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15年以上勤めた高校教師からフリーランスになった、ワケと本音

「そういえばnoteでは、転職した理由や当時の思いをきちんと書いたことがなかったな…。」と気付かされた松梅タケです。
初めましての人は初めまして。

この記事では

  • 大学を卒業してから、教師しかしてこなかった

  • 教師歴は15年以上(常勤講師の時代を合わせて)

  • 2023年4月からフリーランスになった(今は映像制作メイン)

こんな人生を歩んできた私の、転職を考えた当時の心境や、実際に転職に踏み切った理由ワケをまとめていきます。

本記事の要点は、こんな感じです。

教師の転職率は0.2%?10年先輩たちが楽しくなさそう。副業やスモーステップの進め。要点はこの3つ

ではどうぞ。


先輩たちの教師人生がつまらなそうだった

教師を辞める理由として、想像しやすいもの(よく聞かれるもの)は

  • 精神的、体力的にしんどくてやめた

  • やりがいがなくなった

  • 理想と現実との乖離がひどくてやめた

など、どちらかというとネガティブな理由で転職を決意したという内容です。

実際、近所の飲み屋や美容室で私の経歴を店員さんに話すと

「やっぱり教師ってしんどかったですか?」

と必ず聞かれます。(もちろん、否定はしません笑)

昨今の「教師の仕事=しんどい仕事」というイメージがあるので、やはり教師を辞めた=後ろ向きに辞めたと考える人が多いのかもしれません。
(いや実際にしんどい人たちもめちゃくちゃいるんで、合っているんですが)

転職したいと思ったきっかけ・・・・として「しんどかったから」はもちろんありますし、そんな人は多いと思います。

しかし「しんどい」ってバリエーションも深度もさまざまですから、きっかけになることはあっても、本当の意味で「教師の仕事がしんどいから辞めた」と言う教師はそこまで多くないように感じています。

よって私の転職理由も「しんどかったから」が一番ではありません。
理由はこちら。

  • 転職するのにタイミングが良かったから

  • 10年後や20年後を考えた時に、教師のままでいるのは楽しくなさそうと感じたから

この2つが、私の主な転職理由です。
特に「今後の人生が楽しくなさそう」というのは、致命的になると思いました。

人生の大半を占める「仕事」が、楽しくないのは怖い

40歳を意識した30代後半に、10年先輩(50代)や20年先輩(60代)の人たちを職員室で見ていたんです。

すると(俗にいう教育困難校だった私の職場だけの可能性はありますが)、1日のうち

  • 楽しそうな表情をしている時間帯

  • 文句を言っているような表情の時間帯

これらの割合が、だいたい1:9くらい
よくても「2:8くらい」だということに気がついてしまいました。

「教師の仕事は大変である。」

この事実を、忠実に体現しているようでした。

口を開けば、生徒や保護者への文句。
文句を言いながらもトラブル対応に追われる毎日。
それに負けず劣らずと、仕事そのものや仕事量に対する愚痴。
(気持ちはめっちゃわかりますけどね)

身体も、やれ膝が痛い、腰が痛い、体が重い。
パソコンと向き合いながら、生徒や教師が入れ替わり立ち替わりでやってきて、5分ごとに中断させられる毎日のランチ時間。

若い時は勢いでやってこられたものが、年々体力も衰えてくるからキツく感じている印象があります。

生徒の成長を感じて喜びを得る時はもちろんあるし、懐いてくる生徒たちももちろんいます。しかしそんな生徒たちの存在は、やはり2:8くらいの割合なのでしょう。
明るい表情をしている時間帯は、(教師同士での雑談タイムを除けば)少なく感じてしまいました。

教師の手柄は、生徒たちのおかげ。
教師の失敗は、教師の全責任。

こんな状況が長年続くからでしょうか。

50代・60代の先生たちをみていると、楽しそうな表情と文句を言っているような表情の割合が、よくて2:8くらいだと気がついたのです。

あれ?50代・60代の教師は楽しくないかも…。

40歳を意識した30代後半にそう感じてしまいました。

プライベートこそわからないのでなんともいえないのですが、なんだか「わり切って働いている人」が本当に多いと感じたのです。

教師の出世は禊

民間では出世という「刺激」もあるのかもしれませんが、教育現場ではそもそも管理職試験を受ける人が少ない上に、出世する旨みはほとんどありません。

「現場の方が楽しい」(生徒と関わっている方が楽しい)ことが最たる理由ですが、それ以上に、年功序列で給与は決まっているし、ヒラでも社会的信用力がかなり高いので、わざわざ出世しなくても良いのです。

