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第2回・夫婦で本の交換会を開催しました

私と夫の誕生日は一ヶ月違いである。お互いに冬生まれなので、クリスマスに誕生日と冬は何かとお祝いごとが多い。私はもともと人に何かをあげるのがとても好きなタイプなのではあるけれど、それは「相手を喜ばせたい」という気持ちより「自分があげたい」という気持ちが強いことが多くて、敢えて実用性のないものを選んでしまう傾向がある。夫も決して察しが良いタイプではなく、愛情のこもったプレゼントが嬉しいという人間でもないので、このプレゼントハイシーズンは、私たち夫婦にとってなかなかにめんど・・・いや、難しい季節なのである。

そんな私たち夫婦には、読書という共通の趣味がある。それも二人とも本を所有したいタイプなので、お互いの少ないお小遣いはほとんど本に消え、毎月増え続けた結果、築30年以上の古い賃貸に収納されていると思われる本は約3,000冊。そんな積ん読が趣味の私たち夫婦が、今年のお互いの誕生日祝いに行なったのが『本の交換会』である。

私たちの『本の交換会』は、「お互いに絶対に買わないだろうけど、刺さる本をプレゼントする」ことがテーマである。予算・店・時間のしばりがある中で、いかに相手に刺さる本を選べるかが重要なエンターテイメントである。今回は予算1万円・時間1時間という制限の中で行なった。ちなみにこの1時間という時間は、子育て中心になる休日に子どもを片方に預けて行うのでこれぐらいかと思って決めたけど、全然足りないです。びっくりするほど足りないです。

1万円以内で私は5冊・夫は7冊選んだ。それぞれに解説しながら本を渡したので、私たち夫婦の記録のために公開していく。ちなみにそれぞれが普段読むジャンルは以下。

夫→小説(純文学、アメリカ文学)、思想・言語、生物学など
私(以降、妻)→エッセイ、実用書、美術・宗教など

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夫→妻・1冊目『徒然絵つづり 百人一首 ー 大田垣 晴子 (著)』

夫「古典からひとつ選びたかったのと、そのうち「ちはやふる」にハマったりするかもと思って。コミックエッセイが挿入されていて、かつ一首ずつの解説形式なのでパラパラ読めるのも勧めやすかった。」

妻「興味のある分野だけどわざわざ自分で買わない。ライトさがよくわかってる」

妻→夫・1冊目『絶対に人に見せてはいけない 日野市の職員手帳 ー 日野の魅力発見職員プロジェクトチーム (著)』

妻「最後に3分しかなくて血眼で本棚を見ているときに目に飛び込んできた。運命だと思った(夫は地方公務員で、私は日野市の大学に通っていたので)。」

夫「ゆるっとした本を買うことに抵抗があるので、存在を知っていたけど買おうとは思ってなかった。クサいところを突いてきたな。丁寧に作られた良い本でした。」

夫→妻・2冊目『地方選 無風王国の「変人」を追う ー 常井 健一 (著)』

夫「政治ものを選ぼうと思っていたけど、下手なものを選ぶと思想的なケンカになるな…と考えた上でのチョイス。ノンフィクション仕立てなので、その点でも他の本とのバランスを取るのによかった。」

妻「急に重たい。すごいところを攻めてきたなと思った。でも面白そうなので悪くないです。」

妻→夫・2冊目『面白いほどわかる! クラシック入門 ー 松本 大輔 (著)』

妻「最近娘のトイピアノを一生懸命弾いているけど、音楽を習っていた経験がないのに楽譜が読めるというのが面白いなと思ってた(失礼)。本当は大人のバイエルとかが買いたかったけど本屋になかったので、なんとなく入門できそうなこれを。」

夫「むしろなぜ今までクラシックのことを勉強しようと思わなかったのか、自分でも不思議。知識がないけど聴くのが嫌いではないので、純粋にありがたかった。」

夫→妻・3冊目『マンガでわかる! 作詞入門 ー 田口 俊 (監修), さのかける (イラスト)』

夫「なんらかの入門書を入れたかった。哲学・ミステリ小説(関心はないものからエッセンスだけを抽出する読みをしてほしいと思った)が候補だったけれど、ちょうどいい本がなかったので、興味はあるはずだけどチャレンジすることはないだろうこれを。」

