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人が育つ環境を作る #1:慶應義塾高等学校硬式野球部


対象読者

組織マネジメントで奮闘している方々、これから組織をマネジメントをしたいと考えている方、自分が属する組織を少しでも良いものにして前向きに頑張りたい方々

テーマ

自分が率いている組織を良くするために気づきのあった書籍の書評をします。特に、組織に属する人々が前向きに楽しみながら組織目標の達成に本気を出して本人たちの夢に近づく環境作りに関心があります。その前提として、一人一人の持っているポテンシャルを引き出す工夫が組織マネジメントとして最もクリエイティブな仕事だと考えます。

今回の書評は慶應義塾高校の硬式野球部監督著作

エンジョイ・ベースボール

上田氏の「エンジョイ・ベースボール」とは何でしょうか?

「スポーツである野球は、本来、明るいもの、楽しいもの。野球が好きで上手くなりたいなら、一生懸命練習しよう」といった考え方の野球です。わかりやすく言えば、それは軍隊式の古い「野球道」の対極にあるものです。

本書から抜粋

この野球へのアプローチは、さらに2つのパートに分かれます。

パート1: 選手は指導者に強制され嫌々練習するのでなく、野球が楽しいから自主的に練習する。

野球をやっていると楽しくてしょうがない。もっと上手くなりたい。だから練習する。

本書から抜粋

パート2:  指導者が選手に勝利に辿り着く近道を強制しない。

生徒をある程度大人扱いし、自分で考えさせて、答えを見つけられるようにする。どういう練習をすれば上手くなれるのか、どうすればチームは強くなれるのかを生徒にも考えさせる。試合中は場面場面ですべきことを選手が考えて判断できるようになる。また、どのような時にどのような挨拶をするべきなのか、ということも生徒たちに考えさせる。

本書から抜粋

選手の主体性を信じられなければ、できない指導方針です。大人でさえ自分の弱さに負けることが良くあります。大人の方が逆に負けやすいのかもしれません。指導者がいないと規律が成り立たない組織は確かに情けなくはありますが、個人一人一人に高い意識を持たせることは簡単ではありません。自分の弱さを打ち消すだけの楽しさを喚起できるかどうかが、エンジョイ・ベースボールのパラダイムでの指導者の役割なのかもしれません。

Thinking Baseball

森林氏は、小学校の教員もされています。その観点からこのような問題提起をしています。

大人が子供に対して何でも先回りしていくことが本当に良いと言えるのでしょうか。

本書から抜粋

彼のスタンスは明確です。

子供は子供でその年齢なりに自分で考えているのです。例えば、5歳の子供が生活の全てを自分で考えるのは難しいとしても、その年齢なりに自分で考える余地は作ってあげなければいけません。本来はそうであるべきにもかかわらず、いまは大人が敷いたレールに子どもを乗せるだけという、全く逆の方向に進んでいってしまっています。これでは、そのレールがなくなった時に、子どもはどの道に進んでいくべきか迷うだけです。

本書から抜粋

選手の考える力を養成するのが彼の「Thinking Baseball」です。

森林氏は上田氏の教え子ですが、上田氏のエンジョイ・ベースボールのパート2の方の考えさせる方をさらに強化することで、昨年の夏の甲子園で全国制覇を引き寄せたように見えました。

学び

会社でも、答えそのものを教えるのではなく、答えを導く方法を教えることはとても大変です。ともすれば、経営者やマネジメントは自身の成功体験を部下に強制します。そして、成功体験と同じことをしない部下を思考停止に追い込もうとしてしまいがちです。

変化が激しい時代では、過去の成功体験を冷静に疑うことが非常に重要です。過去の成功体験は、企業文化と戦略に練り込まれているため、そこに抗うのは実は簡単ではありません。そして、大切なことは過去の成功体験の否定だけするのではなく、今の時代に適した成長のための行動をとる事です。

時間がどれだけかかっても諦めずに一人一人にしっかりと考えさせる力をつけている組織は、会社が今まさにこの時代環境に合致した勝つために必要な行動を取れるのです。それができていない会社は、経営者・上司に強制された指示で業績が挽回できないと、業績不振を会社や上司のせいにしてしまい、反撃の一手がなかなか打てずに衰退していくのではないでしょうか?さらに追い討ちをかけて、指示を強制させる会社では、社員に対して、成長の機会を与えられません。

このお二人は、やっぱり教育者で、選手想いなんだなと感服しました。

時間はかかるかもしれないけれども、EnjoyそしてThinkingのできる環境づくりを是非とも実現したいです。


Enjoy!


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