事実、管理職になってから退職をすると、退職後に市役所や県庁などで重役のポジションを与えられたり、大学や専門学校などの顧問として働けるといったいわゆる「天下り」的な旨みはあります。
しかし全て教師をやめた後の「退職後の話」ですので、教師をしながらのメリットはほとんどありません。

何より出世したいと思うと、一度「禊」を経験しないといけないのは、結構なハードルです。

何を隠そう学校の職員で一番(精神的&拘束時間的に)忙しいのは、管理職の教頭だからです。

それなのにも関わらず、少子高齢化のあおりを受けて(校長のポジションが空かなくて)教頭職のまま定年退職する人も多くいます。

今から10年後や20年後、こんなふうに毎日を過ごして、死ぬ直前で『私の人生は楽しかった』と言えるだろうか?

そんな風に感じてしまい、急に怖くなりました。

誤解してほしく無いのは、別にその人たちは不幸だとか、私の選択が正しいとかを言いたいわけではありません。

起きている時間の半分以上、いや信用失墜行為の観点から言えばプライベートの時間も合わせて1日中「教師として」働くのに、あまりにも「ため息をつく時間」「しかめっ面になる時間」が長すぎないか?と感じてしまいました。

人生の優先順位を考えさせられた

怖くなったのは「50代・60代の教師は楽しくないかも」と感じてからです。

仮に10年後、50歳になって「辛すぎるから仕事を辞めたい」と思っても、教師以外の仕事をしてこなかった弊害で、結局、少しでも働きやすい環境を求めて、別の学校で教師をする以外の選択肢はないでしょう。

「教師をしてきたというキャリアだけを持って、退職後にのんびり暮らす」

このご褒美のためだけに、残りの10年や20年を割り切って過ごすのは、あまりにも耐えられないと感じてしまいました。

皮肉にも教師という職は、たとえ50歳や60歳からでも、免許さえ持っていれば教師として働く(講師として働く)方法はあるので、ずっと教師をしている必要性はかなり低いです。

余談ですが、この20年で教師の退職金も減り続けています。
一応、執筆時点でも定年退職時にもらえる退職金は2,000万円ほどらしいですが、少子高齢化で給料は減り続けていて、反対に定年がどんどん伸びている現状を考えると

  • 40代以下の教師は、定年が70歳や75歳になるだろう

  • 40代が70歳を迎える30年後には、退職金は今の半額くらいの可能性も高い

こんな未来は、火を見るよりあきらかに思えてきました。

退職金は減り、労働時間(人生)は長くなる。退職後にのんびり暮らすというご褒美は、今の40代教師には許されていない。それにもかかわらず教師の仕事はため息にあふれている。

そんな思いが私の中を満たし、人生の優先順位の見直しを行った結果、15年以上続けてきた教師を辞め、40歳でもフリーランスになって働くことを決意させました。

この辺りの心境については、過去記事にまとめているので

  • 40代でフリーランスになった時の心境

  • フリーランス生活はどうなのか?

  • 不安や心配はないのか?

このような内容が気になる方は、こちらの記事をチェックしてもらえると嬉しいです。

みんなに聞かれた「なんで辞めるの?」「やめてどうするの?」

教師のイメージ

ご存知の方も多いでしょうし、私個人で運営しているいくつかのサイトで似たような記事もたくさん書いているので、私自身も今さら感・・・・はありますが、教師の転職率は激低いです。

教師に限らないかもしれませんが、転職する人数については「離職数」から算出することができ、特に教師については、文部科学省が3年ごとに発表している「学校教員統計」という資料から求めることができます。

辞める理由はいくつかありますが、主な理由として

  • 定年退職

  • 転職

  • 家庭の都合(介護・看護など含む)

  • 自身の病気(精神疾患など含む)など健康上の理由

このようなものがあり、最も多いのは「定年退職」です。

執筆時点での最新資料「【R4学校教員統計】中間報告公表について」によると

小学校(全体の離職者数:14,973人)
定年退職:7,957人(53.1%)
病気のため:757人(5.1%)
転職:2,083人(13.9%)
家庭の事情:1,882人(12.6%)

中学校(全体の離職者数:8,448人)
定年退職:4,823人(57.1%)
病気のため:411人(4.9%)
転職:1,277人(15.1%)
家庭の事情:725人(8.6%)

高校(全体の離職者数:5,580人)
定年退職:3,569人(64.0%)
病気のため:189人(3.4%)
転職:640人(11.5%)
家庭の事情:306人(5.5%)

