見出し画像

【美術展2024#80】荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ@国立新美術館

会期:2024年10月30日(水)〜12月16日(月)

本展は、2000年代から国際展や美術館でパフォーマンス・アートを発表してきた米国在住のアーティスト、荒川ナッシュ医のアジア地域においては初めての美術館での個展です。荒川ナッシュはコラボレーションをアート活動の基本とし、一作家の個展でありながら、 彼に協力する多数の画家による絵画が2000㎡の会場内の9つのセクションに分かれて「登場」します。誰でも美術館の床に絵が描ける作品など、入場無料でどなたでも楽しめる本展は絵画とパフォーマンスの近しい関係を探る新しい試みとなるでしょう。

子ども、絵画、歴史、音楽、身体、会話、そしてユーモアがアンバランスに作用しあう荒川ナッシュの展覧会。「新美に来る観客と出会いたい」という荒川ナッシュは、「短くも親密な」展覧会ツアーも企画しています。国立新美術館においては2007年の開館以来初となるパフォーマンス・アーティストの個展をぜひご堪能ください。

国立新美術館


田名網敬一展から階を変えて館内をハシゴする。

田名網氏とはジャンルも表現も年代も全く違うアーティストなので気持ちのシフトチェンジがなかなかうまくいかない。

そもそも初めて聞く名前「荒川ナッシュ医」だが、ってなんだ?
病院?医者?医療的なプロジェクトチームか何か?
とかもやもやしていたが、Eiと読む名前だった。
Arakawa Ei 氏が米国籍になり、Ei Arakawa - Nash 氏となったのだね。

ん?誰に?


・米国在住のパフォーマンスアーティストである。
・他アーティストとのコラボレーションを基本とする活動である。
・国立新美術館開館以来初となるパフォーマンス・アーティストの個展である。
・入場料無料である。

という浅い前情報を頼りにいざ入場。


「絵画と公園」

《どうぞご自由にお描きください》 吉原治良 1956 ↓

《メガどうぞご自由にお描きください》 荒川ナッシュ医 2021 ↓


東京国立近代美術館から借りてきた吉原治良の《黒地に白》(1965)を錦の御旗よろしく高々と掲げる。 

非常口誘導灯の上にもクレヨンが。消防法は大丈夫か

「サッカーすき」「渋沢栄一」

個人的にはこれ系のパフォーマンスには疑問が残る
吉原氏の行った1956年は物資も情報もまだ少なく表現の幅も狭い時代だったからそれなりのインパクトはあったのかもしれない。
だが、結局今目の前に描かれているものは言ってしまえば個々のしょーもない「落書き」で、それが集積されたところで(ビジュアル的にも、子供の情操教育的にも)この情報過多な現代に何を生み出すのだろう、と思ってしまった。



「絵画と子育て」

トレバー・シミズの絵画。
ごめん、…「落書き」にしか見えないや。
というかまあ意図的に稚拙にやってるようだが、少なくとも自宅に飾りたい絵ではない
睡眠不足の人、搾乳機、食卓風景、等が描かれた絵画。
我が家にも子供たちがおり、子育ては通ってきたので雰囲気は伝わる、…が、この絵を前にしたところで「…ぉ、おぅ」という感じ。

荒川氏本人は同性パートナーである夫と、アメリカのカリフォルニア州で卵子提供と代理出産を経て、2024年12月に双子の赤ちゃんを迎える予定だという。

そういう生き方をする人もいるのだ、ということについて理解はする。
だが私の価値観や人生観とは絶望的なズレがある。
もちろん私が正義とは限らないが、多様性が叫ばれる時代、この感覚のズレも多様性のひとつとして理解してもらえるだろうか。



「絵画とLGBTQIA+」

いつの間にかどんどん長くなっていくこの手のカテゴライズ。
こういう作品を見ると、自らの性的嗜好や性自認を作品にしてまで声高に叫ぶ必要ある?といつも思う。
界隈の人たちは「LGBTQIABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZいろはにほへとอักษรไทยပြည်ထောင်စုአማርኛभारत गणराज्यاللغة العربيةαβθγΩπ+++…」となっていっても世界の全てを理解して受け入れる覚悟はあるのだろうか。



「絵画と音楽」

一転してエモーショナルな空間が広がる。

聞きなれた声の日本語の歌が流れていると思ったら、このために書き下ろしたユーミンの新曲だそうだ。
マティスへ捧げるオマージュとのことだがその辺については解説を読まないとよくわからない。

3点あるマティスのドローイングは↓この時に出品されていたものを、また読売新聞社から借りてきたのだね。

ワタシとマティス

曲に合わせてゆっくりと光源が移動する。
木の影が絵に重なり、そして離れていく。
投影される自分の影をぼーっと見ていると、空間の中に私も入り込んでしまったかのような不思議な感覚になった。
それまでの主張強めのパンチの効いた作品群の後だとなんだか妙に落ち着くのだが、こういう毒のない雰囲気系の感じがいかにも日本人的な感覚だなあなんて思った。



「絵画とパスポート」

荒川氏は2019年にアメリカ国籍を取得した。
このブースでは自身のアイデンティティと重ね合わせて、日本国外で活躍した日本人や日本ルーツの作家の作品が紹介される。

河原温のドローイング2点は日本初公開だそうだ。
新生児を描いたものと、文字を書いたもの。
どちらもこれから子供を迎える荒川氏の興味を惹くものだったのだろう。

また河原温の第一子誕生日翌日(である可能性が高い)の日付をLEDで再現した荒川氏の作品も合わせて展示されていた。



何となく理解できそうなものもあれば、全く共感できないものもあったり。
全体的に私の好みにはハマらない展覧会だったが、こういう表現やこういう生き方をしている人もいるのだという理解はしたいと思う。
まあきっと深いところまでは理解しきれないだろうが、せめて知識として知れたということはよかったとしよう。
人は違うから面白いのだろうし、人が生まれて、そして生きるということは変わらずに素晴らしいことなのだ。


タイミングが合えば本人ガイドの展覧会ツアーにも参加できるようだ。↓
本人の声を直接聞けば受ける印象や感じること考えることもまた色々違うのかもしれない。

https://www.nact.jp/exhibition_special/media/PerformanceCalendar_JP.pdf



【美術館の名作椅子】 ↓


【美術展2024】まとめマガジン ↓

いいなと思ったら応援しよう!