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【412/1096】多数決の問題点、わかりますか?~子どもたちに民主主義を教えよう

412日目。朝は雨が降って寒かったが、昼頃から晴れてきて、散歩した。紅葉がきれいだなあ。


元麹町中学校長の工藤勇一先生の最新刊、「子どもたちに民主主義を教えよう」を読んだ。
哲学者の苫野一徳さんとの対話で書かれている。

出版のイベントがいくつかあり、苫野さんとの対談イベントと、苫野さん、鴻上尚史さんとの対談イベントに参加した。

「民主主義」の本を書くとは思っていなかったそうだが、工藤先生の「本丸」として、ずーっと書きたかったことをようやく実現したと話されていた。

民主主義は多数決?

民主主義は「多数決で物事を決める」がベースだと考える人は多いのじゃないか?と思う。
議会制民主主義がそうだからだ。

実は私自身も長いこと、それが民主主義ってことでしょって思っていたことに気づいた。
マイノリティの権利が守られていないのはおかしいと思っているのに、その根幹のところで、そう思っていたことに気づかなかったことに驚いた。

工藤先生は

本来の民主主義の観点からすれば、ずいぶんと低次元な話をしているんじゃないでしょうか?
なぜなら多数決という仕組みは少数派を容赦なく切り捨てる可能性が高いから。つまり多数決という意志決定の仕方に頼りきっている限り、「誰一人置き去りにしない社会」はいつまでも実現しないんです。

「子どもたちに民主主義を教えよう」より

と言っている。
まさにそのとおりではないか!と思った。

工藤先生の考える民主主義は

Aという案とBという案がある。
A案だと困る人はだれか?
B案だと困る人はだれか?
困る人がいるなら、誰の不利益にもならない方法はないのか?を対話で考え続ける。

AでもBでもどちらでも全員OK、である場合にのみ、多数決でAかBを決めることができる。

である。

Aがよい、Bがよいという対立構造がある中で、「誰一人置き去りにしないためにはどうしたらいいか?」を共通のゴールにして、みんなで考え続ける。全員が当事者として、頭を使い、対話に加わる。
これを学校教育でやるのが、社会を変えるということだと。

子どものうちから、これを訓練することで、大人になった時に、感情での対立があっても理性で対話ができるようになるというわけだ。
そして、民主主義として成熟した社会をつくっていける。

対話で重要なのは、最上位目標を合意してから始める

多数決は、少数派を切り捨てることと同時に、利害関係の対立をそのまま放置しているとあって、多数決が当たり前で育ってきてしまえば、対立が起きたときに、相手を打ち負かすか、負けたら従うかの二択になってしまうのは仕方がないと書いてあった。

「対話をして合意形成する」という体験がないと、その発想自体がわかない。

そして、対話をするときに重要のなのが「みんながOKと言える最上位目標」である。

何のために?
何が一番大事なんだっけ?

みんなが合意できる(握手できる)目標、これを最初に決めること。
これが合意できたら、それを実現するための手段を考えていく。
この最上位目標を設定していないと、対話の最中に起きた対立を解消できない。
最上位目標を設定せずに対話をさせている学校は、無責任と言っている。

たしかに、対話で目の前の対立を乗り越えるのは、大人でもできていない。それを子どもができると思うのは矛盾している。

子どもたち自身で最上位目標を設定できるようになるのがよいが、はじめのうちは大人がこの共通ゴールを提案して、対話を始める。もちろん、全員が納得するまで丁寧に説明する。
そして、対立が起きたら、毎回その共通ゴールに戻って答えを見つけ出そうと考える。
それを日常、ずっとやり続けると、身についてくるという。

実際、工藤先生が麹町中学で校長をしていた6年間で、生徒たちがやった実例があるので、説得力が違う。

私は「何のために?」が非常に抜けやすくて、手段のための手段になってしまうことがたびたび起きてしまうので、本当にこれは場数が必要なんだろうな、体験を積み重ねることでしか身につかないだろうなと思う。

「じゃんけん」で決める日本


鴻上尚史さんとの対談の場で、鴻上さんが面白いことを言っていた。

イギリスに留学していた時に、公園のブランコで子どもたちが意見が対立して話をしていたそうだ。
イギリスでは、学校教育でエンパシーをまず教えるという。
エンパシーとは、意見の対立する相手の立場にたって考えることができることと学ぶらしい。

