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まだDXは失敗していない

松浦 真弓

2020年12月に経済産業省から発表された「DXレポート2」。
このなかに衝撃的な事実がありました。なんと、95%以上の企業は、DXに取り組んでいないか、始めたばかりだというのです。そして、DXに取り組んで、失敗している企業も多いという声も。

DXは失敗しているのか?
私が思うに、多くの企業は まだDXに失敗はしていません

まだはじめていないか、成功までの道のりの途中にいるだけです。
DX推進とは試行錯誤の連続です。打率10割のバッターがいないように、
試行錯誤では必ず細かい失敗はつきものです。とはいえ、なぜ、DX推進に失敗したと騒がれるのか? 私がこれまで聞いた声をもとに考えてみました。

DXを通じて目指す先、ビジョンは明確か?

DXは手段であり、目的ではありません。DXを目的とすることは、掃除に例えるなら「掃除機を使いたい」と言っているのに近いです。部屋を早く効率的にきれいにする(目的)ために、掃除機を使う(手段)のに、その目的が不在のケース。これはDXに失敗したと話す企業でも多い事例です。

DXを通じて目指す先が決まっていないということは、企業としてのビジョンが欠落しているケースもあります。経営層は、まず目指すべき姿・ゴールを明確にする必要があります。

しかし一方で、経営者が壮大なビジョンを描きすぎる、夢を見すぎだという声も聞かれます。理想論だけで実情が全く伴っていなかったり、どう実現すればよいのか想像もつかない問題も。経営層が描くビジョンをどう現場に落とし込んで実現に繋げるのか? そのステップを具体化できていなければ、理想に到達することはできません。そのために必要なのが経営層と推進する現場との対話・連携、さらにコスト、人材、システム、ツールなどの整備です。

もちろんそれ以前に、既存事業を効率化し、DXに取り組むための人材や費用を確保しておく必要もあり、既存事業でしっかりと足固めして、現場の意識も変えておくことも求められるのです。

ここまで書いたとおり、DXは単なるデジタル化には留まらない非常に複雑な改革でもあります。何から始めるのか?誰が取り組むのか?を明確にすることを省いてはいけません。

現場主義の良い面と悪い面

DXは企業全体で取り組む施策です。その推進のキーの一つは、業務プロセス改革の主体となる現場です。日本の成長を支え、優れた現場を作り出してきた現場の文化、現場主義ですが、これには良い面と悪い面があると思います。良い面は、自力で動ける、考える、解決することを繰り返した成功体験と実績を持っている点。一方で悪い面は、その成功に裏打ちされた自信があるがゆえに、現場以外の声に対して聞く耳を持たないケースが見られること。

しかし問題解決につながる新しい手法や、他の業界や業種の改善例などについては、あらゆる世代・他部署や他の会社を含む様々な人々の話から学び、新しい視点を取り入れる姿勢が必要です。

経営層が現場に寄り添うことも重要ですが、現場の人たちも ”現場以外の声” に耳を傾けることを忘れてはいけません。

”DXを進められない理由” を考えていないか?

本来 DX とは新しい事業や価値を作り出して人材や組織さえもそれに合わせて変革することであるはずですが、

・すでに現業で優位性があるからDXは自社には必要ない
・現状で手一杯なのでDXには取り組めない
・DX推進のコストを負担できない
・対応できる技術者の数が足りないので取り組めない

といった声も聞かれます。同じように感じている企業の担当者も多いでしょう。しかし変化の激しい時代に変わらないことはリスクです。時代や状況に合わせて柔軟に変化に対応できる力こそ、今の企業にとって必要なもの。変わらないことのリスクを考慮し、競争に乗り遅れないよう一歩を踏み出すのは今しかありません。

またコストや技術者不足について危惧している担当者は、外部企業に発注することが前提の旧来のシステム構築手法に固執しているとも言えます。一部のシステムやアプリを内製することや、初期費用がかからない月額課金のサービスなどを導入することで解決できる課題もあります。

最近では、プログラミングなどの専門知識がなくてもアプリやシステムを構築できる「ノーコード」と呼ばれるツールも多く登場しています。こうしたものを活用することで、限られた予算や人材でもできることはあるはずです。

DX推進という言葉はダイナミックに聞こえますが、推進の実態は地味な活動の積み重ねです。スモールスタートでやれることからコツコツと取り組んでいく。DXの目的とビジョンさえ明確にできれば、最初の一歩は、デジタル化でも現場のカイゼンでも良いのです。

カイゼンとは‥
主に製造業や生産現場で行われている生産効率や安全性の向上、不具合低減などを目的とした作業の見直し活動のこと

限られた範囲からでも、はじめの一歩を踏み出すことができれば、その活動はやがて他の業務や他部署にも波及し、そこに関わった人々の意識が変化していきます。こうした変化がDXへの認識や理解につながることで、会社全体の文化が変わる。つまりDXの実現に近づくということを忘れないようにしましょう。

試行錯誤を繰り返し、途中でやめないこと

今回 note で #DXに失敗する理由 が募集されたように、現在に立ち止まれば、今はまだ、DXには成功していないと感じる企業も多いはずです。

しかし最も重要なのは、今、取り組んでいるDXを「失敗」ととらえずに次の一歩を踏み出し、歩き続ける勇気ではないでしょうか。

お伝えしてきたとおり、DXは、システムも事業も組織も変化する大きな変革です。だからこそ、途中でやめないこと。今は ”DX成功の過程にある” と考えて行動を継続すること。失敗を過度に恐れず、試行錯誤を繰り返し、自社に最適なDX推進を自らの意思で進めていくことが重要です。そのためには経営者が新しいチャレンジを歓迎する風土を作り出すことも必要でしょう。

DXの推進は、なかなか一筋縄ではいきません。だからこそ、このように、企業変革へのチャレンジの過程で小さな成功を積み重ね、DX推進に前向きに取り組む企業文化を醸成して、着実に一歩ずつ取り組んでいくことが大切なのではないでしょうか。

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