減量で気分はネガティブになるか?柔術とMMAで比較した
対戦型の格闘技はたいてい体重別で競技がなされます。そのために減量を行うことも多い。減量で不可欠なのでは食事制限です。食べないと疲れやすかったり、イライラしたりします。今回はブラジリアン柔術と総合格闘技(MMA)の減量が与える効果を比較してみます。
ブラジリアン柔術とMMAの減量
Buenoたちは、ブラジリアン柔術家、31人を対象に普段の気分と試合前の気分について調べました(Bueno et al., 2023)。彼らは減量が試合に与える効果に興味を持っていたため、減量をする選手としない選手を比較しました。選手たちは全員が男性で青帯以上、最低でも2年以上の競技経験がありました。
一方、Brandtたちは、12名のMMA選手を対象としました。全員プロフェッショナルでブラジル国内の大会に出場経験がある男性でした。これまた減量をする選手としない選手を比較しました。
減量による体重減少が、ブラジリアン柔術とMMAでは劇的な差がありました。ブラジリアン柔術では、減量をした選手では、平均で82.5 kgから79.1kgと3.4kg、体重の4%の減量でした。一方、MMAで減量した選手は平均で77.8kgから66.2と実に体重の15%もの減量でした。下のグラフからも一目瞭然ですね。
ちなみに減量しなかった選手は、下の表の通り、通常と計量時でほとんど変化していません。これは柔術でもMMAでも同じでした。
気分に与える悪影響
通常状態と試合前で、気分を比較しました。どちらもBRUMSという尺度で、緊張、落ち込み、怒り、活力、疲労、困惑の6種類の気分を測定しました。ブラジリアン柔術では、減量した選手としなかった選手で大きな違いはありませんでした(Bueno et al., 2023)。減量により気分への影響はほとんどなかったことになります。一方、MMAで結果は異なりました。減量を行わなかった選手で、通常時と計量時で統計的に意味のある変化はありませんでした。しかしながら、減量をしたMMA選手では全体として気分がネガティブになっており、また、困惑が強くなっていました。
急激かつ大幅な減量はメンタルに悪い
急激な体重減少は当たり前ですが、体に負担をかけます。それだけでなく、気分にも悪いことをMMA選手の結果は示しています。ブラジリアン柔術は試合直前計量、MMAは試合前日計量という計量タイミングの違いもあり、MMAではより厳しい減量になりがちです。体重の15%にも及ぶような急激な減量はやはり避けるべきということでしょう。
一方で、4%程度の減量なら目にみえる悪影響が今回紹介したデータからはみられませんでした。どのくらい減量するか考える上でも目安になると思います。
引用文献
・Bueno, J. C. A., Silva, R. B., Diotaiuti, P., Andreato, L. V., & Andrade, A. (2023). Effect of rapid weight loss on mood states and burnout of Brazilian jiu-jitsu athletes during a competitive process. Frontiers in Psychology, 14.
・Brandt, R., Bevilacqua, G. G., Coimbra, D. R., Pombo, L. C., Miarka, B., & Lane, A. M. (2018). Body Weight and Mood State Modifications in Mixed Martial Arts: An Exploratory Pilot. Journal of strength and conditioning research, 32(9), 2548–2554.
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