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【1091日目(火〜日)~ 徒歩で日本縦断28〜33日目(ろくファームで6日間の滞在)~】

こんにちは、ツカマコトです。北海道の宗谷岬から九州の屋久島まで、日本縦断を徒歩で挑戦中の33歳です。

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つぶやき文庫♯1091
〜 2人が作り上げたもの 〜

出迎えてくれたのは夫婦と2人の子供、それから3匹の犬と2匹の猫。山羊の家族と、たくさんの鶏たち。何年か前に一度訪れたことのあった旭山動物園、その裏手に自宅を構えていた”ろくファーム”さん。縁あって、しばらくお世話になったここでの数日間を写真と共に。

ひと気の無い山間を抜け到着してみると、木造の建物が急傾斜の山に沿って、7棟ほど建てられていた。驚いたのは自宅である居住スペースはもちろん、動物たちが過ごす小屋や納屋まで、山を切り拓くところから作り始めたということ。現在は小学校6年生になる娘さんが、まだ生まれて間もない頃から作業に取り掛かり、諸々10年近く掛かったらしい。

自宅に入っても、今度は内装のクオリティに驚かされた。2階が吹き抜けになっていて、高い天井まで見通しの効く造りになっている。大きな窓からは自然光がたっぷり入ってくる。これらを、旦那さんがほぼ一人で完成に漕ぎ着けたという。僕が寝泊まりしていた部屋には、朝一番に朝陽が差し込んできた。

【5泊6日で経験できたこと】

〜チェーンソーによる間伐と薪作り〜

自宅下の斜面には所々に木が生えていて、雪の重みでへし曲がった木や、朽ちている木もある。それが野草の成長を妨げたり、放牧している山羊の怪我なんかにも繋がったりする恐れもあるため伐採していく。木の根本部分から、細かく枝分かれした木々を伐採していく。

チェーンソーの使い方を教わってすぐ、自分で木を切っていった。無駄に力を入れようとせず、基本的にはチェーンソーの重みで切っていく。慣れるまで少し時間は必要だったっけど、切る時の機械音がうるさくないらしく、初めてにしては上手だと褒められた。意外なところでセンスを発揮。伐採した木の太い部分は、薪として使える長さになるようさらに細かく切った。

別日には応用として、椅子作りにも挑戦させてもらった。切り株の底面からチェーンソーの刃先を、Vの字になるよう差し込みを入れていく。それを繰り返し、少しずつ中身をくり抜いていく。こうすることで木の重量が軽くなるのと、乾燥を促し木が腐らないようにする。結果的には、刃先を差し込む角度のミスで、一部木を貫いてしまった。ただ、これも味のひとつ。出来上がった椅子は数日乾燥させ水分を飛ばしたのち、自宅に発送してもらえることになった。ちょうど気温が上がり始めたこともあって、不要な洋服も一緒に送ってもらえることになった。有り難い。

〜薪割り〜

使わせてもらった斧が重く、振り下ろす時のコントロールが定まらなかった。ただ、これもしばらく繰り返している内に、力むことなくうまく薪を割れるようになった。単純で簡単なイメージの薪割りだったけど、これは意外に難しかった。枝が生えていた節の位置の確認や、丸太の太さによっては分割して切る必要があったり。斧を振り下ろす動作は特に重要で、誤って足を斬りかねない。単純に見える作業にこそ、細かいポイントが多かったりする。

〜刈り払い機を使って草刈り〜

周辺に生えている草の中でも、得に成長が早いハンゴンソウという植物。放っておくと、在来の植物の生息域を縮小させたり、地面に日光が届かなくなり土の環境に悪影響を及ぼしたりする。すでに広範囲に生息するハンゴンソウを刈り取ることで、成長をリセットする。広範囲の草刈りは、何時間にも及んだ。けれどその甲斐あって、生い茂っていたハンゴンソウが随分とスッキリした。