【R4学校教員統計】中間報告公表についてを基に算出
※カッコ(%)は全体の離職者数に対する割合

このような数値になります。

辞めた人たちの中で「転職の割合」を算出すると、それぞれ

  • 小学校 13.9%

  • 中学校 15.1%

  • 高校  11.5%

このようになり、教師を辞める人の「7人に1人ほど」が、転職によるものだとわかります。

また実際の教員数文部科学統計要覧(令和3年版)を参照)で転職率を計算すれば

  • 小学校 0.44%(総教員数:471,011人)

  • 中学校 0.44%(総教員数:291,445人)

  • 高校  0.21%(総教員数:301,858人)

このようになり、教師からの転職率は0.5%を切ると考えられる状況です。

古い言い方ですが、「3年以内の離職率は7・5・3」と言われているところを考えても、教師の離職率(転職率)は異常なほど低いことがわかります。
(ちなみに、中卒:7割、高卒:5割、大卒:3割)

私は高校教師だったので、割合で言うと0.21%ですか。
改めて見ると、(出現率だけで言ったら)相当なレアカードですね。

「これはレアリティが高いから、相当プレミア必至のSSRカードとしてゲームを進められるな。」

という(甘い)考えは通じないのが、教師からの転職。

教師からの転職は、存在自体はレアリティが高いとはいえ、転職市場価値としては決して高くありません。
(もちろん能力や年齢によりますけど。)

過去に「なぜ教師の転職は難しいのか?」といった趣旨でいくつか記事書いているので、興味があればご覧いただけますと幸いです。

教師から転職する人は、1,000人のうち3〜4人。

教師の転職率は0.5%以下。すなわち教師1,000人のうち3~4人ほどしかいません。

1つの学校あたり職員数は50人〜100人であることを考えれば、教師から転職する人って、3〜4校に1人いるか・いないかの確率です。

そりゃぁ、そんな珍しい生き物が目の前にいれば

「なんで辞めるの?」
「辞めて何するの?」

と聞きたくなるのかもしれませんね。(しかも私なんか20代とかでもなく、まもなく40歳になろうとしていた時ですからね。)

当時の教頭なんか「まだ、子ども小さいよな?」と尋ねてくるほどでした。

心配ともおせっかいとも、または何かしらのハラスメントとも取れるようなニュアンスです。

いずれにせよ、そんなレアな存在だったのだと思います。

意外だが、ネガティブな理由で退職する教師は少ない

頭を抱えて悩む女性

先ほどのデータをもう一度見てください。

小学校(全体の離職者数:14,973人)
定年退職:7,957人(53.1%)
病気のため:757人(5.1%)
転職:2,083人(13.9%)
家庭の事情:1,882人(12.6%)

中学校(全体の離職者数:8,448人)
定年退職:4,823人(57.1%)
病気のため:411人(4.9%)
転職:1,277人(15.1%)
家庭の事情:725人(8.6%)

高校(全体の離職者数:5,580人)
定年退職:3,569人(64.0%)
病気のため:189人(3.4%)
転職:640人(11.5%)
家庭の事情:306人(5.5%)

【R4学校教員統計】中間報告公表についてを基に算出
※カッコ(%)は全体の離職者数に対する割合

このデータのうち、病気(精神疾患などの方も含む)を理由に辞めた人は、学校種問わず、離職者全体の3〜5%ほどです。

家庭の事情といった、割と不可抗力的な事情によって退職した人の方が、人数としては多いです。

この割合は過去の年(経年変化)で見ても、毎回同じで、一定の割合でした。

とはいえ転職者の中には

  • 「本当は健康上の理由で辞めようとしていたが、再就職先が先に見つけられたから転職した。」

  • 「しんどいから辞めようと思っていたけど、家族のこともあるから、家族のことを理由に辞めることにした。」

という人もそれぞれの項目で含まれているはずですから、「病気で辞めた」「しんどいから辞めた」という正確な人数を把握するのは難しそうです。

それでも事実として、病気や精神的にしんどいことが主たる理由として実際に教師を辞めた人の割合は、教師を辞める人の20人に1人ほどです。

モンスターペアレンツや学級崩壊、多忙な業務で忙殺されて心が壊れていく先生は確かにいます。

年間5,000人から6,000人くらいの教師が、病気を理由に休職すると言われているので、その層も含めて「教師の病気問題」は、深刻かつ重大な問題です。

ただご存知の通り、教師は福利厚生が手厚く(ましてや公立なら公務員なのでなおさら)、病気などを患った場合は辞めるよりも休職したり配置換えを希望する人の方が圧倒的に多いです。

