見出し画像

CONCIERGE|モーヴ街への招待状

Text|Mistress Noohl

《MAUVE STREET|モーヴ街》とは、霧とリボンが運営する「オンライン上のストリート。各noteを美術ギャラリーや図書館、アトリエや百貨店などの建物に見立て、多彩な文化発信と作品の展示販売を行うプロジェクトです。現在建物は全部で9つ。あちこち寄り道しながら、モーヴ街のお散歩をお楽しみください。

MAUVE STREET|モーヴ街、午前11時——

MN_ポスター_noon

 ダロウェイ夫人の季節を迎えようとしている頃、note上に《MAUVE STREET|モーヴ街》を開通。本日より、開通記念イベント《MAUVE NOUVEAU|モーヴ・ヌーヴォー》がスタートしました。

 《MAUVE STREET|モーヴ街》構想のきっかけは、毎年六月、決まって紐解いてきたヴァージニア・ウルフの短編『ボンド街のダロウェイ夫人|Mrs Dalloway in Bond Street(1923年)』を、いつもの年よりも早く手にしたこと——

 手袋を買いに行くわ、とダロウェイ夫人は言った。
 通りに足を踏み出すと、ビッグ・ベンが時を打っていた。ちょうど午前十一時、まだ手つかずの時間はすがすがしく、海辺の子供たちへと放たれたようだった。けれど、繰り返される鐘の音の思慮深い律動には、なにか厳かといえるものが、車輪のつぶやきとすり動く足音の中で、心をわき立たせるものがあった。
 
 ヴァージニア・ウルフ|著
 維月 楓|訳
 『ボンド街のダロウェイ夫人』より

画像2

 ボンド街へ手袋を買いに行くために、ウェストミンスターの通りを歩いているダロウェイ夫人。ビッグ・ベンが時を告げる午前11時——そのすがすがしい瞬間を全身で浴びるように生き生きと、健やかに頰を過ぎる風を感じながら、背筋を伸ばして凛と歩みを進めるダロウェイ夫人の姿が目に浮かびます。

 しかし同時に、その生き生きとした一歩は、第一次世界大戦の爪痕がいまだ通奏低音のように響き続けていることへの、苦悩や悲しみを知る慈愛の一歩でもあるのです。1925年に発表された長編『ダロウェイ夫人』では、インフルエンザ(スペイン風邪)の後、心臓の調子がよくないダロウェイ夫人の様子も描かれています。

 ——今の私たちに重なる気持ちや状況にはっとして、しばしページをめくる手を止め、毎年親しんできた物語が、違った手触りをもって胸に迫ってくる時間を、厳かに味わい尽くしました。

画像5

 2020年が始まった時、誰が予想したでしょうか——現在わたし達は、未知のウイルスの脅威にさらされ、先の見通しが立たず、あらゆる心配事に直面しています。緊急事態宣言が解除されれば安心できるのか、不安が消えない場合はどう行動することが正解なのか、病への恐怖と経済的な不安に対して、どのように折り合いをつけていったら良いのか——誰もが手探りで日々を過ごしています。

 運営する霧とリボン 直営SHOP & ギャラリー「Private Cabinet(吉祥寺)」を休業し、外出を控え、自宅で過ごすようになってから約2ヶ月。めぐる季節の繊細な変化を肌で感じながら、作家さまの作品をご紹介し、お客様と楽しく過ごすひとときがいかに奇跡のような日々であったか——窓から望む新緑が揺れる風景とはうらはらに、小部屋の時は、パタリと止まってしまったかのようです。

ダロウェイ夫人は、ある気概を感じて背筋を伸ばした。同じものが、伝統を引き継ぎ、受け渡し、自制と苦難の経験に精通する者とさせたのだ。

 同前より

 沈静と停滞が小部屋の隅々にまで広がってゆく中、このままの状態が続いたとしても、この瞬間を健やかに生きていくために、ダロウェイ夫人のように、ぴんと背筋を伸ばして、通りを歩いてみたい——MAUVE STREET|モーヴ街のひそやかな構想は、こうして始まり、止まっていた時の針も、ふたたび動き始めました。

 今後、展覧会やイベントの延期や中止が続いた場合でも、悲観せず、今できる最善の方法として、オンライン上に作品発表の場を設け、文化発信する活動を守り続けて行きたい——先にオープンしていたオンライン・ギャラリー「MAUVE CABINET」を発展させる形で、関係者の皆様のご協力の元、MAUVE STREET|モーヴ街のプロジェクトがスタートしました。
 