〜トマトの苗植え〜

ビニールハウスで管理している畑があって、そこにトマトの苗を植えていく。トマトの苗植えにはちょとしたポイントがある。花房という部分があって、これを通路側に向けて植える。こうすることで最終的にトマトが実った時に収穫作業がしやすくなる。また脇芽が生えてきたら、成長の妨げにならないようカットしておく、そんなことを学んだ。畑には一部、赤アリが繁殖している部分があって、そこは土が面白いくらいにスカスカになっていた。こうなると根が伸びないので、土としては駄目みたい。これも無農薬の定め、、。

〜鶏の締め作業、そのあとの解体〜

締めるというのは、食用としての鮮度を保つために急所を一撃して一気に殺すこと。お世話になった”ろくファーム”さんには、100羽を超える数の鶏が飼育されている。鶏小屋は3棟あって、それぞれ1年〜3年目に振り分けられている。卵を産むという役割の鶏も、成長と共に卵を産む個数が減ったり、産む卵の質が悪くなったりする(産み落とされたもので、卵が柔らかいままのものがあった)そうしたものから、食用として締めていく。僕が締めさせてもらったのは2羽。

締める作業を行う前に、少量のお酒を飲んで身を清める。庭から見える旭岳に向かって、命をいただく事に対する感謝の意を唱える。”ろくファーム”では、鶏を締める前に必ずこの祈りをするらしい。命をいただくことに対しての、向き合い方がまるで違っていた。

生きた鶏を籠から取り出し、台の上に乗せる。片膝をつき、もう片膝の裏で台の上の鶏の動きを抑え込む。左で鶏の目を覆い、右手で鶏の首元を撫でる。刃物を当てた時に、鶏が暴れ出さないよう事前に慣らしておくため。鶏の動きが落ち着いたら、右手に刃物を持つ。そして首元にある動脈を一気に掻っ切る。すると大量の血を流しながら、鶏がしばらく暴れる。その間、力いっぱい動きを抑え込む。鶏が力尽きたら、首を落とし逆さに吊るし血を出し切る。

そのあと事前に沸かしていたお湯に鶏をつけ込む、温度は63度。少し浸けたら出して、今度は羽を根本から抜いていく。お湯につけることで、羽がするすると抜けていく。

羽を抜き、そのあと更に細かな仕上げ作業があるらしいけど、そこはプロの仕事に任せた。それから解体へと続く。各部位ごとに分け、内蔵を取り出すまでに僕は1羽1時間以上も費やした。一匹を食べれる状態にするまでの手間暇を思い知った。

ちなみに。
僕が鶏を締める前も締めたあとも、動悸がしばらく治らなかった。そのくらいには動揺していた。

〜ナメコの種菌植え〜

敷地内にある切り株に、ドリルで小さない穴を空けていく。一つの切株に対して等間隔にいくつも穴をあけ、そこに種菌を打ち込む。

〜山羊の乳搾り〜

これはなんとなく指の動はイメージできると思うんですけど、これが実際にやってみると思うように乳が出てこない。乳房の根本を力強く人差し指と親指で挟み、その状態で中指と薬指を根本から波のように動かし、乳を押し出すように搾っていく。が、やっぱりうまくいかない。毎日おとなしい山羊を搾らせてもらったけど、納得できる搾りを実感できたのは最終日だけだった。乳搾りは毎日行うことが必要で、搾らないと乳房炎になってしまう。小山羊が飲み干せば問題ないけど、飲み干せるほどの量ではない。なんだかんだで1回の数頭の搾乳から、2リットルくらいはミルクを絞ることができる。

ちなみに僕は牛乳がめちゃめちゃ大好きだけど、お腹が極端に弱い。牛乳を飲んだ15分後にはお腹を下してしまうほど。けれど、山羊のミルクではお腹を下さなかった。それは山羊のミルクが母乳に近い成分を有しているからだそう。

