相生まつり

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プロフィール

相生まつり 舞台 と 執筆 2001年生まれ。三重県津市出身、2020年上京。 立教大学文学部に在学中。哲学と文芸を学んでいます。 現在は主に劇評・書評・戯曲等の執筆を行っています。なにかしらイベントをするときもあります。ときどき役者もします。 美術館と古本屋さんがすき。知らない街を散歩するのがすき。さめがすき。特技はうどん打ち。 東京芸術祭2021 Young Farmers Forum メンバー 東京芸術祭2022 アシスタントライター 主な出演歴 【第七劇場『

    • 喫茶するための指南(戯曲)

      人物 店員    来店者  待つことこそ最大の贈与であるはず。人が来店するまで、店員は時間を無限にあたえつづけるべきである。お客様は神様ではない。しかし、それと同等の存在の到来を信じ、店員は接客を続けている。  舞台上に立っているのは店員ひとりであり、来店者は観客である、とは思い込まないこと。このふたつの立場は常に反転し続けている。店員が舞台の下にひきずりおろされる瞬間を、逃さないこと。 ○ 店員は、外の見える位置で来店者を待つ。 店員は、人が来たら、それが来店者かど

      • 7/20〜21 深夜喫茶

        おなじ場所で夜をすごすための喫茶です。 ぜひ、本や作業道具などお持ちの上お越しください。 Wi-Fiございます。 時 7/20 21:00~7/21 5:00 場 うそのたばこ店 (浅草橋駅から徒歩5分)https://goo.gl/maps/UkW3UoNfUB6FAEX28 【menu】 ○よるまでチケット 1,000円(ドリンク1杯付き) 終電でかえるひと向けのプラン ○よどおしチケット 1,500円(ドリンク2杯付き) 始発でかえるひと向けのプラン ドリン

        • 宝宝『おい!サイコーに愛なんだが涙』をみる

           物語への所在なさ。そして、自分のことを「物語」ひいては「作品」という枠におしこめて語ることの不可能さについて考えていた。  作品は、ムサビ(ムササビ美術学校)の卒業制作である、という設定で進められた。主人公の唯野の部屋が再現されたという舞台の中で、彼の中学時代から現在までの人生が、一人芝居によって回想される。  作中では、唯野が「ハチミツとクローバー」が好きであると繰り返し語られる。また、唯野の高校時代の友人たちの恋愛模様は、ハチクロの単行本を人に見立てて演じられる。そ

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          立ち上がるための戯曲/三谷幸喜『オケピ!』(2001)

           ひきこもりながら戯曲を読もうと手にとったひとつめの作品は、まったくもってひきこもるための本ではなかった。  戯曲という文学(?)は、とても不安定なものだとおもう。そもそも、台本となにが違うのかわからない。完成とされるのはいつなのかもわからない。読み上げられてはじめて戯曲なのか?しかし、稽古中、上演のためにすこしでも書き換えられたときにはもう、すでにそれは劇作家の手を離れているだろう。  わたしは、再演を望まれるものが戯曲なのではないかと思っている。たとえ舞台として上演さ

          立ち上がるための戯曲/三谷幸喜『オケピ!』(2001)

          R-1ぐらんぷりをみる布団のなかで

           休学している。自分をまもるためにやすんでいたら、めぐるましく周囲が変わりはじめた。友人たちはみな相当に優秀であり、そんななか生きて、それが普通になってしまって、気がついたらぐらぐらしていた。  働く、には向かないとか何度言われたかわからない。根を詰めて何かやるとか、人と協力するとかできた試しがない。そういうくらい予感を抱いて4年を過ごし、いざ目の前にせまると、「それ」が持つ効果やざらつき、がありこのままでは生きていけないとわかるようになる。  そういう夜にはR-1ぐらんぷ

          R-1ぐらんぷりをみる布団のなかで

          それをぬくな

           血液検査がこわい。針もこわいがそれよりも、からだから液体をぬかれる、ということがこわい。想像するだけでたえられないから、ここ10年ほど言い訳を重ね避けて避けてきた。しかし、いよいよ突きつけられる機会があり、大暴れしながら病院へ向かった。こればっかりは、ほめてほしい。  ながれるもののなかから何か抽出されて、それが自分だと呼ばれると気がくるいそうになる。わたしはどこにもいなくて、ただよっているだけなのに、むりやり、「あるぞ!」と叫ばれているようで。  じぶんから身体が「ある

          それをぬくな

          3/24,25 深夜喫茶について

          おなじ場所でひとりの夜をすごすための喫茶です。 ぜひ、本や作業道具などお持ちの上お越しください。 Wi-Fi、すこし電源もございます。 時 3/24 20:00〜3/25 06:00 場 〒130-0002 東京都墨田区業平5丁目10-2 【menu】 ○コーヒー ¥500- ○あつやき たまご さんど ¥500-                                                etc. お時間によって、提供するコーヒーの豆が異なります

