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理屈じゃないスパイス

実家で暮らしていた時は、そこに人がいるのが当たり前で、「暇」と一口に言っても、家でゴロゴロ、ご飯食べる、テレビ見る。その動作一つ一つに誰か人がいる。ゴロゴロしてても、母は話しかけてくる。ご飯は母が作ってくれてみんなで食べる。テレビを横で妹も観てる。そこに人が居るんだな。と当たり前のことに気づいたのは、一人暮らしを始めて3年くらい経ってからだった。

1人の「暇」は、究極だ。何もしないと本当に無。1人でゴロゴロ。自分で作ったご飯を1人で食べる。1人でテレビを観る。当たり前だけど、そこに自分しかいなくて、LINEの着信だけが、外に人がいることを実感させる。何をしてもいい、何を食べてもいい、そんな自由と引き換えに手放した「人と共有する」という事。

果たしてそれが良かったのか、よくわからない。実家に帰れば、ずっと人がいるのがしんどくて、やっぱり1人の空間が欲しくなる。でも、1人の家で、1人で作ったオムライスが上手にトロトロに美味しそうにできた時、写真を撮って送ってしまう。母へのLINEでは満足せず、SNSにもあげてしまう。わぁ美味しそうって踊る気持ち。オムライスを目の前にして、あぁもうお腹すいた、早く写真撮って食べよって、そわそわする、その瞬間を共有したい。1人の空間が良かったはずなのに。

一口。綺麗にパセリに彩られて、半熟の艶々光る卵の黄色が最高に美味しそうだし、確かに美味しいのに、実家で母と練習した、ボロボロのオムライスがなんだか恋しくて、ぼそぼそした食感、焦げてチャーハンみたいになったチキンライス、失敗しすぎて笑ったり、これは理屈じゃない隠し味なんだな……って漠然と考えながら、さっき母に送ったオムライス写真の下に「美味しい😊」って送ったら「美味しそうだね!」って母から。次の一口は、やっぱりさっきの一口より美味しくて、次は、実家で作ってシェアしよって心の中で思ったりした。

#おいしいはたのしい #家族 #1人の時間 #料理 #一人暮らし

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