松﨑 丈

宮城教育大学 特別支援教育専攻 教授。しょうがい学生支援室 副室長。 ろう者(先天性風疹症候群による重度感音性難聴)。主な意思疎通手段は手話と文字。 ここでは日々思索していることをしたためています。 本文の最初にある画像は、その風景に心惹かれる度に撮っておいたものです。

松﨑 丈

宮城教育大学 特別支援教育専攻 教授。しょうがい学生支援室 副室長。 ろう者(先天性風疹症候群による重度感音性難聴)。主な意思疎通手段は手話と文字。 ここでは日々思索していることをしたためています。 本文の最初にある画像は、その風景に心惹かれる度に撮っておいたものです。

最近の記事

「聴覚障害とひきこもり」

2020年12月12日(土)に「聴覚障害者の精神保健福祉を考える研修会2020」で聴覚障害とひきこもりについて講演。 斎藤先生の講演内容はどちらかといえば学術的な知見を網羅した総論的な内容でしたので、こちらは当日斎藤先生の話を聴きながら参加者がひきこもりの問題についてより深く理解していただくためにどうしたらいいか考えながら講演してみました。 先日、参加者の方々から感想を頂きましたが、幸いにもその通りにひきこもりの問題を深く考えていただくきっかけになれたようです。講演の内容

スキ
9
    • 「誰かと相談してはどうか?」

      8年前の今日に別府で約20年ぶりに再会できた中学校時代の恩師。 小・中・高校時代を生きた中で、私に「誰かと相談してはどうか?」と冒頭の言葉をかけてくれた唯一の教師です。12年間、学校教育を受けていながら現在でいう「合理的配慮」がなかったために教師全員のことばを知ることができませんでしたが、冒頭のことばは、私に語ってくれた数少ないことばの1つであり、今でも鮮明に覚えています。 中学校時代は自殺を何度も考えており、思い詰めていた私の表情に気づいてくださったのか、昼休みだったか

      スキ
      4
      • 自己エスノグラフィー(auto-ethnography)による研究

        現在、自己エスノグラフィー(auto-ethnography)による研究を個人的に始めてからもう6年目。小学校時代に毎日書いていた日記もデータの1つとして収集・分析しています。 当時の日記は、日本語の読み書きを身につけるための指導の一環として行われていましたが、改めて読み返してみると、小学校に入学した時から誰かとつながることができるのかいつも不安と緊張に駆られながら自分なりに生きようとしてきた足跡がみえてきます。 例えば、聴こえる同級生と遊んだことについて「楽しかった」や

        スキ
        11
        • ろう幼児の語りに見る「手指休止」

          1.自己編集を示唆する停滞現象としての有声休止  人間は、いろいろな出来事や情報を一つの物語としてまとめて一方的に語るとき、あらかじめ何をどのように話すかを考えようとします。こうした思考活動は、心理言語学では「自己編集」とよばれています。  これは発達心理学者の岡本夏木(1985)のいう「二次的ことば」の特徴の1つであり、言語によって分析したりまとめたりするといった思考活動を示しています。ようするに、考えながら話す、または話しながら考えるということです。  ただ、自己編集は

          スキ
          56

        マガジン

        マガジンをすべて見る すべて見る
        • 「教育」の話。
          松﨑 丈
        • 「心理」の話。
          松﨑 丈
        • 「自己/当事者」の話。
          松﨑 丈
        • 「障害」の話。
          松﨑 丈

        記事

        記事をすべて見る すべて見る

          超巨大地震が発生した瞬間に起こった心理状態。

          東日本大震災が発生した2011年3月11日14時46分。 その時、自分は宮城教育大学3号館3階にいた。3階にある松﨑研究室の時計の針は、過去に経験したことがない異常な揺れ方で床に落ち、動くのを止めた。止まった時計の針は自分の当時の震災記憶そのものだ。 毎年3月11日になると、当時自分が見てきた映像が写真のようにモノクロで映し出され、その写真を見ている自分も静止したかのように映像を見つめているような感覚にいつも襲われる。 最近、当時の記憶を少しずつ言語化できるようになって

          スキ
          18

          東日本大震災3.11でどのように活動してきたか

          東日本大震災3.11を通して自分はどのような活動をしてきたのか。 当時の状況を記録してきたメモをもとに活動記録資料の1つとしてここに残しておきます。 <東日本大震災の前に備えていた防災対策> ・10年前頃(2000年頃)から宮城県の映像メディアで30年以内に大震災が発生すると言われていたため、防災対策を練り始める。 ・仙台市の洪水・土砂災害ハザードマップ等を参考に安全と思われる地域の賃貸マンション(仙台市青葉区八幡)に決定。  ・大家に毎月水道代を現金払いする時、筆談で室内

          スキ
          5

          東日本大震災におけるICT活用の実践。

          iPhoneを購入。それは東日本大震災が起こる前のことでした。 このデジタルデバイスが、ろう・難聴の遠隔コミュニケーションや情報保障でどのように役に立つことができるのか色々と試しました。 音声認識、テレビ電話、メモ、懐中電灯、SMSなど様々なアプリをダウンロードしては実際に使ってみて、使い勝手の良さ、実用性の高さ、使用場面との相性などを確かめたのです。 そして3月11日。地震の異常に大きな揺れがおさまった後、iPhoneの様々なアプリを駆使して情報収集を行いました。特に有

