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松永豊和の映画レビュー

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映画の感想を書いていきます。最近観た映画ばかりです。 『パペラキュウ』執筆中はビデオを鑑賞する余裕も有りませんでした。 なので2010年代の作品が多いです。 しかもアマゾンプライ… もっと読む
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2022年10月の記事一覧

モダンラブ

『モダンラブ シーズン1』各エピソードのレビュー 第1話「私の特別なドアマン」 監督 / 脚本 : ジョン・カーニー 出演 : クリスティン・ミリオティ / Laurentiu Possa 愛とは見守ること。 正しき道に導くこと。 それは時に五月蠅くもある。 第2話「恋のキューピッドは世話好き記者」 監督 / 脚本 : ジョン・カーニー / キャサリン・キーナー 出演 : デーヴ・パテール 初めての恋愛。それを手放したあと、 かけがえのない愛だったと気づくことはよくあ

天使のくれた時間

パラレルワールド もしもの世界 クリスマス・キャロル 愛を捨て仕事に生きウォール街で成功する孤独な人生、と、 成功を捨てて家計に苦しむけれど愛情いっぱいの生活。 どちらが本当の幸せなのか、 クリスマスイブ、コンビニに現れた(シニカルな黒人)天使に、 愛とお金を天秤にかけるような難題を無理やり問われる物語。 どちらが本当の幸せなのか、 この映画を見終わっても、自分にはわからなかった。 この映画を観る個人各々の現状生活や価値観で答えは分かれると思う。 コンビニに再び現れた天

マイ・インターン

太極拳に始まり太極拳に終わる「愛と仕事が人生のすべて」 ジュールズはやり手の女社長だが多忙すぎて部下への気遣いが出来ない。 それは家庭の夫と娘にも同様で、それが元で夫には陰で浮気されている。 それに対して、ジュールズの直属インターンとして雇われた老人ベンは、 気配りが出来て包容力がある上に機転が利くからすぐにみんなの人気者。 最初はベンのことを毛嫌いするジュールズだったが、 次第にベンの包容力によって心を解きほぐされていくというストーリー。 【以下ネタバレ有り】 ジュール

ミッション・ワイルド

なぜメアリー・ビー・カディは自ら命を絶ってしまったのか 小さな集落で独り暮らしをするメアリー(ヒラリー・スワンク)は 働き者で、強い結婚願望を持つ若き女性。 男友達を自宅に招いて告白するも、気の強さが災いしてかフラれてしまう。 そんなある日集落の教会の会合で、 遠い集落から嫁に来て精神病を発症させた三人の女性を、 元いた集落へ送り届ける、というミッションが持ち上がる。 集落のみんなは嫌がるが、 メアリーは持ち前の正義感からそのミッションを たった独りでやり遂げると申し出る

プラットフォーム

3種類の人間がいる 上にいる者 下にいる者 転落する者 中年ゴレン、目覚めるとそこはコンクリートの殺風景な部屋。 その部屋は地下(?)48階層。窓は無い。床の真ん中に四角い大きな穴。 床の穴の下には同じような部屋の階層がずっと下まで続いている。 穴を挟んだ向かいのベッドには老人トリマガシ。そして老人はこう言う、 「何を食うのか、それが問題だ」 「何を食うか?」 「“明らかだ”、上の者の残り」 しばらくすると天井の穴から巨大なテーブルが下降してくる。 そこには食い散らかされた

きっと、うまくいく

インドの下品な青春ドタバタコメディーかと思っていたら、とんでもない傑作だった 物語は2部構成。 第1部はインドで最も優秀な工科大学の寮生活でのあれこれ。 最初どのキャラクターも嫌な感じで登場する。しかも全員顔が暑苦しい。 オッサン俳優が大学生を演じる悪ノリ下品な青春ドタバタコメディー。 こんな調子で2時間51分も視聴するのはちょっとしんどいかな、 ちょいちょい挟まれるインド映画特有の珍妙なミュージカルもしんどい。。 もしスピルバーグやブラッド・ピットが絶賛したという触れ込み

