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美容院で身を任せられない話。

美容院や床屋さんで、洗髪などをするときに使われる「背もたれが倒れる椅子」、あれがとても苦手だ。
物心ついてからあの椅子に素直に身を任せられたことがなく、あれに座るととても疲れてしまう。
わたしは定期的にパーマをかけたり髪を染めたりするので、美容院に行く頻度は多いのだが、いつまで経ってもあの椅子には慣れない。


まず「(背もたれを)倒しますね」と美容師さんに声をかけられると、いよいよか…と自分の腹筋に力を入れる。
そして倒れていく最中、ギリギリまで自分の腹筋で体勢を維持しながら倒れていく。その間、決して背もたれを信用していないし、頼っていない。
もうアカン…となった時点で背もたれに自分の体を預ける。間違いなく疲れる。

逆も同じだ。
倒れている姿勢から体を起こす作業のときも、可能な限り自分の腹筋で起き上がろうとしてしまう。
たぶん起き上がるときは、多少背もたれの力を借りているんだけど、最後の方は自力で起き上がる。やはり疲れる。

とにかく倒れるときも、起き上がるときも無駄に緊張してしまう。
相手を信用していないわけではない。
ただあの椅子のあの背もたれが信用できないだけなのかもしれない。これに体を預けて上手に倒れられなかったらどうしようとか、脱力しすぎて起き上がれなかったらどうしようとか、どうしようどうしようの不安だらけだ。(倒れた後に、自分で丁度いいポジションに変更することが主流との説もあるが、これも上手く出来る自信がないし、美容師さんを待たせることが忍びない…)
何十年と担当してもらっている美容師さんであっても、その不安だけは拭い去れない。


ちなみに、これはよくある話かもしれないが「かゆいところ/気持ち悪いところはありませんか?」という質問。
もちろん答えはオール無しだし、あったとしてもわたしはそれを主張できない客だ。気になっても我慢、ひたすら我慢。
だから美容師さんにも、この人は主張しない客だからな、という暗黙の了解でその質問はせずに洗髪して欲しいくらいである。
仰向けの状態で「(かゆいところ)ありません」「(気持ち悪 いところ)大丈夫です」と答えるのは少々難儀なことだし、気を抜くと変な声で答えてしまいとても恥ずかしくなる。

パーマやカラーが仕上がった時も、まじまじと自分を見れない。美容師さんが施術後のわたしの髪について何か説明を始めたり、鏡を持ってきたりして初めて自分の姿に目を向ける。
なぜなら、まじまじと見ている姿を美容師さんに見られ「どうですか?」などと訊かれた場合、瞬時に素敵なコメントが出来なかったらどうしようとか、どんな表情で自分のヘアスタイルを見たら良いんだろうとか、またどうしようどうしようの不安だらけだからだ。


だけど、最近ようやく雑誌の『占いページ』を恥ずかしがらず読めるようになった。なんで?って、 本当になんでなんだろう。
そんなこと誰も気にしていないよ、ということがどんどん気になっていく。とめどないわたしのダサいところ。
ヘアスタイルを格好よくしたくて美容院に行くわたしはめちゃくちゃダサくて、無駄に疲れて、また一段とダサさに磨きをかけて美容院に足を運ぶ。髪の毛はそのダサさのカモフラージュなのかもしれない。

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