わたしは「おもしろい大人」のロールモデルになりたい。━さとのば大学とわたし
2022年4月。
私の新しい仕事が幕を開けました。
さとのば大学 事務局
という肩書きです。
あ、学生さんなのね?とよく決めつけられますが、運営側です。
働いています。笑
以前書いた通り、今年2月から見習い的な感じでさとのば大学にジョインしていたのですが、この4月から晴れて、社員としてフルコミットすることになりました。
さとのば大学ってなに?
さとのば大学は、株式会社アスノオトが運営している市民大学。
もともとは、2016年から「地域共創カレッジ」という社会人向けの学びの場で、未来の姿から逆算して今を考えるバックキャスティング的な「未来思考」と、自分軸でほしい未来に向かって小さく実行していける「実行力」のある人材を育てるための学びを提供していました。
2022年から「探究学習」が高校の学習指導要領に盛り込まれるなど、今では当たり前になりつつある「プロジェクト学習」や「プロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)」という手法を、当時から学びのシステムとして活用していたのが特徴的です。
東京でオフラインの講義をしていた「地域共創カレッジ」が、地方ですでに活動している地域おこし協力隊なども受講できる「完全オンライン」の講義となった2017年の冬に、私も3期生として参加させていただきました。
そんな学びをベースに、地域を旅する4年制の大学を創るという1,000万円のクラウドファンディングを成功させ、300人以上の支援を得て本格的にスタートしたのが「さとのば大学」なのです。
受講生は連携地域に「地域留学」して、現地のコーディネーターと一緒にプロジェクト実践にチャレンジします。
同時に、各地域へ散らばった仲間と一緒にオンラインで対話型の講義を受け、自分がやりたいことは何なのか考えたり、地域でのプロジェクト実践に活かせるインプットを得たりします。
自分が「やってみたい!」と思えるプロジェクトを実行して、失敗しながら学んでいくというオフラインとオンラインのハイブリッドな学びのスタイルです。
現在連携している10の地域は、日本の中でも小さな課題先進地である「おもしろい地域」ばかり。そんな地域だからこそ、学生が手を動かせる幅が広く、周りの人から声を掛けてもらったり、地域の変化が見られたりと「自分の力で社会が変わる」という実感を持つことができるのです。
2021年度からは、新潟産業大学の通信教育課程である「ネットの大学 managara」と連携が始まり、卒業すると学士が取れる=一般的な「大卒」と言える4年制大学としての「さとまなプログラム」が開講。
この春で、早くも2期生となる大学1年生を迎えています。
わたしに必要なご縁を運んできてくれる人との繋がり
そもそも私が、さとのば大学の発起人である信岡良亮さん(のぶさん)と出会ったのは、2017年夏に盛岡で開催された復興庁主催の研修会でした。
誘ってくれたのは、小林味愛さん。現在は福島と東京の2拠点で暮らし、福島県国見町の名産「あんぽ柿(干し柿)」の製造過程で捨てられてしまう柿の皮を使ったコスメブランド『明日 わたしは柿の木にのぼる』を立ち上げるなど、社会起業家として活躍されている方です。
私にとって、運命的な出会いを果たした彼女は、会いたかった人や知りたかった事例を繋いでくれるパワースポット的な人でした。
彼女が繋いでくれたご縁は、私の人生にとって必要なものになる、という直感を持っていたので、
「味愛さんに誘われたから行きます!」
という感じで参加したのでした。
3本立ての研修会だったのですが、第2回目の宮城県丸森町で開催された2泊3日の合宿が、それはそれは強烈なインパクトで。
自分自身と向き合うための様々な手法をインプットした後は、「1に対話、2に対話!」という感じで、とことん自分の内面と対話して、参加者同士でも対話して、そこから浮かび上がってくるものをただただ見つめるというまさに「修行」のような3日間でした。笑
自分が心の底に抱いている「ほしい未来」を言語化して、なぜそれを叶えたいのか、今足りないことは何なのか、明日から何ができるのか、ということにひたすら向き合う時間は、実際かなりしんどいものだったけれど、私が地域おこし協力隊として紫波町で活動していく上で本当に重要な基礎を固めてくれた場だったと思っています。
そして、そんなしんどい経験を一緒にした参加者の皆さんと、活動地域は異なってもお互いに「あの人も頑張っているから私も頑張ろう」と思える挑戦仲間として、その後も繋がっていられたことが何よりの財産となりました。
