20歳の国『ホテル』より「マジック」おぼえがき
ひだりくすりゆびへの羨望、について考えている。結婚がどう、とかじゃなく、彼らはみんな確かなものを抱いているようにみえて。名前がさほど意味をなさないことなんか分かってはいるのに、すがりついてしまう。
ホテルの一室を模した舞台。ベッド上にバスローブ姿の男女。初対面らしい。関係性を象徴するように、ふたりのくすりゆびには指輪があった。
情事のあとのよう。猥談が繰り広げられ、次第にそれぞれの過去、学生時代のエピソードへと移る。互いのことはほとんど知らないまま、それでも感情のどこかを交換してしていく。そして同時にあたらしい物語をその上に重ねる。
いっそのこと名前もぜんぶ投げ出して関係性をいちからつくれたらと思う。彼らふたりは逃げからではなく、前にすすむためにそうしているはず。確かなものなんか何もない、そのことをあかるくたのしく奔放に、ほどほどに適当に(すこしまじめに)わらっていたい。ひだりてをわすれて。
そのさきにまだしらない喧騒や、言い争いがあったとしても。
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