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ヨガにキレる。

わたしは母と定期的に小さなヨガ教室に通っている。母も60代半ばだし、わたしもアクティブなヨガの動きはハードルが高いため、いつも骨盤を調整するヨガのレッスンを受けている。(これは内臓のバランス、ホルモンのバランスを整え、肩こり・生理痛・便秘といった体質改善に効果がある)

そして先日、わたしたちはいつもと違うヨガのプログラムを受けてきた。その名も「ヨガニドラ」。わたしが今から書くことはこの「ヨガニドラ」を批判していると捉えられるかもしれないのだけど、結果的にこのレッスンは意図せぬ自分を発見することに繋がってしまった、ということを書きたいので、読み手が不快にならないことを願っている…。


今年に入り、わたしはヨガに行くペースが落ちていたのだが、4~5月にかけて鬱屈した精神状態になってしまったため、再びヨガに足を運ぶようになった。体を動かすこと、呼吸を整えることは、弱っている体に非常に効果があったし、上手く呼吸ができなかった自分にとってヨガはとても気持ちが良いものだった。そんなわたしを見て先生が「ヨガニドラ」というレッスンを新たにはじめたので、受けてみてはどうかと勧めてくれた。

ヨガニドラとは『究極のリラックスヨガ』『眠りのヨガ』などいろいろな呼び方があるが、起きているときと寝ているときの間の状態、まどろんでいるような状態を作り、声のガイダンスに従いながら瞑想を行なうヨガのことである。(とてもざっくりなので、詳しいことはネットで…!)

わたしと母は喜んでそのレッスンを受けることにした。普通のヨガの中でも最後にシャバアーサナという無音でリラックス(瞑想)する短い時間があるのだが、わたしはその短時間でさえリラックスできない意識ガチガチ体質だったので、ぜひそこで本当にリラックスしてみたいものだ!と楽しみにその日を待った。


当日、薄暗いキャンドルの光に包まれた教室で、レッスンがはじまった。先生から一連の流れを説明される。そしてヨガの流れの中でサンカルパという自分の意思を誓う場面があるそうで、願い事を一つ決めてくださいと告げられる。(ちなみに「○○したい」ではなく「○○する!」と願うのだそうだ)この時点で「ん?」となっているわたし。しかし周りは盛り上がっていて、前回このレッスンに出たという女性が、実は前回願ったサンカルパが叶ってしまったのだと話を披露。また、その願いは2つあって迷っていたのだけど、いざ意思を誓うというときになると、自然に願いが1つに絞られるのだ、とも。周りのヨガニドラに対する期待はどんどん膨らんでいく。反対にわたしは完全に置いていかれる。

いざヨガニドラがはじまっても、願いごとをどうするかと、先生の言葉1つ1つを全て聞き逃さぬようにとで、逆に意識が冴えわたっていた。ちなみにヨガ中に寝てしまっても効果があることは立証されているらしい。それも、ん?の1つではあったかもしれない。

前半は少し体を動かし、後半は仰向けのリラックスした状態で、先生の声のガイダンスを受ける。先生の指示で体の各部位に意識を向けたり、頭の中でイメージを浮かべたり、例のサンカルパで自分に誓う場面もあった。わたしは一瞬まどろんだようだが、そんな自分に驚いて逆に意識がはっきりとしてしまった。すると、いろいろとイメージすることも難しくなってしまい、結局そんな感じでズルズルと最後までレッスンを受けた。


そして、ここからだ。

レッスンが終わると、生徒のみなさんは静かな興奮状態に包まれていた。先生が一人ずつに感想を聞き、各々が自身の体験について喜びに溢れた口調で報告する。実際どんな体験するかというと『体と意識が離れ離れになる』ような感覚を覚えるそうだ。頭に意識はあるのに、体は言うことを聞かない。体が寝ている…それこそが究極のリラックス状態なのだとか。

しかし、なぜだろう。わたしはめちゃくちゃイライラしていた。周りの声が煩わしく、分かち合う時間などいらないから早く帰らせてくれ、とすら思っていた。最初それは、わたしが思ったほど効果を得なかったからか、期待値が高すぎたからだと思っていた。が、どうやらそれだけではないらしい。

なぜ、みんなはこんなに手放しで身を任せられるのか。この先生にも、このヨガにも。もちろん先生も生徒の方たちも嫌いではない。しかし、わたしはどうしても全てを任せることができなかった。なぜだか分からないけど「わたしの体はわたしのものだ」と怒っていた。わたしも体と意識が離れているような感覚が少しあった。しかし、当の意識の方が「コントロールされるな!」と警告するかのようにわたしを寝かせなかったのだ。

わたしってこんなにも懐疑的なのかしら?そんなことはない。人の話はすぐに信じてしまうし、うそもつかない方だ。ただ「頑固」だ。簡単に人の言うことを聞かないとはいえ、こんなところで頑固にならなくてもいいのに。ヨガなのに。これは、ヨガなのに。


その日、わたしはヨガに行ってこんなにイラついて帰るなんて初めてだ、という戸惑いと、イラつきを鎮めるべくスナック菓子を買って家に帰った。バリバリバリバリと一気に菓子を食す。一息ついて、ヨガでリラックスできる日などくるのか、お前は損なやつだな!と、でもそんなに怒れるくらい元気になって良かったじゃないか!と心の中で、自分で自分と固く握手をしたのだった。

#エッセイ #ヨガ #頑固 #リラックス #意識

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