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チア・アートって何? 筑波メディカルセンター病院が歩んだ軌跡。

みなさん、こんにちは。
茨城県にある筑波メディカルセンター病院は、2007年からアートを導入しています。少しだけ病院の方に取り組みをお伺いしたので、早速ご紹介していきます(^^)/

【目次】
1.チア・アートって何?
2.どんな風に実践しているの?
3.HCD-HUBとのこれから



1.チア・アートって何?

チア・アートとは、筑波大学芸術分野が近隣病院との協働で取り組むアート・デザインプロジェクトから生まれた特定非営利活動法人です。筑波メディカルセンター病院や筑波大学附属病院では、アートと医療の翻訳をおこないながら、プロジェクトのマネジメントをおこなうアートコーディネートをチア・アートが担っています。

チア・アートの理事長である岩田祐佳梨さんは、筑波大学の博士課程を経て、調査研究の側面も兼ねたこちらの活動を推進しています。

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最近では「病院のまなざし」という職員の写真展を開催。
新型コロナウイルス感染症が蔓延し院内に緊張感が高まるなか、病院や医療スタッフへの親しみ、そして安心感を患者さんやご家族に感じてもらう取り組みだったそうです。

スタッフにとって励みとなり仕事のやりがいに繋がるよう、様々な職種(駐車場の誘導係の方も!)が働く姿をカメラに収めたのでした。

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働く職員をとらえた写真展「病院のまなざし」展示風景/写真提供:筑波メディカルセンター病院

👉こちらから動画を見ることができます!


実際に病院に行ってみると、素敵な仕掛けを沢山見つけることができます。

病院前の遊歩道にある荒れた花壇や壊れたベンチを整備する活動が「紡ぎの庭」プロジェクトに発展。今では患者さんやご家族に花々を楽しんでいただく場になっているそうです。

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ドクターカーがクリスマスツリーのオーナメントに!ナンバーは298(つくば)でした。

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木のぬくもりを感じる病院エントランス。奥にはちょっとした休憩スペース。

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学生や地域の木工所との協働でデザインされたエントランス/写真提供:筑波メディカルセンター病院


現在、取り組んでいるのは、緩和ケア病棟の家族控室の改修プロジェクト。
テーブルとソファしかない無機質な控室。患者さんを支えるご家族がリフレッシュできる場に改修します。

チア・アートと筑波大学の学生チーム「パプリカ」は、3年前から病院側と構想を練ってきたそうです。

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地域の皆さんに募ったクラウドファウンディングは、1300万円の資金調達に成功!誰もがそんなに集まるとは思っていなかったそうです…。

👉こちらから東京新聞の取材記事(2021.7)をお読みいただけます。

👉こちらからREADYFORのプロジェクトページをご覧頂けます。



2.どんな風に実践しているの?

気になるのは、どんな体制で院内でのアート・デザインプロジェクトを実現させているのか?ということ。
改修をともなう規模であればなおさら、経営層の意思決定が必要ですよね。

イニシアティブをとっているのは岩田さん。2011年から病院の公式アートコーディネーターを務めています。病院では2007年から筑波大学とのコラボレーションによるアート・デザイン活動(「絵画」だけでなく、広く芸術・表現活動)を導入していましたが、2011年に医療者と作り手をつなぐ専門職の必要性から、アートコーディネーターが設置されたのです。

こういったアート・デザインの活動は、「患者さんのため」「ご家族のため」「職員のため」という目的をもって遂行されます。悲しみや不安、憤り、喜びへの共感がベースとなるため、必然的にPX、FX、EXが高くなるはず。だからこそ、病院長や代表理事、事務系部門の管理者も、このアート・デザインの活動に理解を示し、応援しています。

今では1300万円が集まる筑波メディカルセンター病院ですが、当然ここまでくるには長い道のりがありました。
これまでの軌跡は、3つに分けられるということです。

- 2007年~【かえる】 導入期                  (廊下に作品を展示して病院の環境を変える活動);岩田さんは学生として活動に参加

- 2009年~【つくる】 萌芽期                  (患者さんや職員が使う家具やツールなどモノを作る活動);岩田さんは2011年からアートコーディネーターとして参画

- 2012年~【ひらく】 実践期                  (職員や患者さん参加型のアート・デザイン活動)


導入当初、アート・デザイン活動は、職員にとってはその必要性を理解することが難しく、受け入れられていませんでした。
「なんでアート…?」と、現場の職員からは反発もあったそうです。
「(医療業務の他に)追加で何かやらされる」と思う人が多かったのではないか、と振り返ります。

萌芽期に差し掛かったのは、患者さんから好反応を受けた頃でした。
余計なものだと思っていたアートが、患者さんへのケアを良くする助けになる、と気づく体験が職員に重なったのではないかということです。

2011年からは、「アートカフェ」というイベントを年に1回開催。筑波大学の芸術の学生による活動の発表やアーティストによるアートワークショップがおこなわれ、60名近くの職員が業務の合間に入れ替わり参加します。

職員や学生が交流するうちに、「何か一緒にしてみたい!」といった声が生まれてくるのだとか。構想中のデザイン案(模型)を置くなど、途中の経過を共有しながら語り合う。そうすると、学生さんとの接点も刺激になり、会議では中々出ない発言がポロっと出てくるそうです。

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病院職員と作り手による交流イベント「アートカフェ」/写真提供:筑波メディカルセンター病院


「コーディネーター」という岩田さんのポジションや、学生との共創が文化として定着していることが伺えます。

日本全国にも、このような取り組みが浸透していくでしょうか…?
(個人的にはそうあって欲しいと感じますし、そのためにHCD-HUBが存在していると信じています!)

広報課の課長が話すように、これからの病院建築も施設基準を満たすだけでなく、初めから計画にアートを取り込むことが求められるのかもしれません。



3.お知らせ

チア・アートの岩田さんがご登壇予定の学会やシンポジウムは下記です。
より詳しい内容が聞けると思いますので、ご興味のある方は引き続きチェックしてみてください(^^)/

ヘルスケアアート・オンライン全国サミット(2022年2月20日 @オンライン)


過去の実績をまとめた報告書は、下記のリンクよりご覧頂けます。

ケア×アート いきいきホスピタル

ケア×アート いきいきホスピタル 2

いきいきホスピタル 筑波大学が取り組む病院のアートとデザイン


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最後までお読み頂き、ありがとうございました!