Kocha

日本語講師。東京通信大学情報マネジメント学部卒。バンタンデザイン研究所卒。現象学、読書…

Kocha

日本語講師。東京通信大学情報マネジメント学部卒。バンタンデザイン研究所卒。現象学、読書、映画、音楽、マンガ・アニメ、美術館と図書館、高円寺、ラーメンズが心から好き。

マガジン

  • あまいきもち

    カレとワタシの恋のお話

最近の記事

それだけ

このまま もうこのまま目を開かずに いてもいいかもしれない。 楽しかったり、嬉しかったりした残像を 何度も何度も繰り返して 見続けていたほうが 幸せかもしれない。 体が熱くて息がしづらくてうなされる。 風邪ひくのってこんなに辛いんだっけ。 あいまいになりつつある記憶の糸を 少しずつたぐりながら思い出す。 そもそもカレは ワタシになんてこれっぽっちも興味なんてなかったんだ。 ただ、あまりにもワタシが執着するから 少しだけそれに付き合ってくれていただけ。 それだけだ

    • ひ・み・つ

      隠し事とか 小さなウソとか 多いんだ キミは だけどそれは 結局見えることになっちゃうんだから ヒミツ箱に仕舞わなくっていいよ どんなことだって、キミの一部 大好きなキミのかけら 見せてよ 誰にも何も言わないよ 約束するよ できるよ だって、大好きなんだから

      • 雨だ 雨はいいね 全部キレイに流していってくれる 音もいい 雨のにおい あれ、少し土っぽいような、そんなにおいでしょ 死んでしまったバクテリアが雨粒に乗って 土に帰るんだよ ワタシもそろそろ 雨粒に乗って カレのところから帰ったほうがいいのかな ワタシの乗った雨粒は カレの瞳から出発できるのかな 暖かくて優しいカレの雨粒

        • 忍び込む

          「もうそろそろガス欠だよ。本格的にね。早く助けにきてくれないと、壊れちゃうよ。そこまで、たどり着けなくなっちゃうよ。」 カノジョはよく駄々をこねる。 「近頃、本当にどうでもいいことにばかり振り回されていたの。だからぎゅーだけじゃ足りないんだから。もっとして。」 オレだってスゲー会いたいんだって思っていることに気付かされる。 そうだ。 オレだって、ふと気づけばカノジョが意識に忍び込んできている。二人で過ごしたヒミツの時間と遜色ないほど、静かにゆっくりと、奥深くまで浸透

        それだけ

        マガジン

        • あまいきもち
          20本

        記事

          ヒマと退屈と妄想

          退屈というのは三つの形式に分類され、それぞれが「引き止め」と「空虚放置」という二つの要素を持っているんだって。 でね、一つ目が停滞する時間に引き止められてしまって、焦って期待通りにいかない場合。その場合、退屈をなんらかの気晴らしをすることで相殺していく。ぼーっとしつつタクシーを数えるとかね。 二つ目は、気晴らしと退屈の根源が同じ場合で、退屈であることに不意に気がついてしまう場合。例えば、カラオケとか行ってみんなで楽しいけど、なんとなくあれ?ってときとかね。 三つ目は「な

          ヒマと退屈と妄想

          知らない時間

          共有していない時間がほとんどなの、ワタシたち。そう思わない? そうだね。俺は俺の時間を生きているし、キミもキミのを生きている。ほんの少しだけ交わる時間があるけれどね。 彼は知らない。 ワタシが1日のどれだけの時間を彼に費やしているのかを。きっと知りたいなんて、思ったことすらないに違いない。 それは大切なものがあるから。ワタシは彼の退屈凌ぎのおもちゃだ。 ほんの少ししか交わらない時間だけど、キミはいつだって俺のだよ。だから全部話してよ。キミは俺のなんだから。 ワタシは知

          知らない時間

          愛だって健康第一なんだ

          きっとまだこちらとあちらの狭間にいてもどれないでいるのだね。 新しい一年の最初の日を迎えたのはあちらだったのかな、それともこちらに戻ってきていたのかな。 出会ってから二度目の彼の新しい年の始まりなのに、彼の中にはワタシじゃなくて得体の知れない他の何かがいて彼をいじめている。 追い出して懲らしめてやりたい。ほんと、グーパンチでぶっ飛ばす。 何日も続く38℃を終わらせたい。 どうして彼の中にいるのがワタシじゃなくて得体の知れない他の何かなの、こんな大切な日に。 ワタシ

          愛だって健康第一なんだ

          ゼイタク

          満たされるなんて 本来なら簡単なことだ 爆音のダンスミュージックに包まれてお酒を飲んで踊り狂うとか 大好きなあの人の腕の中で愛を囁かれるとか そんなことでいいのだ。 だけど そんなことが 一番難しい 彼は ワタシのことは忘れてしまったから 覚えていて欲しいとか 忘れないで欲しいとか 烏滸がましいんだ だから、今夜も一人で酔えないお酒を流し込んで 眠れない夜を溺れないように泳ぎ抜く

