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SO LONG GOODBYE 9.そんなマリアじゃない

2020年1月20日 京都府にて

だらだら床に這いつくばっている。転がる。ひさしぶりに床にいると楽だし楽しいな。縦になるのがむずかしい。
UrBANGUILDでの公演を終えて初の稽古。さてどうしてゆくのでしょうか。

前回の公演で足りなかった部分を考えてみる。
シチュエーションではないか、と河井朗(おにぎりと鬼が好き)。
「シチュエーション」を考えていく。空港、ビジネスホテル、キッチン、Amazonの倉庫、火葬場、八百屋……
わたしはキッチンをいちおし。キッチンは仕事場であり生活の場でもある。だが河井朗には刺さらず。無念。

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今回のテーマで自分で作品を作るのだったらどうする? とあやこさんとわたしそれぞれに問われ、わたしは、もうちょっと生活に近いものにすると思う、と答えた。

爪を切るということについて考える。
生きることは爪を切り続けること。生きる動きとして爪は伸びるのに、生きる(社会性を持って暮らす)ためには爪を切らなければならない。(自然ではない?)
爪を伸ばす人は、願掛け? 社会性を放棄している? 武装?(自然ではない?)
では自然な状態とは?

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生活と仕事はどちらかだけでは成立しないのではないか。バランスよく両輪あってはじめてそれが「人間の健康な状態」。生活と仕事の相互関係が成り立っていない状態はおそらく不健康だ(と仮定する)。

「不健康でもいい? それとも健康でありたい?」
ひとことで言うと「ワークライフバランス」でしかないのだろうけど、直感でしかないが、この答えがわたしなりの「仕事!」への答えに繋がるかもしれないと思った。

近頃はなかなか見ないが、スカルプをえらく伸ばしている人は人間の状態として自然か不自然かで言うと、不自然だ。でも、それでいい、それがいいという人だ。そうであることが強さに繋がる。仕事がんばって心も体も無茶する、でもそうやっていっしょうけんめい仕事するのが私の仕事なんだ、て人もいる。不健康だ。でも本人がそれでいい、それがいいのなら他人になにか言えることはもうない。

では、自然=健康なのか?
人間は自然な状態が柔らかいイメージがあるけれど、実は逆だ。前年度のPIPE DREAMを思い出す。

人間は放っておくと硬くなる。それは時間が流れているから。生まれたときは誰もがやわらかいが、時間が流れて死に近づいてゆくほど硬くなってゆく。
時間が流れていることは自然だ、だから自然な状態は不健康に近づいてゆくことなのかもしれない。
でもそれに抗う、やわらかくなるようにほぐす。動く。 
動くこと、イコール仕事。もちろん仕事じゃなくてもいいと思うけど、この場合は、仕事。

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てことはやっぱり仕事は生きるためのことなのだ、健康になるための動き、仕事。
仕事が回り始めると生きる車輪も回り始める。そしたら両輪が上手に噛み合ってスピードが出る。
より遠くにいくためにはスピードも必要。これは大切なこと。
遠くにいきたいとは思わない人もいる。でもほんとうに遠くにいきたいのなら、スピードも必要。だって生きていられる時間は限られているから。

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稽古の終わりぎわ、稽古を見にきてくれていた沢さんに、河井朗が「何か言い残したことはありますか?」と尋ねる。
「今はまだないね」と沢さん。
この言い方……沢さん、たぶん時間可逆者だ……。



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第41回記念Kyoto 演劇フェスティバル

〈U30支援プログラム〉採択作品
ルサンチカ『SO LONG GOOD BYE』

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「人は一日八時間食べてはいられないし、一日八時間飲んでもいられないし、八時間セックスしつづけもできない。八時間続けられるものといえば、それは仕事だ。それこそが人が自分も他の人すべても、こんなに惨めで不幸にする理由なのだ。」

第41回記念Kyoto 演劇フェスティバル
2020年2月9日(日)
ホール開場15:40 / 開演16:00
京都府立文化芸術会館 ホール

【料金】
一般前売:1,000円(当日1,200円)
高校生以下前売:500円(当日700円)



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