マッチ棒(ライターに憧れている)

趣味でイラストを描いたり、物語を考えたりしています。 今まで書いた長編小説はマガジンに…

マッチ棒(ライターに憧れている)

趣味でイラストを描いたり、物語を考えたりしています。 今まで書いた長編小説はマガジンにまとめ、追加しています。

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はじめまして

はじめまして、マッチ棒と申します。 いつもはTwitterで自分の思ったことを呟いているのですが、このたびnoteを始めてみました。 これからnoteでは、次の3つのことを綴っていきたいと思います。 日々考えていること→【日記】タイトル 描いたイラスト&描いてみた感想→【イラスト】タイトル 小説→【小説】タイトル まだnoteの操作に慣れておらず、文章も拙いですが頑張って書いていこうと思います。どうぞよろしくお願い致します!

    • 【小説】ある駅のジュース専門店 第48話「玉村誠一の手記」

       あれは昭和五十年、湿った梅雨の時期だった。  私の父、玉村善之は、温室に新しく植える植物を買いにホームセンターへ行った。そこで買ってきたのが、サラセニアという食虫植物だった。  当時小学生だった私は、父が見せてくれたサラセニアにおそるおそる顔を近づけた。食虫植物と聞くと、どこか獰猛で恐ろしいイメージがあったからだ。植物でありながら寄ってきた虫を捕らえ、ついには消化して養分にしてしまう。こんな怖い植物を自分の家で育てて良いのか。そう考えて、びくびくしていたのだと思う。  しか

      • 【小説】ある駅のジュース専門店 第47話「残滓」

         これはある日の夕方、学校帰りに遊びに行くためバスに乗った時のこと。  ちょうど混みやすい時間帯だったらしく、車内は人でいっぱいだった。手すりに掴まり、片手のスマホでSNSをチェックしていると、視界の端に電池マークの中身が減っていくのが映る。このスマホもそろそろ寿命だ。新しいものを買わないといけない。私は悶々としながら、目的の停留所がアナウンスされるのを待っていた。  降りるまでずっと立ったままバスに揺られる覚悟でいたが、途中で車内が空いてきたので、座席に座ることができた。熱

        • 【小説】ある駅のジュース専門店 第46話「繋がり」

          ※この小説を読む前に、【小説】ある駅のジュース専門店 第25話「連結⑦」を読むとよりお楽しみいただけます。(下のリンクからご覧いただけます)  俺が「玉村あみ」と名乗る人物に声を掛けられた日の、夕方。  教材やペンケースを鞄にしまっていると、親友の井田が近づいてきた。 「那生、お疲れ様」 「おう、お疲れ」 「実は今朝のあれで、ちょっと気になってることがあってさ」 「雑貨屋の人に声を掛けられたことか?」 「うん。確かあの時、名刺を貰ったって言ってたよね。ちょっと、見せてもらっ

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        • ある駅のジュース専門店
          48本
        • 赤ずきんの銃弾
          1本
        • キャンバスランド怪談
          2本
        • 瑠璃の囀り
          5本
        • ヴァン・フルールの飴売り
          9本
        • 時の砂が落ちるまで
          3本

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          【小説】ある駅のジュース専門店 第45話「標的」

           これはついこの間、バスから降りて大学に向かっていた時の話。 「那生くん!」  後ろから名前を呼ばれた。振り向くと、知らない人がにこにこしながら立っていた。  薄手の白いシャツに紺のジーンズと黒いスニーカーを合わせ、差し込む日光が黒髪のショートヘアを煌めかせる。顔の大部分は白い不織布マスクで隠されているが、緩く垂れた瞳から、穏やかそうな印象を受ける。 「森越那生くんでしょ? 久しぶり! 良かったぁ、また会えて」  久しぶり、と言われても、会った覚えがまるで無い。男とも女ともつ

          【小説】ある駅のジュース専門店 第45話「標的」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第44話「ジュース屋と雑貨屋」