グリーンブック

孤高で孤独な王様が暖かい居場所を見つける旅 ナイトクラブで用心棒をしていたトニーは店の改装工事のため職を失い、 ドンという黒人天才ピアニストの運転手兼ボディーガードとしての 面接を受ける。 トニーはイタリア系で、内心黒人に差別意識を持っているのだが、 それを隠して職に就く。 ドンは、アメリカ最南部を回るコンサートツアーに出るという。 そこは酷い黒人差別が横行する地域でもある。 そうして黒人エリートのドンと粗暴なトニーの長い旅が始まるわけだが、 性格の違いもあり二人の相性は

イエス・キリストの生涯

イエスの挑発とユダの幻滅 5時間半ほどのドキュメンタリードラマ。 全8章だれることなく視聴できた。 各章キャラ別に深く掘り下げて考察・解説されていて、 個人的には、ユダについての第5章が印象深い。 新約聖書最大の謎の1つとされる「ユダの裏切り」も、 そこに至るにはそれ相応の理由があったとする考察。 【以下ネタバレ有リマス】 十二使徒の一人であるユダはイエス一行の会計係を務めていた。 信用第一の会計を任されるということは、イエスから特に 人柄を認められ大きな信頼を得ていた弟子

バーフバリ 伝説誕生 / 王の凱旋

バーフバリ 伝説誕生 (前編) 超スペクタクルエンタテインメント(本格的印度味) 壮大な物語だった。 息子バーフバリの滝登りシーン、 どうやって登り切るのかと思っていたら、 即席の弓を使うなど知恵を働かせて達成する点が良かった。 雪山での逃走シーンも、あり得ないような怪力で 巨大な岩を落として雪崩を起こすなど知恵で乗り切った。 体力や根性だけでは話が嘘臭くなってしまうが、 そういった点がこの壮大な嘘物語に説得力を与えている。 父バーフバリの合戦シーンも同様で、 油を含ませ

異端の鳥

不思議な魅力をもつ残酷物語 【ネタバレ有り】 第二次世界大戦時の東欧の村。 冒頭いきなり主人公の少年は追い回され殴られ、 大事に飼っているペットは生きたまま焼き殺される。 上品な服を着てピアノも弾く少年が、疎開先の村で、 ユダヤ人というだけで酷い迫害や虐待を受ける。 呪術師の老婆は少年を見てこう言う、 「黒い悪魔の目をしてる。魔王の手下だよ。 こういう連中は死を呼ぶ。そうさ、この子は吸血鬼だ」。 少年はどこに逃げても迫害を受け、流浪する。 また、少年に関わった者も酷い目にあ

予言者

ギャング映画のフリをしたイスラム教の物語 【ネタバレ有り】 カンヌでグランプリを獲るなど数々の映画賞を受賞した本作だが、 我々日本人には、かなり分かりにくい映画と言える。 フランス映画特有の説明不足ぎみな描写に加え、 舞台が刑務所なのだが、日本の刑務所と環境や規則等の違いが多々ある。 フランス語・アラビア語・コルシカ語などが入り乱れた雑多な言語社会、 アフリカ系やエジプト系もいる。そしてそれら人種差別に関する機微。 さらに物語の根幹にある、宗教文化、これが一番分かりにくい。

ゴールデン・リバー

 この映画の原題は 『シスターズ兄弟(The Sisters Brothers)』である。 情け知らずの凄腕の殺し屋兄弟の物語。 欲望があり、暴力があり、血の愛がある、兄弟愛の物語である。 何も情報を得ずに観ていると 最初は、粗暴なチャーリー(ホアキン・フェニックス)が兄で、 心優しいイーライ(ジョン・C・ライリー)が弟かと思って観ていた。 作中のセリフで、イーライが兄、チャーリーが弟と分かるのだが、 前半は何か違和感を感じていた。 で、見終わったあと原作小説のデータで

ピザ!

カースト最下層民の悲喜劇【コメディ要素満載】 スラム街の近くにピザレストランが開店する。 (ピザ屋の開店シーンまでは少し退屈かな?  そこから俄然おもしろくなるので我慢我慢。  つーか前半退屈な名作ってあるよねディア・ハンターとか。  あれ、キャラ相関とか境遇の説明にモタついてるわけで、  でもそのあとの怒濤の展開のためには仕方ないのかな?) で、スラムに住む幼い兄弟は初めて見るピザなる食べ物に興奮。そして ひと月分の生活費と同等の高価なピザを食べるための金策に奮闘する。