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日本シャルドネとの恋〈日本/シャルドネ〉

北海道産の3000円シャルドネを飲みました。

すっかり酔いも覚めた翌日。
なんとなく胸騒ぎを感じて、昨晩のツイートを読み返してみます。

日本のシャルドネほとんど飲んだことなくて新鮮✨

そうだっけ……?

そう思ってよくよく思い返してみると、どこからともなく、日本シャルドネたちとの淡い思い出が蘇ってくるではありませんか。

――いや、飲んでるやん…!

「今カノ」にいい顔したいがために、「昔の女」を忘れたフリする優男、みたいな酷い仕打ちをしてしまったわたし。
そこで、日本シャルドネたちへの懺悔を込めて、これまで飲んだ日本シャルドネについて振り返ってみることにしました。

いやほら、昔のことってついうっかり忘れちゃうんだよな~、悪気はないんだよ悪気はアハハハ…っ!(滝汗)

ということで、この記事は完全にわたしの備忘録みたいなものです。まあ元カノをずらっと並べてみるとか、ちょっと趣味悪い気がしないでもないけど…!

① 111VINEYARD シャルドネ 2019 [¥3300]

こちら、塩尻にあります111ヴィンヤードさんのシャルドネです。

111ヴィンヤードさんは、わたしの推し日本ワイナリー。2020年7月に軽井沢のワインバーでいただいた『キュベ鼓動(メルロー)』が衝撃的に美味しく、慌てておうちに連れて帰ってからというもの、新ヴィンテージが出るたびに購入させていただいています😊
ひとめ惚れによってお付き合いがはじまったパターンのワイナリーだなこれ。

こちらのシャルドネは(ほぼ)ファーストヴィンテージだったよう。
清涼感のあるフレッシュな酸味と、シャルドネらしいふくよかさが感じられる美味しいワインでした。ひとめ惚れ、間違ってない…!

樽香はオークチップによるものだそうです。全体の香りは繊細で、青みのあるグレープフルーツ系の香りが、気づくとすっと消えていきます。ところが最後に、吟醸酒のような残り香が漂ってきます。なんというか、ちゃんと造られた、綺麗なシャルドネなんです。

なにせじわじわと人気も高まっているようで、最近ではちょっと手に入れづらくなっている様子。

・・・わかるよ。昔付き合ったことあるけど、いい女だったもんなァあいつ…!

② 菊鹿 シャルドネ(NV) [¥2913]

こちらは、熊本の菊鹿ワイナリーさんのシャルドネです。

菊鹿さんは「樽熟」のシャルドネが有名ですが、確か夫が「どうしても菊鹿のワインが飲んでみたい」などと言って、ネットで注文したワイン。つまりこれは、夫の恋心ワインです。

当時(2020年)はまだ「欲しいワインをネットで買う」ことが我が家では珍しく、「え、ネットで買うほど飲みたかったの?!」とびっくりした思い出です。恋ってすごい。

このシャルドネ、美味しいです。

主張はありながらも決してくどくないバニラ系の樽香に、モモやトロピカルフルーツのような熟した果実味と綺麗な酸。白い花のようなフローラルさもありながら、口当たりは瑞々しく爽やか。
温度があがってくると蜂蜜のような香りも立ちのぼり、かすかに苦みやコクが顔をのぞかせます。

現地では、2019年ヴィンテージの樽熟シャルドネも試飲させてもらいました。こちらはまだまだ樽がビッシバシにきいおり、ちょっと熟成が必要そう。ただいま我が家のセラーで、ぐっすりと眠ってもらっています。

菊鹿さんは樽熟のベーリーAをはじめ、どのワインも綺麗でボリュームがあって美味しい。全体的なクォリティが高く、誰にでもオススメできるワイナリーです。

ほら、友達にオススメできる彼女ってさァ、絶対いい子に決まってる…!

③ ミエ・イケノ シャルドネ 2017[¥5940]

ここから3本、2021年におこなった山梨・長野横断ワ旅の際に出会ったワインが続きます。

▶ 山梨・長野のテロワールを発見した記事はこちら。

まず最初は、ミエ・イケノです。
ミエ・イケノ、みなさんご存じですか?

漫画『神の雫』にも取り上げられ、今ではなかなか入手困難になってしまった大変人気のワイナリー。先日も新ヴィンテージの発売がありましたが、買えた方、買えなかった方、悲喜こもごものタイムラインが繰り広げられていました。

今回の記事はおもに「ボトルで購入した」ワインに限っているのですが、ミエイケノだけは、八ヶ岳のリゾナーレで試飲をさせていただいたものです。でも、これは別格で記しておこうと思います。なぜか。

実はわたし、このワインの神髄を理解することができなかったんです。

とにかく、強いエネルギーを持ったワインでした。
ヒノキのような清涼感と、木の根のようなアーシーな香り。ヨーグルトに、蜂蜜に、花のような華やかさ。そしてシャープな酸と酵母の風味が、粘性とともに一気に押し寄せてくるような、パワフルな味わい。

結果、当時のわたしの舌の、理解の範疇を超えてしまったのだと思います。たぶん、年上の美しい人と付き合えることになったけど、全然自分がそのレベルに合わなかった、みたいなこと。「あなたが大人になったら、またね」と、大人の余裕と優しさでフラれた感じ…!

自然派の造りであるだけに、ヴィンテージ差やボトル差もありそうに思います。でも、そういう意味でもかなりヴィヴィットな体験でしたし、わたしのワインライフの底上げにつながるいい体験だったと思っています。

ほんの一瞬だったけど、付き合ってくれてありがとう。次に出会ったときにはしっかりと成長した姿をお見せし、そしてできればまたお付き合いしたいです…!

