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INIライブMCで感じた、Z世代の生きにくさ

今回、INIの武道館1月8日昼公演を見て、驚いた。
池﨑理人氏がMCでこんなことを言っていた。

「ツラいこととか、いっぱいあると思うんです。
全然、逃げるという選択肢も、僕は間違いじゃないと思うんです」

と、こんなことを言っていたように記憶する。
私は、これまで数々のアイドルコンサートを見まくってきた。

「愛してるよ」「会えて嬉しいよ」

的なことを日本語や韓国語のMCで聞いてきたが、

「逃げていい」
「疲れたら休んでもいい。心を大事にして欲しい」

というメッセージを聞いたのは、初めてだった。

これを聞き、アイドルといえども、今の若者(私から見て)が置かれている過酷な競争世界を思った。

「疲れる」という感情と、「休む」という行為は、令和になってからパラダイムシフトを起こしたと感じている。
「24時間はたらけますか?」というキャッチコピーに現れているように、
「疲れてはいけない」し、「休んでもいけない」のが、圧倒的な社会圧としてあった。

みんななかったことにして、体にムチを打って活動していた。
アイドルも同じで、睡眠時間3時間など当たり前として(今もそうかもしれないが)みんなひたすら働いた。

令和に入ってからは、「働き方改革」というムーブメントの影響で、法令も含めて整備が進み、経営者にとっては迷惑で、従業員にとってはありがたい「しっかり休ませない=鬼畜」という図式が成り立つようになった。

こうした時代背景から、「メンタルヘルス」への理解も進み、現在に至るという状況だ。

そもそも、「メンタルヘルス」というのは、WHOでは、

すべての個人が自らの可能性を認識し、生命の通常のストレスに対処し、 生産的かつ効果的に働き、コミュニティに貢献することができる健全な状態

と定義されている。精神疾患の有無に関わらず、個々人が「ウェルビーイング」でいられるよう目指すこと。つまり、あるがままの状態で、それぞれの能力を発揮し、自分の人生を生きることを「選択」するという、人生に対する真摯な態度だ。

Z世代と呼ばれる現在の10代後半〜20代前半のいわゆる若者たちは、他世代の人からすると「宇宙人」のように見なされている。

それは、おそらくだが、次の

・自分を壊さないように生きる術を獲得しているので、無理しすぎない
・大震災、テロ、30年も続くデフレ、コロナ、環境破壊・・・という絶望を感じない方が不思議なひどい社会情勢(しかも、うまれてからずっと)によって、
「常に不安しかない」という心理
・少子化で人口ボリュームが少なすぎて発言力が皆無(とみなされる)なので、
「大人には全く期待しない」

という特徴などからきているように思う。

そして、情報収集はすべてSNSやYouTubeで行うため、それより上の世代の人々と価値観が決定的に違う。

何が違うか?
それは、日本に住んでいる場合、ミレニアル世代くらいまでは「日本国内」というガラスの天井が存在している。
しかし、Z世代は「世界」を基準に物事を考えているように思う。

例えば、私が中高生の頃は「何者かになりたい」という欲求が強く、その割には

・クラスの中で誰々よりも秀でた何かがある、とか
・「学校で1番○○」を目指す、とか
・かなり意識が高い人は、「日本で1番○○」を目指す、とか

基本的に半径5メートル以内で比較を繰り返して、承認欲求を満たしたりこじらせたりしながら、つまらないプライドを構築し、社会人になってこっぱみじんに砕かれるのが定説だった。

Z世代の子たちは、違う。
最初から「世界」と戦っている。

SNSやYouTubeは、初めから世界とつながり、日本という小さな島国を軽々とこえて地球の裏側にいる人たちを感じ取りながら、個性や才能で勝負しなければならない。

キンプリの平野くんが「もう僕たちの年齢で今から世界を目指すのは無理だと思った」から脱退&退所する時代である。

国内でトップクラスの人気があるのだから、それでいいのではないのか?
私のような老害から見ると、「日本で1番」だって十分すごいと思うのだ。
つまり、「BTSのようになれないなら、意味がない」ということかと考えると、
もはや謙遜なのか、自信過剰なのか、よくわからない。

INIは、その点で見ると初めからグローバルを前提として結成しているため、「日本で人気になれば良い」といった、ガラスの天井はない。
おそらくZ世代のメンバーたちも「世界」を目指して活動でき、目標を見失うことはなさそうだ。

だが、その分、競争は過酷だろう。
韓国には世界で成功したグループが既におり、日本発で他国で成功した例は少ない(ほぼない?)。あのジャニーさんですら、アジア圏では成功させられても、悲願のアメリカデビューは生前に叶えられなかった。

「逃げていい」
「疲れたら休んでもいい。心を大事にして欲しい」

これは、MINIに向けた言葉である一方で、メンバーや理人氏自身に向けたメッセージでもあるのではないかと感じた。

激化するアイドル市場、先行きが見えない世界情勢、未来に対する保証は何もない。

生き延びることだけでも大変な時代に、「疲れたら休んでいい」というのは、きっと心から思って言っている言葉なんだろうなと、アイドルという職業および、若者の未来に思いをはせ、大人として少しでもいい社会にしてから次世代に渡してあげなければ、と襟元を正される気持ちだった。

追伸:
(ちなみに、私は九州にゆかりがあり、さらに自分の子供に「理人」とつけようか迷ったという個人的な思い入れにより、勝手に親近感を抱いてます)

先日も帰省していたら、一際輝くポスターが目に飛び込んできた。
思わず写メして友人に送付したので、ここにも掲出しておきます。

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