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【小説】ゆーびんやさん、おとーさん(20日目)


ゆーびんやさんって昔は憧れたもんだぜ!だって手紙とか届けて欲しいものとかを切手を貼りさえすりゃどこにでも届けてくれるんだぜ!何かよく分かんねえけど凄い仕事だと思っていた。いたと過去形にしたのは今ではその憧れだった、ゆーびんやさんになったのは良かったんだけど…。

とほほほほほほ。

をー!


ちなみにおれは今、病院にいる。何の病気かって?それはせ…と言うか、心の病気の一種と言うか、依存症っていうの?早い話、ネット依存、買い物依存症に陥っていた。って言うのも、おれは前述通りゆーびんやさんに憧れて高校のバイトも年賀状とかの外勤で住所を必死で、というか嬉々として覚えてしていたぐらい…って言うか、バイトもゆーびんやさんでしかしなかったしな…よく考えたらって言うか、よく考えなくてもそうなんだけどな…。

で、高校卒業したら即、地元の郵便局に採用されて気合い入っていたけどなー。でも外勤だけじゃなくて内勤も経験したけど職場結婚して娘が一人できてますます仕事頑張らんと!と気合い入れていたんだけどなー。

で、娘がこども園に行くような年頃になった頃だったか…奥さんが一種の病気になって入院することになって娘の世話や家事をしながら自分でいうのもなんだが献身的に看病してきたつもりだったが…。

で、その頃おれ自身体力的にも精神的にもかなりの負荷がかかってきて合間の時間にスマホで買い物をすることが多くなってきた。最初は家族の必要なものを必要なだけ買っていたんだが…。

それでかなり助かっていたんだが次第に私的に欲しいものを買うようになってきて、最初のうちは「これは頑張っている自分へのごほうび、ごほうび」という感覚だったんだが…。それが段々と量的にも値段的にも半端ない数になってきて…次第に我が家は開封すらしてない段ボールなどの荷物に占領されるようになってきた。


その時になるとさすがの娘も

「おとーさん…うち、こんなせまかった?」

なんて言うようになってきて何と娘の誕生日すら忘れてしまっていたぐらいだ。

って言うか、奥さんから

「ゆーちゃんの誕生日祝い、家で出来なくてゴメンね…フミくんから何か悪いけど、ゆーちゃんの好きなもの、買ってあげて…」

という始末。もちろん家の状態を奥さんには言えずにいた。

こうなるとますます負のスパイラル状態に陥るところだったが…。

そこを見かねたのであろう実家のオフクロが久しぶりに我が家にいきなり訪ねてきた。

「フミオ!あんた、何なの!この部屋!あれ、ここも!ここも!」

と、家の整理・掃除を一切合切何日にもわたってやってくれた。正直助かったーと心の底から安堵した。

「フミオ、ゆーちゃんに感謝しな!この娘が私に手紙をくれたんだよ!覚えたてのひらがなばっかりの手紙で…」

えっ…娘の送り迎えもちゃんとして先生からとも話していて頭に入っていたはずの成長ぶりもハッと気付かされたというか、やっと思い出したぐらいだ、おれは…。

「あんた…スマホしばらく取り上げた方がいいみたいだね…」

とオフクロが言うとおれは必死になって抵抗した。

「え…え…これは、これだけはー!」


というわけでおれは病院にいる。と言うのも買い物の総額は相当なものになっていてクレジット払いも半端なくて、あやうく家のローンのためのお金なんかまで手を出す直前まで行きかけていたがそこは寸止めできて、というかオフクロやよく買い物した関係で配達員も元同僚だったりして異変に気がついたらしく娘や奥さんにまで伝言していたらしい。

とほほほほほほ。

で、スマホは即解約、仕事の方もしばらく事情をきちんと話して休暇をもらってきちんと治すため、けじめをつけるために入院することにした。


「ゆーびんですよ!」

娘が奥さんからの手紙をオフクロと共に持ってきてくれた。

思えば奥さんともこんなにも手紙のやりとりをしたのは交際していた時にすら、出来ていなかったかもしれない。

「らぶらぶだね!てがみっていいなー。い・け・な・いすまほがなくてもこうやってあいをたしかめることができるし!」

全くこの年頃の女の子はませてきて…何か知らんが、目から大量の…

「あー!おとーさん、ないてるー!ゆーちゃん、なかしっちゃったかなー?」

でもそんな娘もいつかは嫁に行くかもしれない。そんな心配するには早いし、時代が違うかもしれないし、仮におれみたいに何かの中毒とかひきこもりとかになっても困るし…。

なんて考えていたら余計に目から…。

「ごめん、ごめん、おとーさん…ゆーちゃんもおとーさんみたいになりたいなー!ゆーびんやさん!だって…」

いやいや、ゆーちゃんはもう立派におとーさんとおかーさんの手紙を持ってきてくれるゆーびんやさんだよ!

完。

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