妻「めっちゃ秀逸なチョイス。絶対自分で買わないけど、興味がないわけではない分野。」

夫→妻・4冊目『地球の歩き方 極東ロシア シベリア サハリン 2019~2020 ー 地球の歩き方編集室 (編集)』

夫「遊びの一冊。全然興味ないし行くこともないだろう国のガイドブックが本棚に差さってるとおもしろかろうと考えて、リビアと悩んでの選択。結果的にはこれが一番高額だった……。」

妻「絶対行かない。でもリビアより良い。写真がキレイで普通に面白そう。」

妻→夫・3冊目『沖ヨガ入門: 精神が肉体を自由にできる ー 沖 正弘 (著)』

妻「私が最近健康系にハマっているので、その分野で比較的理論的な本を読ませたかった。あわよくばヨガにハマってくれないだろうか。あと単純に私も読みたい。」

夫「最初はトンデモ本かな?と思ったけど、作者自身がヨギたちのことをうさんくさがってるところに好感を持てた。ちなみに理論的な本ではなかったです。純粋に、超実践的。」

夫→妻・5冊目『向田邦子の末尾文トランプ ー 半沢 幹一 (著)』

夫「向田邦子のエッセイ・小説の末尾文を集めた解説本。物語のオチやネタバレを先に読む傾向のある妻に向けたコンセプシャルな選書。向田邦子というのもちょうどよい(いずれ読みそうなので)。」

妻「ちょうどいい・・・ちょうどいいな・・・」

妻→夫・4冊目『一冊でわかる幕末 (世界のなかの日本の歴史) ー 大石 学 (監修)』

妻「お勉強ができるタイプなのに幕末時代のことがよく分からないと言っていたので入門書的なやつを。ちなみに私は薩摩出身で特殊な教育を受けているので、このあたりのことは地雷です(大げさ)。」

夫「歴史に関しては本当にトンチンカンなので、難易度が非常にちょうどよかった。これを機にハマる……とまではいかないけれど、地元の藩政についての本を買いました。」

夫→妻・6冊目『心臓の力 休めない臓器はなぜ「それ」を宿したのか ー 柿沼 由彦 (著)』

夫「自然科学からは絶対にひとつは選ぼうと思っていた。安定のブルーバックス。交感神経の話など関心がありそうな話題がありつつ、難易度的にも、前提知識がなくてもギリがんばれるだろうレベルだったことからのノミネート。」

妻「おう、小馬鹿にしてるのか。ギリ読めるレベルだったわ。面白かったわ。」

妻→夫・5冊目『行政とデザイン 公共セクターに変化をもたらすデザイン思考の使い方 ー アンドレ・シャミネー (著), 白川部君江 (翻訳)』

妻「芸術・美術・デザイン系を1冊いれたくて、棚を眺めていたら目に飛び込んできて、これしかないと思った本。こいつが3,500円だったのでかなり予算を圧迫した。」

夫「あまりに守備範囲のド真ん中すぎて、逆に買わない。人のことは言えないが、プレゼントにあげるような本じゃないだろう。本自体の出来はちょっとアレだけど、もらった本だと思うと得した気持ちになる。」

夫→妻・7冊目『性からよむ江戸時代――生活の現場から ー 沢山 美果子 (著)』

夫「浮世絵や春画が好きだから、見つけたら自分で買うだろうな……と思いながらの選択。最後に選んだ本で、時間と金額の都合で他の選択肢が取れず。今回の中で一番遊びのない選書だったので、若干の心残り。」

妻「自分でもいつか買ったかもなという意味ではイマイチ。でも普通に興味のある分野なのでありがたくいただきます。」

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実ははじめてこの交換会を行なったのは4年ぐらい前である。そのときは贅沢にジュンク堂池袋店でのんびり選ぶことができたのだけど、夫が遊びで選んだ本が私の好みに合わず、なんなら本棚にあまり入れたくないなとも思い、微妙な空気になった。そのトラウマが若干あったので、第2回の開催が遅れてしまったが、第2回は全体的にとても良い交換会になったと我ながら思う。私達夫婦の性質を考えると(プレゼントを選ぶ手間も省けるし)、毎年冬に開催していきたい。

もうジュンク堂池袋店でのんびり選ぶことはできなくなったけど、そんな中でもさすがに互いのことがよく分かってきてるなと、改めて思った。夫と出会ってから7年間、互いの思想を議論しあってきたので(重たい)、お互いのツボがわかってきたのだと思う。互いの思想を議論し合うような夫婦には、本の交換会オススメです。

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