とキャラクター面の2つの面において抽象化が行われるので、キャラクターとして類型化され、ファンが「どのキャラクターの“タイプ”が好みか」という思考により、ファンを最大化しやすい仕組みになっています。

今はキャラ付けがなされてVtuberとして活躍している中の人も、前世の配信者だった頃は、それほど配信が伸びていなかったように記憶しています。

■Vtuberの偶像化=アイドル化


つまり、Vtuberはビジュアルとキャラクター面において、好みが最大化されるように設計された偶像であると言えます。偶像すなわちアイドル化であるわけで、Vtuberはアイドルであると定義することが出来ます。

人気Vtuberを有するホロライブのメンバーは世界のVTuberランキングにおいて、ベスト8を独占するほどの人気です。上位のVtuberはいずれも女性、専用のマネージャーがついて歌やダンスのレッスンを行うという、アイドルさながらの状態になっています。

エニーカラー社とカバー社の決算を見ると、ライブストリーミングでの投げ銭に加えて、グッズ販売やライブイベントの売上が際立っています。Vtuber事務所は、完全にタレントのマネジメント事務所と同義の稼ぎ方をしているわけです。

さらに、ホロライブを運営するカバー社の直近の通期決算資料を見ると、Eコマースの売上割合が伸びています。2022年3月期の売上(204億5100万円)に占めるコマースの割合は52%と5割を超えています。(マーチャンダイジング 35.4% 80億300万円/ライセンス/タイアップ 10.1% 26億7600万円)
Vtuberはキャラクターナイズされており、IPとしてコマースを展開しやすいので、アイドルとキャラクターの良いとこ取りのビジネスが出来ていることが分かります。

ちなみに、YouTuberのマネジメントを行うUUMの直近の通期決算資料を見ると、収益の多くはアドセンスを含む広告収益となっており、グッズの売り上げ(グッズP2C)比率は全体の18%となっています(2023年5月期売上230億8700万円に対して、4QのグッズP2C売上総計は41億3900万円)。実像のあるYouTuberは、グッズ売上などのIPとしての展開が難しいのです。

また、これは仮説ですが、Vtuberは偶像化されている分、高額な投げ銭が発生しても嫌儲の感情を誘発しづらいのではないでしょうか。リアルなYouTuberの場合、投げ銭を頻繁に行うとヘイトを買いやすいような気がします。

このように、Vtuberは偶像=アイドル化することにより、

・抽象化、類型化されることでファンの獲得数を最大化出来る
・推されているので、投げ銭やライブ等の直接課金による売上が見込める
・キャラクターナイズされているので、IPとしてコマースに展開しやすい

など、ファンの獲得の面においても、売上の拡大の面においても良いとこ取りの構造になっています。ということで、今後もアイドル化したVtuberの躍進は続くと思いますが、興味がある方は、下記の記事もぜひ合わせてご覧ください。

アイドルが最強のコンテンツである理由
https://note.com/media_labo/n/n2b0c9106dc66

出典・参考
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3304
https://finance.logmi.jp/378250
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20230512570029/
https://www.businessinsider.jp/post-269879
https://gendai.media/articles/-/107676?page=3
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS71102/ad2b30ff/2592/47ff/a0e7/83363ee48fe3/140120230713522098.pdf


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