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セルフトーク:ひとりごとでパフォーマンスが高まる

メンタルトレーニングでベンチプレスやスクワットのパフォーマンスが上がる。それを示した研究を前回紹介しました。

上で紹介した研究では、メンタルトレーニングとして(1)セルフトークと(2)イメージトレーニングを行いました。セルフトークとは簡単にいうとひとりごとです。ひとりごとでパフォーマンスは上昇するのです。

「私は高く跳べる」と叫ぶと高く飛べる

Todたちはセルフトークが垂直跳びに与える効果を調べました(Tod et al., 2009)。この研究で用いたセルフトークには2種類あり「私は高く飛べる!」というやる気や気分に関わるものと「(膝を)曲げて一気に(跳ぶ)」といった技術に関するセルフトークがありました(注1)。参加者はこれらを繰り返し声に出すことを跳ぶ前に求めれらました。そして、口に出して計算を行うコントロール条件と垂直跳びの成績を比較しました。

実験の結果、どちらのセルフトークもパフォーマンスを向上させました。コントロール条件と比較して、垂直跳びで平均1cm以上成績が伸びていました。1 cmと聞くと小さいですが、ひとりごとの効果と考えると結構なものです(注2)。

どんなセルフトークが良いのか?

セルフトークは、短い肯定表現で1人称の文にするとよいことがわかっています。長いと口にしづらい。ポイントもわかりづらい。技術に関して言えば、実際に動くタイミングともズレてしまいます。肯定文が良いのは、動作や気分や具体的になるからです。否定文では何をしていいのかわかりません。

例えば、上で紹介したTodの研究は"I can jump high(私は高く跳べる)"や"Bend and drive(膝を曲げて一気に跳ぶ)"など短いフレーズを用いました。技術セルフトークは、短く言いやすく、パフォーマンスを邪魔しない。また、肯定の表現で何をすべきかが明確です。とても良く考えられたものになっています。これに対して「力まない!」のような否定表現では良くありません。何をして良いか不明確で、かえってパフォーマンスが下がってしまいます。

どのようなセルフトークが良いかは、その人の個性や競技の特性によっても異なります。アメフトの選手が試合前に「俺は強い!」と叫んでいたりする動画を見たことがあるかもしれません。試合中だと「集中!(focus!)」と口に出していたります。けっこういろいろな種類があるのです。

短い肯定表現の一人称という3条件を意識しながら、適切なものを選んでいけると良いと思います。専門家と相談できるならそれがベストですね。

引用文献


・Tod, D. A., Thatcher, R., McGuigan, M., & Thatcher, J. (2009). Effects of instructional and motivational self-talk on the vertical jump. The Journal of Strength & Conditioning Research, 23(1), 196-202.

注1:やる気セルフトーク、技術セルフトークは、それぞれ動機づけセルフトーク(motivational self-talk)教示セルフトーク(instructional self-talk)という用語で通常は呼ばれます。今回はわかりやすさを考えて意訳しました。

注2:効果量はやる気セルフトークと技術セルフトークで、それぞれd = .7と.6となかなかの大きさでした。

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