          ゼイタク

          したい

          ふたりで したい。 その笑顔が見られるのなら どんなことも一緒にしたい。 だけど 彼はあんなことやこんなことを きっと彼の大切なあの人としているのだから、 ワタシが彼とそんなことしたいって思っていることはココロの中のロッカーに仕舞い込んでおかなくてはいけない。 ただ、夢の中で現実で仕舞い込んだのをロッカーから取り出して、彼にワタシもあんなことやこんなことがしたいってお願いしたら、一緒にしてくれるんだろうか。 それとも、その笑顔が陰ってしまうのだろうか。 ワタシ

          したい

          ヒビ

          「土鍋ってさ、ぶつけちゃってかけちゃったところからヒビがうっすら入ったりするじゃない。あれ、牛乳入れて煮ると直るらしいんだよ。」 「へぇー、なにそれ、カルシウムが骨を作る的な何かかな。」 そんな話をしたことがあったっけ。 ワタシもたくさん牛乳を飲んだら、塞がるかな、キズ。 数日前に小さな事故にあった。かすり傷程度だと思っていたし、徐々に治るだろうと思っていたのに、傷口から滲んでいた赤いのが日に日に大きくなってきている。どうしたのだろう。ハイドロコロイドでなおるのかな。

          瞼の裏劇場

          「さぁ、深夜に眠りが去って行ってしまったみなさま、今宵もようこそ『瞼の裏劇場』へお越しくださいましてありがとうございます。」 目を閉じた薄暗がりの隅っこで挨拶が始まった。 恭しく腰を傾けるのは、チョビヒゲみたいな赤いベルベットの蝶ネクタイをきっちりと締めサテンの燕尾服に身を包んだオイルでテカテカの七三分け頭のなかなか素敵なマイクロサイズの支配人だった。 天幕が上がり、スクリーンにはサイレント映画のように大々的に上皿天秤が映し出される。 眠れぬ夜に羊を数えるように、左右

          瞼の裏劇場

          止まる・広がる・止める・それから?

          あ、息をするのを忘れてた。 苦しいね。うん。びっくりした。 びっくりした。 ご主人様はどこに行ったのだろう。 僕はここにひとりぼっちだ。 見上げればいつも、小さな揃った歯を見せて 目を細めて「いい子」って言ってくれるのに、 今日はいない。 どこにもいない。 やっとカラダにドクドクが聞こえて広がってきた。 それなのに僕は今ひとりぼっちだ。 あれ? ご主人様がいないのかな。僕が違うところに来ちゃったのかな。 苦しいな。あ、息をするのを忘れてたんだ。 息

          止まる・広がる・止める・それから?

          温かさというのはときに現実的辛さを孕んでいるものなんだ

          あぁ 虚無感なのか、怠惰なのか、 空っぽになってしまうときというのが 漣が押し寄せるようにやってくることがある ほんの少しだけ心地よくもあるけど、寂しさは紛らわせない どうしてこんなになるまで許してしまったのか カレにとってワタシなんか ただのおもちゃに過ぎないのに 温かさというのはときに現実的辛さを孕んでいるものなんだ 優しすぎるカレはきっと、それを認めないだろうな

          温かさというのはときに現実的辛さを孕んでいるものなんだ

          四六時中 -day and night-

          なんて非効率的なんだろう。 1日=24時間=1440分=86400秒。このうちの5分の4.95くらいは頭も心も常にどこかでカレがワタシを監視している。いや、少し違うな。ワタシがカレに監視されていたいのだ。どうしてこんなにもカレを求めてしまうのか、自分の心のありように悔しくて腹が立つ。 あの日、ただ気まぐれに放ったメッセージには数十の返信があった。くだらないと揶揄するものもあれば、親身に返信してくるものもあった。返信をくれた数人とは少しばかり言葉を交わした。その中に一人だけ

          四六時中 -day and night-

          Dripping

          水で膨らんだ風船の腹に 勢いをつけ針を刺すと、 その風船は思い切り破裂し 飛沫をあげた水とともに跡形もなく散り散りになってしまう。 では、風船の脳天やお尻にゆっくり、そっと針を刺せばどうだろうか。破裂するのだろうか。あるいは… 彼の中にあった不安はすでに解けて流れ去っていったようで、ワタシには以前よりも強く優しい温もりを感じることができる。なにかが変わったみたいだ。そうだな。まるでロープの結び目に水分が染み込み、そこにあった遊びが消え、締め付けがキツくなり、この先解けるこ

          48時間とちょっと

          「じゃあ、そろそろ着くから、またね。」 「うん、素敵な週末をね。」 あぁ、退屈だな。 口では「素敵な週末を」なんて言ってみてはいるけれど、これは強がりだ。 会えない上に、ほとんど話をする隙もない退屈な週末なんか、嫌いだ。 ふとした瞬間、脳裏に浮かぶのは、瞼の内側に映し出されるのは、耳の奥で鳴り響くのは、触れられた感触は、口に含んだ水で想起するのは、カレだ。 金曜日の夕方は、嫌いだ。 ワタシが強がりから解放されるまで、あと48時間とちょっと。 日曜日の夜は、好きだ

          48時間とちょっと