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成瀬は天下を取りにいく、成瀬は信じた道をいく/宮島未奈



宮島未奈さんの連作短篇集を2冊拝読しました📖´-
「成瀬は天下を取りにいく」
(2024,5,1 読了)
「成瀬は信じた道をいく」
(2024,5,10 読了)




「成瀬は天下を取りにいく」は今年の本屋大賞の大賞を受賞したのでご存知の方も読まれた方も多いことでしょう。
正直いうと私は読むつもりはなかったのですが、信頼なる読書会仲間さんに本作が課題本になった読書会に誘われたのでこれを機に拝読しました。


滋賀の大津を舞台に中学二年生の成瀬とその周りの人たち(直接関係しない人もいる)が紡ぐ物語。西武大津店が閉店するにあたり成瀬が「毎日西武に通う」と言い始めたことから物語が始まります。
「成瀬は天下を取りにいく」は、中学二年生から高校までの時期が描かれており、「成瀬は信じた道をいく」は、大学生になった成瀬が登場します。語り手は章ごとに変わります。



成瀬が中心となる物語なんだけれど、本当の主人公は各章の語り手たち。成瀬を通してそれぞれの背景を伺い知ることができます。
成瀬はいわゆる一風変わった人。我が道をいくタイプなのですが、様々な人たちと触れ合うことで成長していき、また周りの人たちも成瀬と関わることで様々な学びを得つつ自分を見つめ直していきます。



成瀬は変わった人だけど周りの人たちを不幸にすることはありません。ハラハラドキドキしたり、少しモヤッとしたりはさせられるけれど。
毎回気持ちよくラストを迎えるので、安心しながら拝読できました。


変わった人という点で先に拝読した「コンビニ人間/村田沙耶香」の主人公が頭に浮かび、「成瀬シリーズ」を拝読しながら成瀬とコンビニ人間の主人公を比べている私がいました。
成瀬は周りの人たちに愛されるけれど、コンビニ人間の主人公は周りの人たちから愛されはしません。それでも自分の生き方を貫くのでそれはそれで気持ちがいいのですが…
2人は似て非なるもの。何が違うのかと考えてしまいました。



私の出した結論は育った環境だなと。
成瀬の両親はハラハラドキドキしながら娘のことを見守りつつ、成瀬の言動を否定することはほぼありません。
一方コンビニ人間の両親は、娘の言動を否定しながらなんとか”普通”にしようと四苦八苦します。
受容されて育つか、否定されながら育つか、この違いは大きい。



そんな風に育ち我が道を生きながら人々に愛される(中には嫌う人もいるけれど)女子の成瀬は、凡人としてぼんやり生きている私にとっては憧れ。なりたいと思ってもなかなかなれるものではありません。
これは私の勝手な憶測ですが、著者の理想や憧れも成瀬に詰め込まれているような気もします。ある程度は共通するところもあるのだろうし、私のように少しねじれた憧れとは違うでしょうけれども。


成瀬のように生きれるのは正直羨ましいし、嫉妬もしてしまう。我が道を生きて人からも愛されて。
そういう点ではコンビニ人間の主人公も羨ましい。突き抜ける強さがある。
生きづらさもあるだろうけど、私にないものをたくさん得ているし、私は怖くて突き抜けることはできず、ただモヤモヤと現状をやり過ごしているだけだから。



私のことは置いといて。
成瀬シリーズは、みんなほど熱狂するような気持ちにまではなれなかったけれどちょっぴり勇気を貰えてほっこりできる良い作品だとは思いました。
今の世の中は生きづらさの中にある光を求めているのかなとも感じます。
大体、変な人と私も言うてしまってるけれど、変てなんやねん、普通ってなんやねんってとも思いました。

「先のことはわからないからなんとも言えないが……。何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」

「成瀬は信じた道をいく」より





この年齢になってもなお先のことはわからないけれど、自分の心が本当に喜ぶことをきちんと見極めて何をやるかを選択していきたい。成瀬の言葉にハッとしてそう心に誓ったのでした。


最後に、読書会に誘ってくださり拝読する機会を与えてくださった読書会仲間さんたち、快く2冊かしてくださった読友さんに深謝。





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