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あんまり好きじゃないのにカラオケには特別が詰まっている① Mr.Children,BUMP OF CHICKEN

社会人になるまで音楽を聴く習慣がなかった。実家にはテレビがなかったので、曲というのは街なかで勝手に流れているものだった。あとは誰かとカラオケに行った時に聴くもの。
だから、原曲を聴く前に知り合いが歌う歌から知った曲が沢山ある。思い入れのあるアーティストの多くもカラオケから始まっている。そのうちのふたつ、Mr.ChildrenとBUMP OF CHICKENについて書いてみる。



大学の頃のバイトの先輩/Mr.Children

大学1、2年生の頃に週2回コンビニでバイトをしていた。「いらっしゃいませ」ではなく、「〇〇店へようこそ!」と掛け声をする狂った店舗だった。大学への通学前にできるということで選んだが、クリスマスケーキの予約のノルマがあってバックヤードに成績が貼り出されたり、トイレ掃除は勤務時間外でやることになっていたり、正真正銘のトチ狂い方だった。フランチャイズゆえのやりたい放題だった。
職場が理不尽なので、よくあることだがバイトは一致団結していて、同年代でよく遊びに行った。飲みに行ったり、旅行に行ったり。コンビニの近くのカラオケに行くと、店員さんに「あれ?みなさんそこのコンビニの店員さんたちですよね…?」と混乱されて愉快だった。

私は早朝勤務だったので、出勤すると深夜勤務のバイトがいて、6−7時の1時間だけ勤務時間が重複していた。深夜勤務によく入っていた桜川さんという20代後半くらいの男の人がいて、私はその人のことが少し好きだった。他の人のシフトの日は何も思わないのに、桜川さんのときだけ、「私は目覚めてここにいるけれど、この人はこれから眠るんだな」と生活のズレをおもしろく思った。
声が小さいけど必要なことは言うところとか、飲んだ帰りに「いい夜でしたね」って呟くところとか、額の真ん中に長い毛が生えているところとか(宝毛というらしい)、他の店員にセクハラしてくる客に心から怒るところとか、生きにくそうだけど本当のことを言っていそうな素敵な人だと思っていた。シフトが重複する1時間が楽しみだった。
桜川さんは本業はバンドのボーカルをしていて、資金繰りのためにバイトをしていた。早朝の勤務重複1時間を重ねて重ねて累計20時間くらいになった辺りで、練習のためのカラオケにたまについて行くようになった。ふたりで行って、私は歌わずに、2,3時間に渡って桜川さんの歌を聴いていた。Mr.Childrenのコピーバンドだったので、ずっと彼らの曲で、私はこのときにMr.Childrenの曲を初めてちゃんと聴いた。
曲の優しい寂しさに、桜川さんの余裕のない誠実さと、私の少し好きという気持ちが全部混ざって、特別な時間に感じた。この人とこれ以上のよい時間を過ごすことはないだろうな思って、そのことに悲しくなったりぞくぞくしたりした。

ここで何してるの? 僕はどこにいるの?
こんな場所にくるのを望んだわけじゃないんだ

REM/Mr.Children


大学の研究室の先輩/BUMP OF CHICKEN

飲み会の後によくカラオケに行く研究室だった。その中で、ひとりだけ歳の離れた賢くて研究が好きな先輩がいて、卒論と修論でお世話になった。私がその分野で仕事をしたいなと思い出した時期だった。
その人はBUMP OF CHICKENが好きで、カラオケでいろんな曲を歌っていた。私の卒業式の後の飲み会の後のカラオケでは、あなたたちの人生を応援しているよと、ダイヤモンドという曲を歌ってくれた。低く優しい声の人で、ダイヤモンドを聴くと今でもその人に応援されているように思う。あのカラオケから繋がっている先に今の仕事があることを思い出す。彼に恥ずかしくないように、がんばろう。

何回転んだっていいさ 擦り剥いた傷をちゃんと見るんだ
真紅の血が輝いて 「君は生きてる」と教えてる
固いアスファルトの上に雫になって落ちて
今までどこをどうやって歩いてきたのかを教えてる

ダイヤモンド/BUMP OF CHICKEN



カラオケは苦手だけど、好きな人がうたう歌は好きだった私が、自分も歌いたいと初めて思ったときのことは別の記事に書いてみた。


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