教師には良くも悪くも我慢強い気質が多いかなと思うので、環境を変えることはあっても、教師を辞めてまでと言うのは少ないのかもしれません。

小さく初めてみることが重要

ここまで「教師には先がなさそうだ」という考えをベースに、私の転職理由について話してきました。

一方で、先ほど言及した私の転職理由

  • 転職するのにタイミングが良かったから

  • 10年後や20年後を考えた時に、教師のままでいるのは楽しくなさそうと感じたから

このうち「タイミングが良かった」というのは、教師に限らない話なので共感をしてもらえる内容も多いかもしれません。
少し深掘りしますね。

私は「担任業務」はもちろんのこと、「部活の主顧問(監督)」「校務分掌(教務部とか進路指導部など)の副部長」「学年主任」という業務を経験できました。

  • 生徒や保護者の人生に担任として大きく関わること

  • スポーツを通して努力や勝利の喜びを感じてもらうこと

  • 組織としてポジションを与えられて、貢献すること

  • 後輩教師の育成や成長に関わること

こんな教師の仕事を、ありがたいことに40歳になるまでに経験することができました。

残すは校務分掌の部長、教育委員会への出向業務、管理職くらいでしたが、いずれも地域や校外に向けた仕事が多くなるため、そんな仕事をやってみたいとは思えなかった私は、40歳を目前に「教師の仕事とはなんぞや」を全て経験できたことになります。

そんな中、先ほど述べた10年先輩・20年先輩の働き方を自分に当てはめ、私の人生の優先順位を見直した結果、「教師だけをやっているのは損失が大きい」と強く感じます。

そこで私は、仕事のやり方を見つめ直し、教師の仕事を減らしていくことにしました。

平たくいえばスキルアップをするために、週末や勤務時間以外の時間を使って成長できるよう、教師の仕事以外のことをスタートさせたわけです。

私は初期費用もあまりかからず、パソコン一台で向き合える「サイト制作」や「執筆活動」からスタートしました。
そして今ではメインとなる映像制作のスキルなども、2〜3年かけて1から学び、徐々に着実に、身につけていきます。

細かな話は非常に複雑でセンシティブなのでここでは簡単に話しますが、自分の「好き」を主軸に行動していきました

毎朝4時や5時に起きて、作業を開始。好きなことをやっているのでそこまで苦労は感じません。

通勤方法を公共交通機関に変えて、パソコンやスマホを片手に作業や読書。
教師の仕事は、全て定時に終わらせられるように調整。
鈍感力を身につけながら、自分の信念や信条に従って、家族との時間を最優先にしながら生きてきました。

その結果、気がつけば教師の仕事に固執しなくても、とりあえず生きていけるだろうと算段がついたのです。

振り返ってみると、(何事もそうですが)小さく始めていることが良かったのだと思います。

小さな成功体験の積み重ねというのでしょうか。
児童や生徒が成長するのと、全く同じ原理です。
いきなり大成功は(ほとんど)ありえません。

今ある大手企業や世界的に有名な会社の創設者も、その多くは副業やスモールオフィスからスタートしたと言います。(そんな偉人と自分を比べるのは大変おこがましいですが、本質としては同じだと思います。)

何かをスタートさせるなら、小さく始めて、やがて大きな成功を得る。

もちろん(私は教師でしたので特に)「小さく始めようとしても、そもそもそんな時間はないよ」というのもよくわかります。

そんな人は、人生における優先順位を見直したり、鈍感力を身につけたりするのが良いかもしれません。

10年先輩、20年先輩の働き方を見るのも良いでしょう。転職しなくても「自分ならこうやって働くな」という新たな気づきがあるかもしれませんからね。

私は「このままじゃ、ヤバそうだ(斜陽産業のようだ)」そう思ったからこそ、数年かけて自分の好きを主軸・縦軸に、積極的に行動をしてきました。

これが成功だったかどうかは、私が死ぬ時にしかわかりません。

でも今のところ、妻と息子には好評の生き方(家族に多くの幸せを感じてもらえる生き方)のようです。

転職をしたことがある人はもちろん、今の自分から変わりたいとか、このままでいいのかなと感じている人はぜひ、小さな変化から始めてみてはいかがでしょうか。

教師からの転職はあまり該当者がいないと思うので、参考になる人は少ないのかもしれません。
そんな中でも、何かしら新しい発見があれば嬉しいです。


本記事を最後までお読みいただいて、ありがとうございます。
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