【８００字　ショートショート】#４９　既読スルー

　読んでいるとこちらが知っているのに、それをスルー。
パスではなくて、無視でもない。見てはいるんだ、見てはね。

見てはいるんだけど、反応に困るし、言葉にも困る。だから光ったスマホを放置して朝が来ると、いつの間にか忘れてる。

でも、送り主は憶えてる。だって、反応が欲しいんだから。

　反応が欲しくて誰かに何かを送って、それが返ってこない。

「見ていないのかな、忙しいのかな」という幻想は〝既読〟によって壊される。それから、思考が一歩進む。

「私、嫌われてるのかな」

　ネガティブでマイナス思考で、どんよりとした感覚。それを引きずるのが嫌になって、また別の人に文章を送る。

また、既読スルーされる。

それを繰り返していく。繰り返して送り続ける。そうするといつの日にかブロックされるかもしれない。

でもね、

私にとっては既読スルーよりもブロックの方がありがたいんだ。だってそうでしょう？

「そうすればやっと、関わり合わなくていいんだって思考が進むんだから」