           これはある夜、電車の中で居眠りをして、降りる駅を乗り過ごしてしまった時のこと。  慌てて降りたその駅は色あせたように真っ白で、改札の扉が開いたまま壊れている。看板の駅名に目を凝らしても、全く読めない。読み方を調べようとスマホを出せば、「圏外」の文字が目に飛び込んでくる。  以前、ネットで知った都市伝説が脳裏に浮かんできた。この世とは別の場所にあるという駅の噂だ。きさらぎ駅とか、かたす駅とか、やみ駅とか、とにかくたくさんあるらしい。  ここはもしかしたらそういう駅なのではない

          【小説】ある駅のジュース専門店 第44話「ジュース屋と雑貨屋」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第43話「散歩」

           これは、暖冬で昼間の気温が高くなった日の話。  私の家にはレナという茶色いトイプードルがいて、一日に三回、家族が順番に散歩に連れて行っている。私は夜の散歩を担当しており、七時ごろに家を出ている。  ある夜、私はレナと散歩に出かけた。レナは尻尾を高く掲げ、私の少し前を軽やかな足取りで歩いていく。まんまるの瞳は喜びに満ち溢れているように見えて可愛らしい。自然と笑みがこぼれる。  いつもは散歩コースがだいたい決まっていて、電柱の匂いを嗅ぎつつコースをなぞるように進む。だがその日は

          【小説】ある駅のジュース専門店 第43話「散歩」

          【小説】赤ずきんの銃弾 第1話「おつかい」

          「わぁ、でっかいお家!」  ロザリー・ペルティエは背の高い木に囲まれた屋敷を見上げ、感嘆の声を漏らした。背後から視線を感じて振り返ると、先程入ってきた門のそばで、二人の警備員が小声で話し合っている。本当にあんな子どもが、ありえない、などという会話が耳に入ってきたが、気にせず玄関の呼び鈴を鳴らす。 「こんにちは! フックス社長はこちらにいらっしゃいますか?」  扉が開き、分厚い辞書が辛うじて入るくらいの隙間が作られる。そこから厳つい男が怪訝な顔を覗かせた。男は鋭い目でロザリーを

          【小説】赤ずきんの銃弾 第1話「おつかい」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第42話「霊感」

           気がつけば、都市伝説の紹介サイトが表示されたスマホの画面がすぐ目の前にあった。どうやらスマホを持ったまま、前傾姿勢で眠ってしまっていたらしい。バスの床に落ちそうになっていたスマホを持ち直し、運賃表を見やれば、降りるはずの停留所はとうに過ぎている。顔から血の気が引いていくのが分かった。 「次は、⬛︎⬛︎駅前。⬛︎⬛︎駅前」  ざざざざ、とアナウンスにノイズが混じる。耳障りなその音に顔をしかめながら、私は降車ボタンを押した。  窓の外は墨を塗りたくったような暗闇で、街灯の明かり

          【小説】ある駅のジュース専門店 第42話「霊感」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第41話「いわくつけ」

           期末テストを二週間後に控えたある日。私は親友の千晴と高校に残り、放課後の教室でテスト勉強をしていた。 「ダメだぁ、頭パンクした! ねぇ萌、休憩しない?」 「そっか、もう一時間ぐらい経ってるね。ちょっと休もっか」 「よっしゃ! クッキーつまも〜」  千晴はスクールバッグの中からクッキーの箱を取り出した。 「お、美味しそう! 私も食べてもいい?」 「良いよー! 一緒に食べよ」 「やった! いただきまーす」  ビニールの包装を破き、クッキーを一口かじる。疲れた身体にほんのり甘い味

          【小説】ある駅のジュース専門店 第41話「いわくつけ」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第40話「井田晴人の都市伝説研究」

