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ウサギはなぜ月で餅をつくのか

前回の、こちらの記事。
沢山の方に読んでいただき温かいコメントを頂きました。改めてありがとうございます。

この記事でも書いた通り、私は2歳になる前から祖母のお話を聞きながら眠りについていました。アンデルセンから、日本昔話、小学校低学年の教科書に載るような話までいろいろあったと思うのですが、殆どは忘れてしまっています。

でも、はっきり覚えている話が2つだけあります。不思議なことに2つとも古事記です。もっとも、それが古事記だと気がついたのはだいぶ大人になってからの話なのですが。

今回はそのうちの1つ、「因幡の白兎」(いなばのしろうさぎ)に関してのお話。


因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)

因幡の白兎がどんなお話か知っていますか?何十年も前の私の記憶をだどって思い出してみたところ、私の脳内にあるあらすじはこんな感じでした。

私の記憶によるあらすじ

  • 皮をはがされて泣いているウサギがいた

  • さらに悪いやつにだまされて海水につかってしまう

  • 体がヒリヒリがして泣いているところに一人の善良な人が通りかかる

  • その人のアドバイスに従ったところウサギは快方にむかう

  • 後日、その助けてくれた人が飢えて困っていた

  • そこに通りかかったウサギは今こそあの時の恩返しをしたい考える

  • 食料を何も用意できないウサギは「私を食べてください」と燃え盛る炎の中に飛び込む

この話をきいたのは、小学校に入学する前だったと思います。当時の私は想像力をフルに働かせ、物語を脳内で映像化していました。

でも「ウサギが皮をはがされる」部分に関して、恐ろしすぎて映像化できませんでした。

ウサギの皮をはぐって……。どんな拷問でしょうか。

さらに弱っているウサギをだまして海水につからせるとは!

傷があるときにお風呂に入っただけでも痛いのに、全身の皮をはがされた状態で塩水につかる……。想像しただけで身の毛がよだちました。

ここまででかなり衝撃的なのに、さらに追い打ちをかける展開。恩返しのために、自らを食ってくれって!

この踏んだり蹴ったりなウサギの話に、幼い私はとてもショックを受けました。睡眠導入のはずの昔話で目と頭が逆に冴えまくって眠れない 笑


それから数十年経って、ふとこの話を思い出したことがありました。気になって調べてみたところ、この話は因幡の白兎という古事記の中の1つの神話であることがわかりました。

本当のあらすじ

出雲の国にだいこくさまという神様がいらっしゃいました。

(中略)

兄弟たちが因幡の国の気多の岬を通りかかったとき、体の皮を剥かれて泣いている一匹のうさぎを見つけました。

兄弟たちはそのうさぎに意地悪をして、海水を浴びて風にあたるとよいと嘘をつきました。
そのうさぎはだまされていることも知らずに、言われるまま海に飛び込み、風当たりのよい丘の上で風に吹かれていました。

そうしていると海水が乾いて傷がもっとひどくヒリヒリ痛みだしました。前よりも苦しくなって泣いているうさぎのところに、後からついてきただいこくさまが通りかかりました。

(中略)

だいこくさまはそれを聞いてそのうさぎに言いました。

かわいそうに、すぐに真水で体を洗い、それから蒲(がま)の花を摘んできて、その上に寝転ぶといい。そういわれたうさぎは今度は川に浸かり、集めた蒲の花のうえに、静かに寝転びました。そうするとうさぎのからだから毛が生えはじめ、すっかり元のしろうさぎに戻りました。

出雲大社 https://izumooyashiro.or.jp/about/inaba

ちなみにだいこくさまというのは大国主命(おおくにぬしのみこと)のことだそうです。大国主命(おおくにぬしのみこと)はあの有名な天照大神(あまてらすおおみかみ)の弟、須佐之男命(すさのおのみこと)の子孫と言われています。

ジャータカ物語のウサギ

「おかしい」

出雲大社のHPに掲載されているあらすじを読んで私はこう思いました。最終的にウサギは火に飛び込むはずなのにその部分がない。

他のサイトも検索してみたのですが、やはりだいこくさまが最終的に美しい姫と結婚して終わってる。

Googleに「因幡の白兎 火に飛び込む」や「因幡の白兎 自己犠牲」など入れてみてもなにも検索に引っかからない。ウサギの自己犠牲の話は文科省の検閲でも入ってもみ消されたのか?とまで疑ってしまいました。

そこで今度はキーワードを変えて検索してみることに。

「うさぎ  火に飛び込む」と入れてみたところ、「インドの昔話」がヒット。さらに「帝釈天」なるワードもヒットしてきました。

なぬ?インド?帝釈天(たいしゃくてん)?

帝釈天ってあの寅さんで有名な葛飾柴又にある帝釈天のこと?なんでウサギと帝釈天が関係あるの?

いろいろな疑問が浮かび上がる中、さらに深堀していくと、火に飛び込んだウサギの話はお釈迦様(ブッダ)の前世を描いたインドのジャータカという物語の中の1つの話らしい、ということがわかってきました。

火に飛び込んだウサギの話のあらすじはこんな感じです。

ある森にウサギ(お釈迦さまの前世の姿)が住んでいました。正しい生活をしていたウサギを天界から見ていた帝釈天は、ウサギを試そうとバラモン(ヒンドゥー教の司祭者)に姿を変えて現れ、「何か食べ物を施してほしい」とウサギに言いました。いろいろ探したが食料を入手することができなかったウサギはバラモンに火を起こすように頼むと、自ら火に飛び込んだのでした。ウサギは我が身を食事として差しだそうとしたのでした。
帝釈天は正体を明かしてウサギを助けた後、その徳を伝えるため、ウサギの姿を月に描いたといわれます。

浄土真宗本願寺派 西要寺  http://saiyouji.com/16627083503644

数十年を経て知る真実。火に飛び込んだウサギの話と、因幡の白兎とは全く出所が違うのです!

因幡の白兎は日本の神話、火に飛び込んだウサギの話はインドの神話でした。どうやら私は幼少期に聞いた2つの違う話を、頭の中で勝手にくっつけて憶えていたらしいです。

そして、日本ではウサギが月で餅をついていると言われますが、月にウサギがいるのはなんと帝釈天(たいしゃくてん)の仕業だったみたいです。

神様って意外にいじわる

なんで今この話をnoteに書こうと思ったのか謎です。ですが、記事にしようと調べたおかげで私が2つの話を混同して憶えていたことが判明しました。

また、なんで月にウサギがいるのか、ちょっとした雑学まで学べたので結果的に良かったです。

それにしても、神様って結構いじわるですよね。因幡の白兎にでてくるだいこくさまの兄弟たちだって一応「神」なのに、泣いているウサギに追い打うちをかける嘘をつく。

ジャータカの方の神様、帝釈天もわざわざ変装してウサギを試すなんて意地が悪い。救いなのは大国主命(おおくにぬしのみこと)が素敵な人(神)だったことでしょうか。

これも何かの縁なので、このゴールデンウイークは大国主命(おおくにぬしのみこと)を祀っている神社にでも参拝にいってみようかな。

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