 このほどオンライン上に開通したMAUVE STREET|モーヴ街。それは、各noteを建物に見立てた、架空のストリート。
 ウェストミンスターの通りからセント・ジェイムズ公園へ、ハチャード書店の張り出し窓を見つめて、ボンド街へ——ダロウェイ夫人の一冊をひらけば豊かな風景がひろがり、歩幅をあわせて、通りを歩くことができます。

画像15

 ここMAUVE STREET|モーヴ街も、そんな風に、皆様の眼前に素敵な風景が広がりますように。素晴らしい一冊と、一冊をひもとく想像力に、心からの敬愛を込めて、MAUVE STREET|モーヴ街の地図は、書物の背表紙が並ぶ風景をファザードに見立ています。

MN_ポスター_noon

文化はストリートから生まれる
想像力をポケットに入れて
文学・アート・モードの冒険へ出かけよう
オンライン上に新しく開通した
MAUVE STREET|モーヴ街へ、ようこそ!



霧とリボンが活動の最初期から制作販売してきた
『ボンド街のダロウェイ夫人』をテーマにした
小間物類の一部をご紹介致します

00_通販対象商品

商品名|PAPER BAR〜ダロウェイ夫人風味(チョコバー型の薄紙メモ帳)
全4種・各60枚綴り
サイズ|12cm×3.6cm
全種グラシン紙に包んで霧とリボンシール貼付でお届け
*全4種の詳細はオンライン・ショップに明記しています

画像6

画像7

画像15

 霧とリボンのお菓子に見立てたステーショナリーの定番、チョコバー型のメモ帳です。風味は「ダロウェイ夫人」——手袋を買いに行くヴァージニア・ウルフの短編『ボンド街のダロウェイ夫人』へオマージュを込めて、アール・デコ時代のガントレットのある手袋のイラストを添えました。

 メモ本体は繊細な薄紙。サイズも小さいので、一言メッセージを添える時に重宝します。また、本に直接書き込みをしたくない方には特に、読書中のメモとしておすすめです。薄いので、本に挟んでもかさばりません。ふたたび本をひらいた時に、ページの間から押し花のようにメモが見つかります。

 また、香りを付けて文香としてお便りに封入したり、ムエットとしても活用できますので、香水愛好家の方にもご愛用頂けましたら嬉しいです。お財布に入る小さなサイズです。

00_通販対象作品

作品名|ダロウェイ夫人のミドル・フィンガー・ブローチ(指輪)〜ミントの葉
リングサイズ|フリーサイズ(ご自身で調整可能です)
チャーム部のサイズ|タッセルの先まで6cm
素材|タッセル部は絹糸・スワロフスキー・メタルパーツ
ウエス付き・保証書付き・箱入り

画像11

画像12

 霧とリボンの定番リング・シリーズより、『ボンド街のダロウェイ夫人』に登場する「ミントの葉」色の絹糸タッセルが印象的なリングです。タッセルは、細番手の絹糸を使用したオリジナル。手の動きに合わせて優しい風合いのタッセルが繊細に揺れます。一粒のスワロフスキー煌めく一品、ダロウェイ夫人の季節に身につけてみてはいかが?

00_通販対象作品

作品名|ダロウェイ夫人のチャームブローチ〜フレンチ・グローヴ
リボン部サイズ|2.6cm×3.7cm
ブローチ全体の長さ|5.9cm
ブローチピンで留める仕様
素材|手彩色イラスト入りアクリル樹脂チャーム・リボン・メタルパーツ
ウエス付き・保証書付き・箱入り

画像13

 『ボンド街のダロウェイ夫人』に登場するフランス製手袋の手彩色イラストと物語中の会話「French Gloves, Madame?」をチャームに封印した、ちいさなブローチ。動きに合わせて、チャームが揺れる仕様です。
 裏面に留め具が付いているリボン部分は、鮮やかなピンクのグログランリボンに小花風細リボンロープを配し、ちいさいながら印象を残す仕上がりに。
 胸元だけでなく、ワンピースのウエストやスカートの裾、またお帽子や布製のバッグに留めても素敵になります。物語を身につけて、ダロウェイ夫人の世界を散策してみて下さいね。

↓モーヴ街MAPへ飛べます↓

00_MSmap_ラスト

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?