          はじめに  昨今、SNS上で「ある駅のジュース専門店」という都市伝説が突如出現し、現在も流行が続いている。大まかな内容は「存在しないはずの駅に迷い込んだ」というもので、2004年1月8日に投稿された「きさらぎ駅」や2011年11月10日に投稿された「すたか駅」と同じように、「異界駅」のカテゴリに分類することができる。しかし、SNSやネット掲示板で囁かれている噂を確認すると、「ある駅のジュース専門店」には従来の異界駅とは異なる特徴が見られる。  本稿では都市伝説「ある駅のジュ

          【小説】ある駅のジュース専門店 第40話「井田晴人の都市伝説研究」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第39話「話し声」

           これはある年の八月、母と買い物に出かけて家に帰ろうとしていた時の話。  町中からバスに乗り、自宅に一番近いバス停で降りてしばらく歩くと、背の高い木々に囲まれた石造りの大きな鳥居が見えてくる。  そこは「開戸神社」という神社で、日本神話に登場するイザナギの杖から生まれた神様を祀っているらしい。神社のそばには、かつてこの地域が村だった頃に入り口を守っていたという神様の石碑が建てられている。その石碑の管理も、開戸神社がしているのだという。 「もうそろそろ夏祭りの時期だね」  鳥居

          【小説】ある駅のジュース専門店 第39話「話し声」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第38話「腕時計」

           人のまばらな電車に乗り込むと、男は座席に全身を預けた。発車ベルが鳴り、ドアが閉まる。電車はゆっくりと走り出した。  左腕の時計に目をやれば、午後十時。家に帰ったらミックスナッツを肴にビールを飲んで、録画していた番組を観たい。だが明日も仕事だ。軽くシャワーでも浴びてすぐに眠りにつくのが最善だろう。そう考えながら、流れていく夜景をぼんやりと眺めていた。 「ご乗車ありがとうございます。次は、⬛︎⬛︎……⬛︎⬛︎です」  激しいノイズの入ったアナウンスにびくりとする。駅名の部分が全

          【小説】ある駅のジュース専門店 第38話「腕時計」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第37話「肝試し」

           これは、僕が小学五年生だった頃の話。  当時通っていた小学校では、毎年五年生の夏頃になると二泊三日の合宿があった。山間にある青少年自然の家に泊まり、キャンプファイヤーをしたり班ごとにカレーを作ったりと、普段はなかなかできない体験ができた。  そんな合宿で最も印象に残っているのが、二日目に行われた肝試しである。  夕方からキャンプファイヤーが始まり、終わった頃には、日はとっくに沈んでいた。次のイベントがあるので体育館に集まってください、と先生から指示が出される。みんなでぞろ

          【小説】ある駅のジュース専門店 第37話「肝試し」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第36話「接触」

           公共の施設に行くと、たまに違う場所で同じ人を何度も見かけることがある。普段通っている高校でも、さっき廊下ですれ違った人を図書室でも見かけたり、さっき授業をしていた先生と掃除中にも会ったりして、そのたびに偶然の不思議さを感じている。  つい最近も同じような体験をした。ただ、あの頻度は少し……異常だったと思う。  これは昨日、友人たちと三人でショッピングモールに遊びに行った時の話。  最初にエスカレーターで三階に上がり、ゲームセンターに向かった。クレーンゲームで流行りのキャラ

          【小説】ある駅のジュース専門店 第36話「接触」

          【小説】ある駅のジュース専門店 第35話「検索履歴」

           親友の知樹が死んで、約一年が経った。  俺のせいだ。俺があの日、カーナビを信じて知らない道を突き進んでしまったからだ。明らかに怪しい駅の中にどんどん入っていって、あのジュース屋で何の疑いもなくジュースを飲んだからだ。間違った判断を重ねた結果、知樹は化け物に喰われて死んでしまった。  そろそろ過去のこととして割り切らなければならないのは分かっている。しかし、考えないようにすればするほど、あの日のことを鮮明に思い出してしまう。いつまでも前を向けないのが辛い。  気晴らしに動画で

          【小説】ある駅のジュース専門店 第35話「検索履歴」