自分を見つめる「マイプロジェクト」と「beの肩書き」
その後、のぶさんに誘われて参加した「地域共創カレッジ」で、私は画期的な考え方に出会いました。
それが「マイプロジェクト」です。
もともとは、慶應義塾大学SFCで井上英之さんが開発した手法であり、誰かに頼まれたからではなく、個人的な問題意識をきっかけに自発的に始めたプロジェクトのことを指します。
思い入れのない地域課題や、やらされ感のある仕事など、世の中に溢れる「プロジェクト」は他人発信のものが多いように感じます。
でも、壁にぶつかっても乗り越えられるくらい本気で取り組めるのは、自分ごとの課題感から始まるプロジェクトだけではないでしょうか。
私も地域に入ってから、「若者のまちづくりへの関心が低い」「第一次産業の後継者不足」「地域のブランドが弱い」「空き家・空き店舗が増えている」などたくさんの地域課題を目の当たりにしました。
どれも「大変だ!」と共感するけれど、ここで生まれ育ったわけでもない自分が人生をかけて取り組めるような熱量を持ち続けることは難しいと感じました。
地域共創カレッジで学びながら自分自身と向き合った結果、やっぱり私は「こどもが好き」で、こどもたちが自分らしく生きられるための居場所づくりや体験の場づくりがしたいというマイプロジェクトが見えてきたのです。
地域おこし協力隊として求められていることや、紫波町というフィールドでできることとすり合わせて試行錯誤を繰り返した結果、今も続けている「あそびこむ」の活動に繋がったのでした。
また、2018年末に「1年間の振り返りがしたいな~」とネットサーフィンして見つけたのが「beの肩書き」という手法でした。
まちづくりやソーシャルデザインの界隈で知らない人はいないウェブマガジン「greenz.jp」の編集長も務めた兼松佳宏さんが提唱するワークショップで、私はこの記事を読んで、目からうろこでした。
「教師」「エンジニア」「〇〇会社△△部」「〇〇大学▽年生」といった、仕事や所属としての肩書き(doの肩書き)ではなく、自分のあり方(be)としての肩書きを見つけようというもの。
自分のあり方を「肩書き」として言語化することで、自分らしい「do」の姿が見えてくる、というところにものすごく感銘を受けて、書籍化されたばかりだった本を速攻で購入し、同封されていたイラストと一緒にお守りのように部屋に飾っています。笑
その後も地域でワークショップを開いたり、セルフワークショップを定期的にやったりしていますが、その度に新しい自分と出会えるのも素敵なところです。
実はこの「beの肩書き」が、現在はさとのば大学のカリキュラムとして採用されていることを知らず、ましてや兼松さんが専任講師を務められているなんて夢にも思わなかった私。
今年2月に初めてさとのば大学の講義に参加した時、
━━え、兼松さんて…!ご本人やん…!
と、ひとり猛烈に感動していたのはここだけの話です。笑
こどもたちが自分らしさと出会うために必要なロールモデル
最後に、私がなぜさとのば大学で事務局として働こうと思ったのか。
それは自分がかつて受講生として学んでとても良かったから、というのも確かです。
自分が心から良いと思えるものを売れる仕事って、ものすごくやりがいがあるし気持ちがいいものです。
紫波町で出会った新規就農のぶどう農家さんが、アパレル仕事を辞めてぶどう農家になった理由を聞いた時に同じことを言っていたなあ、と思い出します。
でも一番の理由は、私のほしい未来に繋がっていると思うからです。
「誰もが自分らしく生きられる社会をつくる」という夢のために、今の私ができることは、
「社会にはおもしろい大人がたくさんいるよ」
「こんな生き方も、あんな生き方もあるんだよ」
と、多様な人生の選択肢をこどもたちに見せていくことなのではないかと思っています。
さとのば大学には、そんな素敵な大人がたくさん関わっているし、さとのば大学で学ぶ学生の皆さんも、そんな多様な人生を歩み始めた同志なんですよね。
私自身も、すでに新卒から5つめの仕事となりましたが、曲がりくねった人生を歩めば歩むほど「おもしろい大人」という目標に近づいている感じがします。
縁もゆかりもなかった岩手県紫波町に暮らして、リモートワークで日本全国の仲間たちと時間を過ごし、地域でこども向けのイベントをやって、たまに小児科で保育士をしている、今の私。
doの肩書きを並べるだけでも、おもしろそうでしょ?笑
人生の道草や回り道を楽しめるコミュニティで、これからも私の生きる道を探っていきたいと思います。
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