【青年海外協力隊ベトナム日記 2006〜08】 第33話 最後の美術の授業
私がベトナムに来てからもうすぐ2年。
先日の日本語の授業に続き、今日、私の担当していた美術の授業が終わった。
学生たちは6月の卒業試験を終えた後、7月に卒業式を迎える。
けれども私の任期は6月末までなので、彼らの卒業を待たずに日本に帰国しなければならない。
あと数週間で本当に日本に帰らなければならないのだと思うととても切なくなる。
今までこの町での生活に文句を言ったりもしてきたが、今はこの町を離れるのが、そして学生たちと別れなければならないのが本当に寂しい。
「まだベトナムに来る前、日本にいた時に、私はこの学校の授業でやりたいことをいろいろと考えていた。だけど私は2年間でその中のほんの少しのことしかできなかった。2年前と比べて君たちの描く絵はとても良くなったけれど、それは君たちが頑張ったからであって、結局私は君たちに何もしてやれなかった。ごめんなさい。そして君たちの卒業する姿を見ることができなくて本当に寂しい。」
私は最後にそんな話をした。
「私たちは先生から多くのことを学びました。今まで私たちが知らなかったことをたくさん聞かせてくれたり、一緒にいろいろ遊びに行ってくれたり、今まで本当にありがとうございました。先生のことは忘れません。いつかまたベトナムに帰ってきてください。」
学生たちはちょっと涙ぐみながらそう言ってくれた。
私はこみ上げてくるものをこらえ切れなかった。
今でも鮮明に思い出す。
2年前初めて見たこの町の青い空と海。
緑豊かな山々。
黄金色に輝く田んぼの稲。
学生や先生方と遊びにいったいろいろな場所。
彼らに連れて行ってもらった田舎の実家。
そこで暮らす人々の生活。
彼らの笑顔。
彼らと関わる中で私も彼らの価値観や文化を知り、ベトナムのこともより深く考えることができるようになった。
そして日本のことも以前より客観的な視点で見ることができるようになったと思う。
彼らもまた、今まで私が知らなかった新しい扉を開いてくれたのだ。
心から感謝したい。
今まで本当にありがとう。
続く ↓