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ビジネススクールの学び1:企業倫理

 専門職大学院の一つであるビジネススクールには、数多くの社会人大学院生が通学しています。慶応大学、早稲田大学、関西学院大学、神戸大学、九州大学をはじめ、研究科の名称は様々ですが、社会人を対象にしたビジネス教育が実践されています。
 ビジネススクールに進学される社会人大学院生の多くは、実際に企業等で経営者あるいは管理職としての相当の経験を有していて、いくつもの実務的な問題を抱えた経験を持たれる方が非常に多いと考えられます。そのために、ビジネススクールで人気のある講義は、実務へ速攻での展開がイメージされる、経営戦略、人材育成、マーケティング・マネジメント、財務諸表分析、システム・シンキングなどがその典型例となります。
 その一方で、昨今の企業経営における不祥事や、国連のSDGs、ESG投資など、企業等の経営にはミッションやアカウンタビリティや持続可能性やパーパスなどが求められています。高校の教科に「公共」が加わった昨今の状況を斟酌しても、単に企業の短期的な業績を向上させるための経営ツールだけを追求していても、それが経営者や管理職の本来あるべき姿を描写するものかというと、そうではないと考えられる傾向が強くなっています。企業業績の向上にしか力を発揮できない経営者は、いずれ淘汰されるとさえ言えると考えられます。
 最近の日経新聞には、政府がPBC (Public Benefit Corporation) の法制化に向けた動きが紹介されています。株主価値の向上だけではなく、企業業績の向上とは直接に短期的には貢献しない公共への貢献を一つの重要なミッションとする企業形態の設立が間もなく認められようとしています。最近では若い人ほど、極端な金儲け、一人勝ち、狡さ等についての嫌悪を強くしているという話を伺います。ガバナンスが十分に機能していない Family Business などもそうですが、一握りの同族やエコノミックエリートが、一人勝ちして、適正な分配も行わず、バブルな生活を営む話など、誰も見たくも聞きたくもないわけです。こうした経営者には、社会からのレスペクトもないでしょし、みんな、面従腹背です。このような企業や社会には、創造的で豊かな未来を期待することができません。
 もとよりビジネススクールは、金儲けのための手法を伝授するための大学院ではありませんでしたが、近年では、そのことをより強く意識した講義科目の設定が多くのビジネススクールで展開されていると感じます。欧米のビジネススクールには、どのスクールにも Public Management を中心としたプログラムが設けられています。他方で日本のビジネススクールは、狭義の企業経営関係のプログラムのみを提供するスクールが大半です。ビジネススクールにおける公共教育の欠如は、世界のビジネスリーダーが、日本の経営者を尊敬しない一つの理由になる可能性すらあると考えられています。
(2022.05.18)

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