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得体の知れない何かへの敗北。

最近暑くなってきたので冷房をいれる機会が増えてきた。

私は冷房のスイッチをONにする時に心の中で「負けた」と思いながらスイッチを押している。

私はいったい何に負けたのか。
夏に負けたのか。
電力会社に負けたのか。
はたまた自分に負けたのか。

得体の知れない何かへの敗北。




我慢をすれば今月の電気代だって抑えられるのに。汗をかいたらシャワーを浴びればいいだけなのに。クーラーが効いた部屋にずっといたら体調を壊すかもしれないのに。
己の弱さ。未熟さ。あぁ、クーラーの冷風を浴びながら私は私を追い詰めていく。

私は負けたのだ、と。




ただ、何年か前の自分と比べるとスイッチをONにすることに躊躇いがなくなっている。

そのきっかけになったのはTVで放送されていたお天気ニュースである。

天気予報士が、
「熱中症の危険性があるから我慢せずクーラーをいれていただきたい。クーラーを入れっぱなしにしても電気代は大きく跳ね上がることはない」
といったことを述べていた。

私は熱中症の危険があるのに我慢してはならないという至極当たり前の理論を神様の助言であるかのように有難がり、それを実行するようにしている。

今でもスイッチを押す際には「負けた」と敗北を続けているが、それでも熱中症になるリスクはかなり下げられているのだから敗北も悪くはない。




あの天気予報士のように、得体の知れない何かに負けることを許してくれる存在はとてもありがたい。

海外のドラマや映画でキリスト教徒が懺悔をするシーンを見たことがあるが、あれもこういった類のもので救いがあるのだろうと納得した。

誰かが得体の知れない何かへの敗北を恐れ、自身を苦しめているのなら救ってあげたいとさえ思った。




おい、別に負けたっていいじゃないか!
熱中症で苦しむよりマシだ!
クーラーのスイッチを入れてくれ! 

おい、別に負けたっていいじゃないか!
嫌な上司と思われるよりマシだ!
後輩や部下に自分から挨拶をしてくれ!

おい、別に負けたっていいじゃないか!
別れることになるよりはマシだ!
どうでもいい喧嘩をしたなら先に謝ってくれ!

おい、別に負けたっていいじゃないか!
死んでしまうよりはマシだ!
辛い人生もどうか生き抜いてくれ!

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