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教育と保育

弟の幼稚園で急遽、保護者会が開かれた。内容は保育時間の変更について。近隣の幼稚園が徐々に通常登園に戻る中、弟の幼稚園は10月に入ってからも分散登園が続き、保育日数は全学年週4日、お弁当を持参できる日数は年長週2日、年中少は週1日しかなかった。

元々、有料の延長保育サービスがあるので、午前保育の日で空きがあれば、お弁当持参で預かってもらうことは可能である。しかし、分散登園による保育時間の大幅減に対して、保育料の返金はない。そこに加えて、本来は保育料内で預けられる保育時間を有料で買わねばならないので、なんだか二重の搾取だなとか、ケチなことを考えてしまい、あまり積極的になれなかった。現実には応募が殺到し、枠はあっという間に消えてしまった。

保育料の返金がないのにはふたつ理由がある。ひとつは昨年から始まった保育料の無償化。無償だから問題ないでしょ、という簡単な理屈だ。しかし、ここは都内の私立園なので、月額保育料は支給上限額を超えている。足が出た部分は実費払いだ。保育料以外にも水道光熱費や教材費などの支払いもあるので、園バスがないだけ良いものの、それを通常時と同様の金額で払い続けるというのは、いささか計算が合わないような気がしてしまう。

もうひとつは、先生の人件費が通常時よりコスト増になっているということ。午前と午後の分散登園のシフトを組むと、本来であれば9時〜14時半である先生の保育時間が9時〜15時半となり、1時間押した分、その他業務の対応が後ろ倒しになるのだという。よって、勤務時間増→給料増というのが自然の流れだが、それをするには原資がいる。せめてもの補填や、最悪でも通常時の給与水準を守るということで、保育料の減免はできないようだ。

仕方ないとは思っている。コロナの禍に影響を受けているのは、どの立場の人も同じ。先生だけに無理を強いるのは本望ではない。その辺りのことを保護者にハッキリ仰る園長先生の姿は、先生方にとっては心強いだろう。保護者には非常に厳しく映っているが、雇用主の態度として私は好きだ。

その後、園長は話の本筋を保育時間から教育成果に持っていった。幼稚園は保育園とは違い、教育機関である。文科省が定めた幼稚園教育要領を修めることが最終目標であり、モンテッソーリ教育を実践する当園では、独自に定められたモンテのカリキュラムの修了がゴールである。

ゴールに至るにあたり、現状の子どもの様子に懸念がなければ、問題はないのではないか。要は、教育の質が担保されていれば、保育時間の総量が少なくても問題ないはずだ、という話なのである。

これには膝を叩いた。そうだよな。何のために子どもを幼稚園に入れているのか。どうして幼稚園に通わせるライフスタイルを選択したのか。しかもモンテッソーリ教育という教育法を掲げて、理念を持ったこの私立園に、なぜ入園させようと思ったのか。子どもに幼児教育を受けさせたいと思った際の志望動機を、今こそ思い出さねばならない。

教育と保育は明確に違う。保育は、養育者が子どもを養護できない状況にある場合に、それを補完する役割を有している。教育を受けさせることと、保育が往々にしてセットになっているのが幼稚園であるとは思うが、弟の幼稚園は常日頃から教育を前面に出している園である。世間がどんなにバタついても、その軸はブレないことを見せつけられた。それだけの教育をしてくださると言い切る園長のプロ意識を目前にして、無駄口は叩けないと思った。

ほかの保護者はどう思っただろうか。子どもが幼稚園にいる間にパートに出る人もいるし、私も在宅仕事がある。3月から今日に至るまで、保育時間が短いことによるストレスはかなりのものがあった。保育も一定時間確保したいことは確かだ。

来週から年長は通常通りの保育に戻る。感謝!!…なので、冷静に話が聞けたというところもある。捉え方は、個人によって大きく異なるに違いない。





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