          3/24,25 深夜喫茶について

          かいたものたち(東京芸術祭ファーム)

          東京芸術祭ファーム東京芸術祭ファーム2022に、アシスタントライターとして参加していました。 いくつか記事を書いたのでまとめました。よろしければご一読ください。 ・東京芸術祭ファーム特集(ステージナタリー)より 長島確氏インタビュー 東京芸術祭ファームが何のために、どのように行われているのか詳しくまとめられた記事。長島さんに直接インタビューしました。 ・プログラム共通レクチャー レポート ミシェル・フーコーの「傾き」、クィア・スタディーズを基礎としたコラボレーションのため

          かいたものたち(東京芸術祭ファーム)

          とける/とかす

           珈琲を仕事として淹れるようになって、数ヶ月が経った。いまではひとりで店に立つことも多い。  並べられた数種類の豆。味わいのいくつかを、説明してはひとつ、選んでもらう。いくら言葉で表しても、そのとき共有できる部分はすくない。ある程度の指標や記号は、同じ世界にいるひとにはよく伝わるものだろう。しかし、口もとも鼻の形も知らないはじめて会った目の前のひとに、のぞむものを渡せるだろうか。  少しの温度の差、抽出の方法で簡単に味わいは変化してしまうようだった。カウンターを隔てたこちら

          とける/とかす

          『no plan in duty』─ ここにいて、たたずむ

           「no plan in duty」は、2015年に初演された「非劇」を原作とした展示パフォーマンスである。2022年5月12日から23日まで開催された。作は齋藤恵汰、補綴は岸井大輔、構成・演出は篠田千明。3人のパフォーマー(荒木知佳、矢野昌幸、稲継美保)と3人の展示アーティスト(いしいこうた、うしお鶏、大和田俊)による。会場は補綴・岸井が主催するPARAであり、本公演は拠点クロージング前の最終公演であった。  PARAは、一軒の古い民家である。砂利が敷かれた庭があり、そこ

          『no plan in duty』─ ここにいて、たたずむ

          久坂葉子『愛撫』とパフォーマンスの皮肉

           久坂葉子は小説、詩、戯曲など数多くの作品を残した作家である。1931年神戸市生まれ。19歳の若さで芥川賞候補。そして21歳の大晦日、特急電車に飛び込み自らの命を絶った。  彼女が自殺する直前に書き上げた作品『幾度目かの最期』では、小説としてではなく、久坂の心情がありのままに描かれている。幾人かの男性の間で揺らぎつつ、相手の感情を取りこぼすまいと思案する姿。自分の愛をどこに所在させるか悩み、自らを「みにくい女」だともこぼしてしまう。  恋によって死を選ぶこと。  たったそ

          久坂葉子『愛撫』とパフォーマンスの皮肉

          20歳の国『ホテル』より「マジック」おぼえがき

           ひだりくすりゆびへの羨望、について考えている。結婚がどう、とかじゃなく、彼らはみんな確かなものを抱いているようにみえて。名前がさほど意味をなさないことなんか分かってはいるのに、すがりついてしまう。  ホテルの一室を模した舞台。ベッド上にバスローブ姿の男女。初対面らしい。関係性を象徴するように、ふたりのくすりゆびには指輪があった。  情事のあとのよう。猥談が繰り広げられ、次第にそれぞれの過去、学生時代のエピソードへと移る。互いのことはほとんど知らないまま、それでも感情のど

          20歳の国『ホテル』より「マジック」おぼえがき

          作品としての「作者」への愛【のあんじーまつり『恥』上演に際して】

           「恥」は、1942年1月婦人画報に発表された短編小説である。全編を通じ書簡の形式をとり、その中で書き手である「和子」はその友人「菊子」に向けて大恥をかいた顛末を語る。精神的に安定し明るく透明感のある作品群が目立つ、太宰中期の作品である。 太宰治『恥』青空文庫より    和子は菊子に対し、小説家である戸田とのエピソードを語る。彼女は作者と作品を混同し、新作小説の主人公のモデルは自分であると思い込む。戸田へ手紙を出し、自宅へと訪問した挙句、最終的には自分の勘違いをつきつけられ

          作品としての「作者」への愛【のあんじーまつり『恥』上演に際して】

          つかる/ふれる

           少年に会いたいときがある。家から数秒歩けばたどり着く。日が落ちるぐらいになると、その銭湯に暖簾がかかる。マフラーをぐるぐる巻いて、財布と着替えを持って、サンダルを鳴らして行く。  いつも、三十代ぐらいの夫婦のどちらかが出迎えてくれる。家族経営のよう。近所の人、常連との会話も聞こえる。  湯船からあがり服を着て、入り口付近に戻った。ソファに座ってひとり、瓶の牛乳に口をつける。以前、そうしていたときに出会ったのが、小学校に入るか入らないかぐらいの、少年だった。この銭湯の一人息子

          つかる/ふれる