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ヤマモモジャム(仮)

ある日、ヤマモモでジャムを作った。
なぜヤマモモ?業務スーパーで何の考えもなく買った、冷凍ヤマモモを持て余していたからだ。調べると、ジャムにすると甘酸っぱくていい感じとのこと。
そこで、電子レンジでジャム作りに挑戦した。しかし、失敗した。いつまで経ってもテクスチャーはシャバシャバ。ジャムは鍋でことこと煮込むのが一般的な作り方であるのは知っている。が、電子レンジでも作れるというレシピがいくつかあったため、今回はそちらを採用した。結果、ヤマモモジャムというよりヤマモモシロップのようなものができた。果実とシロップが完全に分離し、冷めてもとろみが見られなかったため、諦めてこれを完成とした。

次に、このヤマモモジャム(仮)を使ってパイを作ることにした。
わたしはパイが大好き。特にレモンパイが大好き。実は最近も、2回ほど国産レモンを使ったレモンパイを作り、大成功した。上にはメレンゲが、下にはレモンカードがたっぷり入った、素晴らしいパイだ。レモンのさわやかな香り、甘酸っぱさのバランスが最高のパイである。1ホール作ったのだけど、いずれも2日で食べきった。一番最初に作った時は、初日に3/4食べきってしまったほどである。
そんなパイ好きのわたし、このシャバシャバヤマモモジャムを用いてパイを作ることを思いつくのである。つまり、瓶の中で分離している「果肉」の部分をパイ生地にサンドさせ、焼くというもの。途中、ただこのジャムだけを挟んだパイでは寂しいかもと思い、一部のパイにはチーズも入れてみた。パイは全部で5つ、そのうち3つがチーズ入りのヤマモモパイであった。

しっかり美味しく焼けて欲しいので、パイ生地の表面には卵白を塗る。おかげで、つやつやと素敵な輝きを放つパイが完成した。さらさらとしたシロップがパイ生地からはみ出たことで、パイの底に少し焦げ目ができてしまった部分もあったが、それでも焼き加減はちょうどよく我ながら良い仕上がりである。

どんな食べ物も、作り立てが一番美味しい。ということで、少し冷めるのを待ったあと、わたしは早速パイを1つ食べた。美味しい!ヤマモモジャム(仮)とパイの相性はバッチリだ。甘酸っぱさと、バターのきいたパイの香ばしさが絶妙にマッチしている。
この出来立てパイをすっかり食べ終えたあと、「次はチーズ入りのパイが食べたい」と思った。どうやら、先ほど食べたのはジャムのみが入っているノーマルタイプのパイだったようだ。そこで再び、天板に乗った4つのパイを物色する。チーズ入り・無しの区別を明確にしなかったものだから、どれがチーズ入りパイか分からない。1つひとつ手で持ってみて、一番重そうなパイを選んで食べることにした。

美味しい!
でもチーズの、あの独特なまろやかさとしょっぱさはしない。どうやらまたもや「ノーマルタイプのパイ」を選んでしまったようである。
しかしここまでくると、もう引き返せない。チーズ入りパイの味が、知りたくてたまらなくなってしまったのだ。それにパイは3/5がチーズ入りなのである。すでにノーマルタイプを食べ終えてしまったので、残る3つのパイは全てチーズ入りということ。次こそは間違いなく、チーズ入りパイを味わえるのだ。
いささか食べ過ぎでは、と思いつつも、わたしは天板から1つのパイを取り上げる。今度こそ………。

美味しい!
でもチーズの味は、しない。3つともまったく同じ味わいなのだ。高温で焼き上げることによって、チーズは完全にとろけパイ生地と同化してしまったのだろうか。とにかく、期待したような”チーズとジャムの甘じょっぱい味わい”みたいなものは一切得られなかったのである。そして、いたずらに続けざまに3つのパイを完食した、という自分だけが残った。

冷凍ヤマモモはまだ残っている。
今回のジャムもパイも悪くなかったけれど、次回は鍋を使ってジャムを作ろうと思うし、チーズ入りのパイには目印を付けようと心に誓った。

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