          スキ
          8

          ろう学校における「震災教訓の継承」。

          東日本大震災10年目を迎えます。 10年目になると、東日本大震災のような震災が起きた時に私たちはどのように対応していくことが大事になるのか、といった「震災教訓の継承」のありかたがますます重要になってきますね。 そこで、これまで把握してきたろう学校(聴覚支援学校)における防災・減災の取り組みや私が実践した防災授業の事例などから、ろう学校における「震災教訓の継承」について大事なことは何かを考えてみたいと思います。 児童生徒にとってろう学校における生活空間は、学校(校舎)と寄宿

          スキ
          13

          「悲し」の感情は「愛し」と共に。

          今年はコロナ禍でたくさん悲しいことがありました。 会って話したいのに会えなくなってしまった。マスクで人の表情が分からずお互いの感情を交わせているのかわかりにくくなってしまった。オンラインのために同じ空間を共有できないまま必要なことだけを話して終わることが多くなってしまった。レジや受付でお互いの身体が少しでも触れることを申し訳なく思うようになってしまった。 コロナ以前では当たり前のように経験していたことが、できなくなってしまった。だから、本当に2020年が今日で終わってしま

          スキ
          6

          自閉症スペクトラムの男児と先生が紡いだ小さな物語。

          「ことばを身につける」とはどういうことだろう。 様々な障害があり、ことばを身につけることが困難とされている子どもたちと細やかで丁寧なコミュニケーションを実践する。 その実践には、私たちにとってもいわゆる言語獲得も含めて「ことばを身につける」ことを考える上で大切なことがたくさん隠されているように思えてならない。 そう考えさせられるエピソードを1つ紹介したい。それは自閉症スペクトラム(ASD)の男児と学校の先生が紡いだ小さな物語である。 ある特別支援学校でASDの小学生(K

          スキ
          17

          人の行動の機微に添うと新たな対話が開かれる。

          ミカンが大好きな、ダウン症のろう女児Aちゃん。 お母さんにミカンの皮を剥いてもらって身を一房ずつ美味しそうに食べます。Aちゃんは、お母さんがミカンの皮を剥いている様子をじっと注意深く見ています。剥いてもらったミカンの身が目の前に来るのをただ待っているのではなさそうです。お母さんは笑顔でミカンの皮を剥いてはAちゃんに渡すということを続けます。 私は、お母さんに、Aちゃんは食べたいだけでなく剥きたいようだ、剥かれていないミカンをAちゃんに渡してはどうかと提案します。お母さんは

          スキ
          21

          ろう者の感覚が生み出す音楽。

          「LISTEN リッスン」。これは、ろう者の音楽を表現したアート・ドキュメンタリー作品。映画監督はろう者2名が共同監督。スタッフ・出演者のほぼ全員もろう者。2016年に制作し、全国各地で上映されるたびに話題を集めました。 同作品のオフィシャルサイトではこのように述べられています。 映画監督である牧原依里は、これまで視覚や振動に工夫が施された“聴覚障害者向け”の音楽に心を動かされることはなかった。むしろ、無音で鑑賞するミュージカル映画のダンス、オーケストラの指揮者や演奏者の

          スキ
          39

          ダイアログ・イン・ザ・ライト:異なる身体性の遭遇と対話への信頼

          先日、ダイアログ・イン・ザ・ライトに行ってきました。 ダイアログ・ミュージアム「対話の森」で行われているプログラムの1つで、長年実施している「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」がコロナ感染拡大によって難しくなったため、期間限定で新たな取り組みとして展開しているものです。このプログラムでは、ゲスト(聴者)が8名で1グループを作ってアテンドを担当する視覚障害当事者と活動するようです。そのように組み合わせでの活動の詳細については、以下のWeb記事で把握できます。 「対話」こそ想像力

          スキ
          11

          ダイアログ・ミュージアム「対話の森」で行った当事者研究ワークショップ。

          コロナの感染再拡大が見られていた7月下旬。 ダイアログ・イン・ザ・ダークの視覚障害当事者アテンドの皆さんとオンラインで2日間、当事者研究ワークショップをしました。 ダイアログ・イン・ザ・ダークとは何でしょう。公式ホームページ( https://did.dialogue.or.jp/about/ )では次のように述べられています。 この場は完全に光を閉ざした“純度100%の暗闇”。普段から目を使わない視覚障害者が特別なトレーニングを積み重ね、ダイアログのアテンドとなりご参

          スキ
          10

          ろう・難聴学生が「目」の健康を保つための6つのポイント-オンライン授業の受講に向けて-

          はじめに 新型コロナウィルスへの対応のため、教育機関でオンライン授業が行われるようになりました。  ろう・難聴学生にとって、オンライン授業は、デジタルデバイス(ノートパソコン、タブレット、スマートフォン)だけで講義の映像や遠隔情報保障(パソコンノートテイク、音声認識)を見続ける状況が多くなります(図1)。 図1 現地での授業とオンライン授業の違い  音声を聞きながら必要な時に画面を見ることができる健聴学生と比べて、デジタルデバイスを長時間凝視することは、「目」に多大な負担

          スキ
          50

          首長記者会見の生中継の放送や配信に手話通訳が映るために何をしたらいい?

          1.はじめに 2020年2月以降の新型コロナウイルス感染者の増加を受け、4月8日に安倍晋三首相が「緊急事態宣言」を発令したことについて記者会見が生中継で行われました。記者会見の生中継で、NHK及び民放各局のすべての番組に手話通訳がついていたことは記憶に新しいでしょう。このNote記事「記者会見の放送に見る手話通訳-今後も放送されるのか?-」でも触れています。 言語的マイノリティであるろう者が、どの局の番組を選択しても、私たちの生活や文化に深く関わってくるほどの非常に重大な情

          スキ
          61