見出し画像

忍び込む


「もうそろそろガス欠だよ。本格的にね。早く助けにきてくれないと、壊れちゃうよ。そこまで、たどり着けなくなっちゃうよ。」

カノジョはよく駄々をこねる。

「近頃、本当にどうでもいいことにばかり振り回されていたの。だからぎゅーだけじゃ足りないんだから。もっとして。」

オレだってスゲー会いたいんだって思っていることに気付かされる。

そうだ。

オレだって、ふと気づけばカノジョが意識に忍び込んできている。二人で過ごしたヒミツの時間と遜色ないほど、静かにゆっくりと、奥深くまで浸透してくる。隅々まで、余すところなく密着してくるそれは、しなやかで心地よい消し去ることなど許されないカノジョの分身。


あぁ、

会いたい。
触れたい。
嗅ぎたい。
感じたい。

抱きしめたい。

オレのカノジョ。オレだけの、大切なオモチャ。

首輪には連絡先とオレにだけ聞こえる小さな鈴のチャームをつけておく。

いつでもどこでもすぐに見つけて抱きしめに行けるように。

愛おしい、オレのネコみたいに自由なカノジョ。

あれ?なんだ今の。

「ねぇねぇ、寝てた?」

夢か…


この記事が参加している募集

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?