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うつ・トラウマを乗り越えるために読んだ本4選

うつを乗り越えるにはどんな本を読んだらいいのでしょうか?ぼくは大学(院)生活の中でうつと不安障害で深刻に悩んだ人間のひとりです。今も治ったとは言えないかもしれません。

そんな中、自分の状態を知るために、そしてなんとか前を向くために、ぼくが読んできた本の中で紹介するにふさわしい本だけを選んで紹介します。

また、うつだと文字が多い本を読むのはしんどいこともあるでしょう。文字が比較的少なめで読みやすいものもあわせてご紹介しますので、ご自身の体調に合わせて選んでみてください。

新版 うつ病をなおす

ぼくが病んでからいちばん最初に読んだ本が「新版 うつ病をなおす」です。

この本は、まったくの素人がうつ病について体系的に知ることができる内容になっています。新書なので文章量は多いですが、文体も平易でとてもわかりやすく説明されていました。

序盤にうつ病かどうかをチェックできるページがあり、それをもとに読み進めることができます。そしてさまざまなうつの種類を実例を通しながら紹介しているので、さらに理解の助けになります。

著者の野村総一郎先生は有名な精神科医で、どの患者さんにも診察に1時間ほどをかけるそうです。通常の精神科の受診は10~30分程度であることを考えると非常に長時間だといえます。それだけ患者さんに寄り添った治療をしてきた方だということで、紹介されている実例にもリアリティがあります。

また、この本で紹介している主な治療法は「認知行動療法」です。うつ病では有名な治療法ですが、このことについて詳しく紹介されています。すぐに自分自身で実践できるようなこと(1日の時間ごとの気分の点数をつけていくなど)も載っているので参考になります。

タイトルが「新版」となっていますが、「旧版」から数年たって新たなうつの種類が認知されるようになったこともしっかり収録していて、しっかりした改定版になっていると分かります。

ぼくはこの本でうつ病の知識の大部分を得ました。どんなこともまずは知るところから。

会社・仕事・人間関係「もう、何もかもしんどい…」と疲れ果てたときに読む本

二冊目はこちら。

こちらは主に会社員向けに書かれたもので、ストレスとの向き合い方についてのアドバイスが豊富です。漫画がメインで文字も少なく、疲れているときでも読みやすいのではないでしょうか。

「うつ病」という言葉こそ登場しませんが、会社の様々なことが原因でからだが動かなくなってしまった場合の考え方などが参考になります。

特に参考になったのは、『「自分中心」になる』という考え方です。この「自分中心」というのは、いわゆる「自己中」とは違っていて、「自分の本当の気持を大事にする生き方」という意味です。

この本を読んで、ぼくは大学を休むこと・研究が進まないことへの罪悪感が軽減されました。うつで過度に自分を追い込んでしまう人にはオススメできる本です。

赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア: 自分を愛する力を取り戻す〔心理教育〕の本

三冊目のこの本は、不安障害の中でも、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のケアに主眼をおいた本です。

PTSDは通称「トラウマ」ともいいます。有名な童話「赤ずきん」を例にとってトラウマとは何なのか、どのようにケアしていく必要があるのかなどをわかりやすく解説しています。かわいいイラストも多く、読者に寄り添うような文体が印象的でした。文章も過度に多くないです。

ぼくは大学でのあるできごとがショックでふさぎ込んでしまった経験があります。それからしばらくたってPTSDを疑うようになりました。

そんなとき、大学のカウンセリング施設に置いてあったのをきっかけに、自分でも買って読んだ本です。この本を読んで、自分の状態やこれからどうすべきなのかを知ることができました。

トラウマになる過去がある場合、それが今の自分にどのような影響を及ぼしているかを把握することがまず重要ということで、それを意識してカウンセリングを受けました。

そうすると、それまでフワフワと宙に浮いていたじぶんの感情の輪郭がはっきりしてくるような感覚に。寛解への一歩を踏み出せたように思います。

嫌われる勇気

最後に紹介する「嫌われる勇気」は、いわずとしれたベストセラー。

本書は哲人と青年の対話形式で、哲人が青年に対してアドラー心理学を説いていくという内容です。青年が読者にかわって哲人に質問をしていきながら進むのですが、その質問がまさに読者が聞きたくなる部分ばかりで秀逸です。

さて、この本(アドラー心理学)とうつ病とどんな関係が?と思われるかもしれませんが、ぼくにとってこの本は衝撃で、今までの自分を根底からくつがえされるような感覚に襲われるほど。

まず、冒頭で「トラウマは存在しない」と言われるのです。これだけトラウマで苦しんできたのにそんなことを言われると「今までの苦しみは何だったんだ!」と言いたくなるところですが(本書の青年のように)、読み進めていくとアドラーの考え方に納得してしまうのです。

詳しく書くのはやめますが、トラウマの否定は「原因論」と「目的論」の考え方に帰着します。(アドラー心理学では目的論で物事を考える)

ほかにも、

●すべての悩みは「対人関係の悩み」である
●劣等感に関する議論
●自分の課題と他人の課題を分離する
●承認欲求を否定する
●共同体感覚を目指す
●「いま、ここ」を大事にする

など、自分にとっては新しい考え方ばかりでした。なんというか、頭を殴られたような衝撃が駆け巡ったのです。

ちなみにホリエモンこと堀江貴文さんは「自分でアドラー心理学の考え方にたどり着いた」とおっしゃっていて、「すげぇ…」と驚きました。

この本を読んだ時点でぼくは薬を飲みながら治療をしていて、比較的状態が安定してきていたので冷静にいろいろ考えることができました。自分の中で「なるほどこれは納得できる」という考え方ばかりで、『自分』というものに深く向きあうきっかけになりました。

うつの治療法である「認知行動療法」はうつ病患者特有の歪んだ認知を直していくというアプローチをとります。ぼくはこの本を通して自己に深く向き合うことで、その「認知」をいい方向に向かわせることができ、ひいては大学をやめるという「勇気」の行動ができたのだと思っています。

この本を読むと頭がギュルンギュルン回転すると思うので疲れるかもしれません。ただ、この本がどのようにして「嫌われる勇気」というタイトルに帰着するのか、確かめてみる価値があるとぼくは思います。

最後に

以上、本当に効果があると思った4冊を紹介しました。

あなたがもしうつ病の当事者なら、この記事を読んで情報を収集しようとする行為自体が誇張なしにとてもすごいことです。ぼくが少しだけ前に進めたのは、こういった本で自分の状態を把握していったことと、カウンセリングを継続して受けたこと、そして精神科で治療をしていることが大きな理由です。

あなたも焦らなくて大丈夫です。

ですが変わるのは、自分です。

人は変われます。

「人間が変わるのにタイムリミットはあるか?」という質問に対し、アドラーはこう答えたそうです。


『たしかにタイムリミットはある。寿命を迎える、その前日までだ』

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