ホットクックとワーケーション
ワーケーションの今後
今年に入ってオフィスへの回帰が見られるなかでワーケーションは今後どうなるのか?ということをよく聞かれます。
確かに2020年以降、日本のさまざまな地域でワーケーションが注目され、盛り上がりました。2023年以降も(オフィス回帰と入れ替わるように)インバウンドの回復、またデジタル田園都市国家構想やテレワーク・ワーケーション官民推進協議会などの動きも見られます。
しかし、ワーケーションは無くならないけどそれがあまり可視化されなくなることが一番の普及かなと思います。携帯電話の登場と普及が「固定」電話を生み出したように、オフィス出社や対面会議という認識が広がることが翻ってワーケーション(やリモートワーク)の普及を示すことになります。
では地域、ワーカー、企業はこれからワーケーションをどのように捉えていくべきなのか?
ワーケーションのこれまでの盛り上がりは例えば料理人が鍋を振るって料理をするというものだと思います。素晴らしいパフォーマンスと料理で本人も周りも熱がぐっと上がります。ただそれを毎日続けられるのか、また他の人もやりだしたときにどう差別化するのか、といった問題に悩まされることもあるでしょう。
それに対してこれからは「ホットクック」のようになることがポイントだと思います。
ホットクック?
ホットクックは2015年に登場したそうで、うちも遅ればせながら導入しました。誤解を恐れずに言えば、ホットクックによってなにか食卓に並ぶ料理がガラッと変わるとかはありません。しかしいろいろなことが示唆的だなと思うようになりました。
1つ目はテクノロジーとの協働です。ホットクックは材料を準備して、入れておけばコロッケやポテトサラダ、カレー、パスタなど自動で調理してくれます。材料を準備するのは人がやりますが、それを混ぜたり、火のタイミングを見たりなどこれまで人の手がかかっていたところを担ってくれます。
ワーケーションは観光文脈で捉えられることが多く、それは間違いではないのですが字義通り、ワーク(仕事)の部分も同様に大事です。地域では住民との交流や社会課題への取り組み、企業ではワーケーションによって生産性が飛躍的に向上することが期待され、効果検証も盛んです。が、一番のポイントはリモートワークできる環境とワークフロー、つまりワークスタイルのDXです。
例えば地域のホテルや施設などでワーケーション用のコワーキングスペースをつくってWi-Fi完備と謳っているところでもいざオンライン会議や打ち合わせを始めると回線が遅く途切れ途切れ、ということも少なくありません。また企業側も結局紙の書類やハンコ、サインが必要だったり、上司がオンラインを嫌って対面会議に、という例もよく聞きます。
ワーケーションはオフィスやオンラインの反対ではなく、むしろテクノロジーとの協働を進めていった先にあるワークスタイル、ライフスタイルということは忘れがちですが、重要なポイントです。それがなければ生産性への効果云々以前の問題になります。
もうひとつは重ねる経験です。ホットクックは時短家電ではないと思います。別にひとつひとつの料理が短時間でできるわけではありません。ホットクックにまかせている間に子どもとお風呂に入ろう、掃除しておこう、仕事に行っている間にできるようにセットしておこう、もう一品なにかチャレンジしてみようと並行・重畳してなにかできることに価値があるのかなと思います。前者は子育てや家事の重ね合わせとして、後者は料理の重ね合わせとして、です。ワーケーションも同様に、時間と空間を柔軟に使って仕事という経験をどのように重ねるかがポイントになるでしょう。
近年例えば熊本は半導体の工場が進出し、活況を見せています。ワーケーションでこのように建設ラッシュや人が殺到することはありませんし、目指すべきでもないと思います。
普通に働いて、地域の人とつながって、気が向いたら活動したりすること。一見地味?ですがこうしたスタイルこそが地域にとって関係人口創出、企業においても長期的な人材確保、組織デザインになっていくワーケーションだと思います。
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