見出し画像

VtuberとAIの急拡大に見る、アイドルビジネスの行方

前年比1.5倍で市場が拡大するVtuber。3つの儲けやすい構造

Vtuber市場はめちゃくちゃ伸びており、23年度は800億円超えの市場規模に達するといわれています。前年の520億の1.5倍ですから、いかに急激に伸びているかが分かります。

少し前に、Vtuberは拡大しやすい上に、儲けやすい要素が揃っている美味しいビジネスであるという話をしました。要点をまとめると、以下のようになります。

▼拡大しやすい
・抽象化、類型化されることでファンの獲得数を最大化出来る
→キティちゃんのようなキャラクターは、抽象化されているので人の好みの最大公約数が取れる。構造的には、これと同じ。

▼儲けやすい
・推されているので、投げ銭やライブ等の直接課金による売上が見込める
→ライブ配信で直接課金が見込める上に、キャラクターなので嫌儲の感情(ネット用語で金儲けが絡む活動や宣伝を嫌うことを表す)が湧きづらい。

・キャラクターナイズされているので、IPとしてコマースに展開しやすい
→基本的にアニメなので、グッズ展開がしやすい。(ホロライブを運営するカバー社の売上の5割はコマース売上)

ということで、Vtuberは拡大しやすさ、儲けやすさの構造ができているので、市場が急拡大しているのです。
リアルなライバーを抱えるライブ配信企業は他にもありますが、Vtuber大手事務所のエニカラ社やカバー社ほどの拡大をしている企業はありません。これは、上記のメリットがVtuber特有のものだからです。
さらに、YouTuberをマネジメントするUUUMは、創業から10年で赤字を迎えています。UUUMの所属YouTuberは偶像化されていないので、直接課金やグッズ販売などで儲けにくく、広告収益に頼らざる負えなくなった結果、ショート動画におされて赤字に転落しているのです。

ということで、Vtuber市場は今後も安泰に見えるのですが、ここで思ったのは、このVtuberの構造をリアルのアイドルビジネスにも転用できるのではないか、ということです。

アイドルがVtuber化するメリット


現状、アイドルビジネスはライブの動員とグッズの収益が大きな収益源になっています。そのプロモーションのためにライブ配信を行ったり、ファンとコミュニケーションを取るためにSNSを用いたりしています。
プロモーションやファン交流に割くツールが発達していることもあり、アイドルはそこに割く時間が長くなっています。

現状は、SNSを使って自分の認知を拡大しながら、交流をしてファンになってもらい、ライブ動員やグッズ販売を図るという流れが一般的でしょう。
ここで、実像のアイドルのアバターとして、Vtuberのアイドルを作ったらどうなるでしょうか。

まず、単純に2人に増えるので、自分の露出を2倍にすることができます。さらに、冒頭で説明した3つのポイントの作用により、ファンを増やしやすく、かつ儲けやすいメリットを享受することができます。冒頭の3つのポイントをアイドルビジネスに当てはめると、次のようになります。

▼拡大しやすい
・抽象化、類型化されることでファンの獲得数を最大化出来る
→ファン層を拡大できることになります。例えば、現状のファンが20代の男性がメインであっても、アニメ化することで、子ども経由でファミリー層の認知を取ることができます。

▼儲けやすい
・推されているので、投げ銭やライブ等の直接課金による売上が見込める
→アイドルという仕組み自体がすでに「推す」ための仕組みなのですが、アバターとしてのVtuberも同じく投げ銭やライブ配信による収益を稼いでくれることになります。

・キャラクターナイズされているので、IPとしてコマースに展開しやすい
→アバターとして、Vtuber化することでファン層が拡大するので、キャラとしてのグッズの販売を拡大することができます。

ということで、まとめると実像のアイドルがアバターとしてVtuberのアイドルを作ると、ファン層が拡大する上に稼働が2倍に増えるので、結果としてライブ配信やグッズ販売も拡大するという結果になり得るのです。

とはいえ、Vtuberの中の人は同一だから、稼働が2倍に増えるわけではないと思った人がいるでしょう。アバターのVtuberに、生成AIをかけあわせたらどうでしょうか。

アイドルのアバターVtuber×生成AI


アイドルの声、会話、しぐさなどを学習させて、生成AIと組み合わせたとします。そうすると、リアルなアイドル本人が稼働しなくても、アイドルのアバターVtuberが単体で稼働してくれるようになります。

アイドルがドラマに出演したら本人の稼働を何日も、場合によっては何か月も押さえることになりますが、アイドルのアバターVtuberに生成AIをかけあわせれば、本人の稼働なくアニメーションに出演することができるかもしれません。

さきほどアイドルのアバターVtuberによって稼働が2倍に増えると言いましたが、生成AIを組み合わせることで勝手に動いてくれれば、稼働が無限に増えることになります。1対1でそれぞれファンと向き合って交流するのも、アバターVtuberであれば可能でしょう。

しかし、ここまで聞いて「であれば、最初からAIでアイドルを生成した方が早いのでは?」と思った人もいるのではなないでしょうか。しかし、オリジナルのリアルのアイドルが重要だという仮説があります。

AIはゼロから生み出していない


最近の生成AIの流行とともに、Twitterで人物写真の生成画像を見るようになりました。そして、割と高頻度で起こるのが、そっくりな実態の人物がいるという現象です。少し前に生成AIで作成した架空のグラビアアイドルが誕生しました。しかし、実際のアイドルに酷似しているということで取り下げる事態がありました。

また、一時ChatGPTの回答のクオリティが低くなっていないか、という状況もありました。このときの仮説の一つとして、ChatGPT自体が自ら生成した情報をクロールしてしまい、その結果クオリティが下がったのではないか、という説があります。

つまり、AIはゼロから何かを生みだしているのではなく、過去のデータを洗ってそこから何かを生み出しています。
AIでアイドルを生成すると、実際のアイドルに似ていたり、あるいは色々なアイドルの平均値を取ったアイドル、ということになるでしょう。
今のところ、AIは強烈なオリジナルを作ることはできないので、強烈なオリジナルたるアイドルがいれば、それを基本にアバターVtuberを作成した方が魅力的になるのです。

ということで、生成AIでアバターとしてのアイドルVtuberを作ると、Vtuberの拡大のしやすさ&儲けやすさのメリットを享受できる上に、活動範囲が無尽蔵になるのではないか、というお話でした。

合わせてこちらもどうぞ

23年度は800億円超。Vtuber市場急成長の要因は、キティちゃんにある?
https://note.com/media_labo/n/n73e4cf2a150f


ご覧くださって大変にありがとうございます。サポートいただけたら、大変に喜びます٩(•౪• ٩)サポートいただけましたらメディアの研究費や活力を出すためのおやつ代に当てて良い記事を書いていきたいと思いますm(_ _)m