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映画「ダイ・ハード」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第9回

ジョンの奥さんの胸元が気になる
1988年公開映画「ダイ・ハード(DIE HARD)」の指輪
文・みねこ美根(2018年7月1日連載公開)

 ハリーポッターのスネイプ先生役で有名なアラン・リックマンの映画デビュー作がこの映画だ。アラン・リックマン。あの素敵な声と立ち振る舞いは唯一無二。口角が良い。映画冒頭から27分ごろ、タカギ社長にエレベーター内で話しかけるシーンで、ふわりと笑うところがある。鼻で笑いながらにやりと口角が大きくひき上がり、まとう空気が少し動く。なんて素敵な微笑み。これほどまでに紳士的で、品と教養を備えた、魅力的な悪役があっただろうか!アラン・リックマンになら何をされたって構わないわと思っていたが、2016年に亡くなってしまった。一抹の乙女の夢を胸の奥底にしまい、生きています。

 ダイ・ハード…。素晴らしい題名。これを「死なない男」とか「不死身のあいつ」みたいなだっさい邦題にしなかった人たち本当に偉いよ。このヒットを受けてシリーズが続くが、この1作目、傑作すぎるのだ。これから見る人にはぜひ字幕での視聴をお勧めする。吹き替えの「なんでぇちくしょーい!」的なアレは、実際のブルース・ウィルスの声とはだいぶ違うのだ。もっと可愛いおとなしい声で、もっとカッコいい。そして現に、若いブルース・ウィルスはとってもカッコいい!今の無敵じじい感も悪くはないが、当時の彼は少し弱々しげなところもあり、人間味あるこのキャラクターがぴったり合う。作品がシリーズ化してしまうと、「まあ、最終的には死なないだろ…」という映画を見るにあたっては弊害となる安心感が出てきてしまうが、その点、第1作目、もちろん作中の見事な演出も相まって、「やばい…ジョンが死んでまう!」というハラハラドキドキ感があるのだ。奥さんとうまくいっておらず、高所恐怖症、というちょっと頼りない描写からの導入も、非常に憎い見せ方だ。事件に巻き込まれたあとの奮闘ぶり、必死さ、そして頭の良さ、独りぼっちで途方に暮れ、心が折れそうになる姿に、自然な感情の起伏を見ることができ、とても現実味があって、応援せずにはいられない。「おとぼけ、ドジ、天才、狙撃の名手」といったような無理なキャラ付けがないのにもかかわらず、ジョンの人柄はしっかり描かれている。

 運転手、トランシーバー越しの相棒パウエル、ジョンの奥さん、テロリストたちなど、ジョンのいないシーンもしっかり面白い。無駄なところがないのだ。そして、警察やFBIのすっとぼけ加減や、記者が余計なことをしやがるシーンなど、意外なところでもハラハラさせられる。我々にはジョン・マクレーンしかいないと気づかされる。

最近公開されているアクション映画は、銃を撃つ音・衝撃の爽快感を描くもの、大量の敵と一斉に戦う無敵の主人公が平然とした顔で殺戮を行うものが多いような気がする。ひとつのアトラクションとしては面白いかもしれないが、ストーリーが薄くならないようにしなければいけない。30人の人質、愛する妻を救うことに加えて、自分の命がかかっている状況での殺人、同じ「殺し」を描いていても本作では重みが違うのだ。

 ひとまず、アラン・リックマンが素敵すぎる本作、ブルース・ウィルスを応援しながら、アランにうっとりしよう。
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モチーフ…ナカトミ・プラザ、消化器のホース、 クリスマステープでくっつけた拳銃、 手下の死体とジョンのメッセージ、ジョンの裸足とガラスと血だまり
音楽:「Let It Snow!」 Jule Styne(オルゴールver. cover)

オルタナティブ・シンガーソングライターの〝美根〟です。
作詞作曲をして、ギターとピアノの二刀流で唄い、自分の世界を届けています。
「みねこ美根」名義で活動していた2018年から、OKMusicさんにてweb連載を続けてきた「映画の指輪のつくり方」。
たくさんお世話になったOKMusicさんのサイト運営終了に伴い、noteに移行して連載を続けています。
毎月、大好きな映画から一つ選んで、それをテーマに指輪を制作。
勝手に皆様へお薦めするレビュー文章、制作作業動画を公開中。動画では劇中歌のカバーも。ぜひ、楽しんでいってください。
私の本業である音楽活動など、さまざまな情報はこちらのリンクからがとても良きです。
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オルタナティブ、ライブ活動、ランプ、弾き語りスタイル、バンドスタイル、耳と脳にこびりつく作品たち、心火、焔心の砦、美術館でも展示された指輪たち、自作ストップモーションアニメ、MV、毎週水曜生配信番組、2024年5月24日と6月9日のワンマンライブ、人生初の弾き語りツアー・・・
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