異端の鳥
不思議な魅力をもつ残酷物語
【ネタバレ有り】
第二次世界大戦時の東欧の村。
冒頭いきなり主人公の少年は追い回され殴られ、
大事に飼っているペットは生きたまま焼き殺される。
上品な服を着てピアノも弾く少年が、疎開先の村で、
ユダヤ人というだけで酷い迫害や虐待を受ける。
呪術師の老婆は少年を見てこう言う、
「黒い悪魔の目をしてる。魔王の手下だよ。
こういう連中は死を呼ぶ。そうさ、この子は吸血鬼だ」。
少年はどこに逃げても迫害を受け、流浪する。
また、少年に関わった者も酷い目にあったりする。
戦争や貧困によって狂ってしまった人々との出会いが、
少年の倫理観を次第に麻痺させ奪っていく。
ペットの死に涙する無垢だった少年が、
やがては山羊を無残に殺すようになり、
人まで殺すようになってしまうのだが、
仕方ないと思わせられる。
ナレーションやモノローグなどの説明は一切排され、
感情や状況をあらわす音楽さえも排除されているため、
意味が分かりにくい点も多々ある作品である。が、
映像や表現に高い芸術性と知性が感じられ、且つ、
全ての登場人物が奇異な魅力を発しているため、
この残酷な物語から目を離すことができなかった。
監督/脚本:ヴァーツラフ・マルホウル
原作 : イェジー・コシンスキ
出演 : ペトル・コトラール
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