まだ小ネタはあって、ヤギの肉やミルクは匂いの癖が強い。なんて僕も聞いたことあるけど、あれはオス山羊の男性ホルモンが影響しているという。今回食べさせてもらった肉もミルクにも、嫌な臭みをまったく感じなかった。というのもオス山羊はすべて去勢しているから。

〜山羊の爪切り〜

山羊の足にも当然ながら爪が生えている。家畜の山羊は草の上なんかの柔らかい地面の上を歩くからを爪が削れることなく、凸凹に爪が生えてくる。それらを整えていく、山羊の動作や健康城上の問題を回避するための大切な作業。爪切を切る時、僕は山羊が暴れるのを抑える役割に徹した。オス山羊はとくに力が強くて、横に動いたり前に突っ込んできたり、抑えこむだけで汗だくになった。

【自分自身の自然体験を通じて感じたこと】

僕自身は田舎育ちで、かなり自然体験を育んできた方だと自負している。実際、雑談の中で僕の話に夫婦が目を丸くすることも何度かあった。けれど”いきもの”に関しては、まるで関わり方のレベルが違う。自分で育てたり、育てたものを食べたり、そんな経験を全くしたことがなかった。実際にこのファームにいる小学生の女の子は、ずいぶんと幼い頃から鶏の雛の世話が担当のようで。これまですでに、100羽以上も育ててきたらしい。その経験がこれからの人生にどんな影響を与えるのかはわからないけれど、きっと素晴らしい経験に違いない。

【食卓に並んだもの】

毎日、毎朝たくさんのご飯を食べさせてもらったけど、お米以外は全てこの家で採れたものだった。ほぼ全てが自給自足で、完全無農薬。この数日ずっと、本当に体にいいものを食べさせてもらっていた。普段の僕からは考えられないようなメニューばかり。身体もそうだけど、心まで健康になった気分。買って食べるという当たり前の感覚が、ここに来てからしばらく忘れていた。

この数日、本当の意味での”いただきます”を経験させてもらった。

【海外の話】

この地に山を切り拓いてまで住もうと決めたのは、最終的には奥さんの意思によるものだったとか。そこには結婚する前の旅が影響していたようで、そこで見た風景と、ファームから見えた風景に近いものを感じたからだそう。まだ結婚もしていなかった頃の、二人で旅した海外での話。その時に訪れたチベットとネパールで体験したことや、目にした風景、人との関わりに強く影響を受けたと言っていた。金銭的に見れば貧しい、けれどものすごく豊かだった。と、当時の印象を語ってくれていた。人と自然が共存する環境の実現に向け、日本に戻り必要な知識と技術を身につけ今の暮らしを実現させている。当人はそんな表情を見せなければ、言葉も吐かないけれど、決して大変なんてものじゃなかったんだろうな。僕には想像もつかないくらいに。

この時の旅で、二人がやらずして後悔していることがある話も聞いた。チベットを超えるルートがあるらしく、そこも行っておけばよかった、と。だからいつか僕が旅をして、そこで撮影した写真を見せるという事を約束した。日本縦断が終わったら、海外旅にチャレンジしようと考えているけど。そのはじめての旅は、二人が勧めえてくれたネパールとチベットを旅すると決めた。

【ふたりの考え方】

僕がはじめて”ろくファーム”へ向かう道中の雑談の中で、ファームのオーナーであるロクちゃんがこんな事を言っていた。「綺麗な空気、綺麗な水、安全な食糧。これさえあれば幸せに生きていける」と。そんな考えの夫婦と、そんな考えのもとで育った子供たちと、六日間一緒に過ごした。この先の僕が同じような暮らし方をするかは分からないけれど、それでもこの数日で教えたもらったたくさんの知識や技術は、僕の価値観や考え方の幅を大きく広げてくれた。突然やってきた33歳の男を、温かく優しく迎え入れてくれた。そんな家族を大好きになった。

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