鴻上さんはその子どもたちを見ていて、日本だったら、こういうとき「じゃんけん」をするだろうと思ったと言う。
たしかに。
日本では、意見が対立して、らちが明かなくなったとき、じゃんけんを使う。
「よし、じゃんけんで決めよう」で決まってしまう。
これはけっこうおもしろいなと思った。

そして、鴻上さんが演劇のクラスかなんかで、誰もやりたがらなくて、でも誰かがやらなくてはいけなくて、なかなか決まらないことがあったとき、「じゃんけん」を提案したという。
じゃんけんのやり方を教えて、いざしようとしたら、「こんなに大事なことを、そんな偶然的に決める要素で決めてしまっていいのか?」とストップがかかったそうだ。
なるほど。

日本人は、じゃんけんで負けたらやるという合意が文化的な文脈として持っているのかもしれないなあ。
そういう偶発的なものに身を任せるっていう。
そして、じゃんけんで決めてしまえば、対話するよりも早く決まる。
でも、全員の本当の納得感がそこにあるのか?という疑問は残る。

でも、じゃんけんの場合、二項対立にはならないっていうのもあるなあと思ったり。

妥協がなければ平和は生まれない

対話するために、何かをするのではなくて、自分が何のためにこれをしているのか?というところに、いつも立ち返ることが大事なのかもしれない。

工藤先生は「誰一人置き去りにしない」というSDGsの謳い文句をきいて、この言葉は非常にわかりやすく民主主義を顕していると思ったそうだ。
それで、この言葉を使って、説明をしはじめた。

「誰一人置き去りにしない」状態を目指すには、「対話」が欠かせない。そして、合意を見出すためには、妥協することも悪いことではない、と言っている。

妥協していては生まれないものも確かにあるが、妥協がなければ平和の実現はないということに、すごく納得感があった。
そして、「やってみなければわからない」ことだから、まずはやってみようとということなのだなと思う。

学校経営の変化を保護者側から働きかけるのは難しそうだが、読書会などを通して保護者が学んでいくことで、そうした雰囲気が醸成されていけば、学校も変わらざるを得なくなるかもしれない。

意識改革の3つのフェーズ

あと、変化が起きるためには、「対立を起こさない」ことが超重要だと工藤先生も、鴻上さんも何度も言っている。
「変わってください」というのは対立を起こしているから、変わるはずがないというわけである。

意識改革は自分の中で起こさなきゃダメだと。

1. 自己矛盾が起きるフェーズ
 ↓
2. 優先すべきものを自問自答するフェーズ
 ↓
3. 矛盾しない自分に変わっていくプロセスを考えるフェーズ

「子どもたちに民主主義を教えよう」より

の形で意識改革が起きていくと。

「何が目的で、何が手段なのか」「手段として優先すべきものは何か」を常に考えて整理しなおし、自ら気づいていくことが大事ということだ。

こういったことは全然やってこなかったなあと思う。
自分で意思決定するのは、決定した量が大事だと言う。
人に決めてきてもらって、それをただ実行してくると、自分で意思決定する機会がなく、自分で決めてないから、他人ごとになるのだ。

自分が決める当事者なのだという意識を持つためには、幼児の頃から意思決定する訓練が必要だと言っていて、ほんと、それですよねって思った。

身につけるためには練習が必要

子どもに教えるためには、大人がこれができるようになっている必要がある。
毎日、練習して身につけていくしかないなと。

工藤先生は、20代で教師になったころから、ずっとこれをやりたかったらしい。
ようやく言語化して世に出せたと言っていた。その間、ずっと「なんのために」を繰り返してきている。

考え方の違いを感情的な対立にせずに、感情はいったん置いておいて、理性的に対話する。

その練習に、私は呼吸を使っている。
一挙手一投足、その練習。
「考える」と「感じる」の練習。
そういうのがほんと大事なんだよなあと。
対話するためには、身体性が必要じゃないかなと思うのだ。
感情を横に置いておくというのが、身体性のなせる技だから。

どっちにしても、大人になってから身につけるより、子どものときに身につけておいた方が、圧倒的に早く身につくのは間違いない。

ぜひ多くの人に読んでもらって、この本に書かれているような教育が日本で当たり前になるといいなと思う。

工藤先生と鴻上さんの対談本。

麹町中の改革の本

脳神経学から見た話しも。

では、またね。


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