松原凛

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松原凛

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最近の記事

ずっと成人式でいい

 市民会館で市長の長話と新成人の挨拶が終わり、やっと開放されたのが十一時すぎ。朝から慣れないスーツなんか着て俺はへとへとになっていた。一人気合いの入ったやつが白スーツで登場してたまげたが、ホストをやっていると聞いて納得。あいつ中学の頃から目立ちたがり屋だったからな。そんなことより女の子だ、全体的に地味な男どもに比べて女の子たちの振り袖姿はさすがというか、色鮮やかで華やかだった。化粧で誰が誰だかよくわからなくなっているが、よくよく見ると当時の面影がある子がちらほらいた。  あな

    • かいじゅうのダンス

         朔太は小学校の入学式にオオカミの着ぐるみを着て参加した。  白い全身にふさふさした長い尻尾、先の尖った三角耳(どう見ても猫耳にしか見えない)のついたフードには小さな金色の冠がちょこんと乗っている。『かいじゅうたちのいるところ』という絵本の男の子が着ているオオカミの着ぐるみらしく、エリカ先生いわく「サクくんにそっくり」らしい。  エリカ先生は日本人の女医で、アメリカでの朔太のかかりつけ医だ。黒髪に大きな目に細身のスタイル。何か見覚えがあると思ったら、思い出した。ク

      • 「スーパーガール」あらすじ

        ウサギが巨大化し、人が襲われる事件が街で頻発していた。日向はクラスメイトからいじめを受けている。抵抗を諦めいじめに耐える日向の前に、ピンク髪にピンクのライダースーツ姿の少女が現れた。少女はスーパーガールと名乗り、クラスメイトに飛び蹴りを食らわせた。その日から日向はいじめを受けなくなった。しかし標的が変わっただけでいじめはなくならず、何もできない自分に心苦しさを覚える。ある日、街に出かけた日向は、巨大化したウサギに襲われる。そのとき、日向の前にスーパーガールが現れた。再び助けら

        • 「キノコ姫の下僕」あらすじ

          暴飲毒キノコを食べて死ぬことを望む裕一は、一人で学校の裏山に向かった。そこには毒キノコが大量に生えていて、中でも猛毒とされるドクツルタケを食べる。猛毒に苦しむ裕一の目の前に、頭からキノコを生やした着物姿の少女が現れた。少女は戦国時代最後の姫、千姫と名乗り、裕一を下僕と呼んで家に居座るように。さらに千姫の妹である珠姫もやってきて、キノコ姫と僕の奇妙な共同生活(主従関係)が始まった。千姫は自分を殺した男の先祖を殺すために生まれ変わったというが、行動を起こす気配もなく、暴飲暴食にゲ

        ずっと成人式でいい

          「キノコ姫の下僕」本編 第2話

           そんなこんなでワケあってキノコ化してしまった戦国時代の姫姉妹と僕の同居生活、もとい主従関係がはじまった。  家を貸している僕のほうが下ということは気にしてはいけない。姫は生まれ持って姫だし下僕は生まれ持って下僕なのだ。ひとまずそういうことで納得する。 「おおっ、これはなんじゃ、新技か!?」 「お姉ちゃん、このひと燃えながら踊ってるよ! すごいねっ!」 「人間にこんなことができるとは驚きじゃな……よし下僕で試してみるか」 「やめてください」  キノコ姫姉妹は最近発売されたばか

          「キノコ姫の下僕」本編 第2話

          「キノコ姫の下僕」本編 第1話

           世の中には善良なキノコとそうではないキノコがある。  一般的にスーパーに売られているキノコは食べようと育てようと鑑賞しようとなんの問題もない。  一方で、山奥あるいはそこら辺のちょっと怪しげな茂みに入れば、あきらかにやばそうな毒々しい見た目のキノコがいくらでも生えていたりする。口にすれば痙攣や幻覚作用など薬物中毒にも似た症状を発するものや、一口食べただけで死に至るもの、触れるだけでも危うい代物まで様々だ。キノコと死は隣り合わせなのである。  僕が通う高校はごく一般的な普通科

          「キノコ姫の下僕」本編 第1話

          「スーパーガール」本編

           巨大化したウサギが街を襲う映像。凄まじい跳躍力と腕力で建物を潰し、人参でも食べるみたいに前足で軽々と人を掴んで口に放り込む。  地面に顔を押しつけられながら、私は朝テレビで見たニュースを思い出していた。  一年ほど前から、街で頻発している事件だ。ウサギが突然巨大化し、街に出てきて人々を襲う。小さな可愛らしい草食動物だったはずのウサギは姿を消し、赤い目をぎらつかせて獲物を狙う巨大な猛獣と化した。  そんな状況でも、学校での生活は前と何も変わらない。  私の頭を蹴りながらげらげ

          「スーパーガール」本編

          マスカレード・ミュージアム

           博物館の説明にはこう書いてある。 「人にはかつて、色がありました」  おおまかにわけて、白、黒、淡黄色の三色、錆びた銅のような褐色や、土色をした混血種もいた。前時代の人類、つまり有色人種とちがって、私たち無色人種の肌は混ざり気のない白、フレッシュ・チーズやユリの花びらのような透明感のある、真っさらな白色だ。かつて白人と呼ばれていた人種の肌は、厳密にいえば白色ではない。白に近いがほのかに赤みがかっていたり、黄色にくすんでいたりする。  人間の皮膚は生まれた瞬間から劣化が始まり

          マスカレード・ミュージアム