④ 小布施ワイナリー ドメイヌ・ソガ ヴィーニュ・サンシミ シャルドネ 2019[¥3850]

小布施ワイナリーさんはですね、もうですね、この、裏エチケットをお読みいただければ…

想い………!

長野にうかがうからには、小布施ワイナリーさんは絶対に買おうと決めていました。でも、実際にこの裏エチケットを読むと、戦々恐々としてきます。
だって、ワインの味で、「鋼」「岩塩」って………片方、素材じゃん…!

購入した酒屋さんから「開けて数日置いておくといい」とうかがい、数日に分けていただきました。
確かに初日は、カチカチとした固い触感と高い酸に多少面食らいます。でも、あけて数日経つ頃にはだいぶなめらかに、そして花のような香りもあらわれてきました。

そうかこの子、付き合っていくうちに本当のよさがわかっていくタイプの子なんだわ。たぶん熟成を経ることで、より美しくなっていくのだろうなぁ…!

残念ながらわたしのちからでは、この子のポテンシャルを引き出しきれなかったように思います。
彼女に振り向いてもらえるひとは、きっとひと握り。そして振り向いてもらえたら、きっと一生忘れられない体験になるのだろうなぁ…!

▶ 小布施さんには、また必ずリベンジします!

⑤ シャトー・メルシャン 北信左岸シャルドネ リヴァリス 2018[¥7200]

こちらはシャトー・メルシャンさんの「椀子ワイナリー」にていただいたもの。
これはですねぇ… 間違いなく直球で美味しかったです。

抜栓直後から香る、バターやトーストのような柔らかな樽香。アプリコットやメロンのような熟して甘やかな果実の香り。まろやかなくちあたりに、程よい酸味。余韻は比較的クリアで、日本酒のような吟醸香も感じます。
こっくりまろやかでクリーミーだけれど、綺麗な酸がクリアにまとめあげるという上質感。

誰もが認める美人なのに、まさかの美人なだけじゃなく、ひとあたりよく、優しく凛としていて、知的で魅力的なひとっていう感じ。いや、誰だって惚れちゃうでしょそんなの!

「メルシャン」って、誰でもが知っている大企業じゃないですか。ポップでキャッチーな安ワインや、大量生産のデイリーワインも扱っていて、ともすれば「大企業だからさ~」なんて、十把一絡げに言われてもおかしくないほどの。

でも、こうしてトップキュベをいただいたり、現地に行ってお話をうかがったりすると、ワインへの本気度と愛情が間違いなく伝わってくるんです。

「ふつうに美味しいワインを、ふつうの家庭に、ふつうに届ける」、そんなメルシャンさんのようなワイナリーがあってこそ、日本のワイン文化が育っていくんだろうなぁ、と思います。

メルシャンさんのワインの包容力、こりゃもう愛ですよ、愛。いや、ほんとに。

⑥ マンズワイン ソラリス 信州シャルドネ 2018[¥3850]

こちらはキッコーマングループの、マンズワインさん(山梨)のソラリスです。
マンズワイン小諸ワイナリーさんのオンラインツアーに参加する際に、セットで購入したワイン。

オンラインツアーワイン会を開催🥄

このワイン、美味しかったな~!なんか思い出すと、嬉しくなる感じの美味しさでした。

ナッティな風味のある、まろやかで濃厚な味わい。ステンレスタンクなのに、どことなく漂う樽熟のようなクリーミーさ。綺麗系の厚みを感じつつ、素直にごくごく飲めちゃう親しみやすいワイン。

この時期、たまたま気難しいタイプのワインとの出会いが続いてしまい、ワインに対してちょっと身構えてしまってたんです。失恋が続いて、ちょっと臆病になっていたというか。

そんなわたしに、ソラリスはにこにこフレンドリーに接してくれました。ただおいしく、飲んで楽しいワイン。そんなソラリスのハッピーな美味しさに、心から癒されました。

わたしの「ワインが好き!」という素直な気持ちを思い出させてくれた、いい出会いでもありました。そういう、爽やかで軽やかな恋もまた、いいじゃない…!

⑦ カーヴドッチ もぐら シャルドネ 2020 [¥3520]

 

こちらは新潟のカーブドッチさんにうかがい、現地で買ってきたワインです。

カーブドッチさんは、日本でいちはやく「アルバリーニョ」に着手されたワイナリー。海沿いで造られるワインはクリアながらどこか塩っぽさを感じてとても好みです。

さて、こちらも裏エチケットを確認してみましょうか。

――どうぶつシリーズは醸造家掛川の趣味にはしったワイン達。

こ、これは・・・個性派の予感…!!

たとえばほら、サブカル女子みたいなことですよ。「自分はこれが好き」という確固たる思いがあり、それを表現することを恐れぬ彼女たち。多少世間とは違っていても、孤独でも、それこそを生きる活力にできる、自由な表現力。

現地には、これまで発売されてきた動物シリーズがずらり

ワイン造りって、一方では泥にまみれた「農業」であり、手作りで組み立てる「工業」だと思っています。でもその反面、やはりどこか、「アート」な側面も含んでいると思うのです。なにかを「造りたい!」と熱望する気持ちって、どこかしら「表現」に通ずる側面があるというか。

でも、アートな姿勢と「一般の市場に受け入れられる」かどうかって、常に葛藤が起きる部分だと思うんです。先鋭的すぎると受け入れられない、でも大衆に寄せてばかりでは「アート」にならない。アーティストだって生きていかなきゃいけないので、好きな「表現」ばかりしているわけにもいかない……

それならいっそ「別ラインで好きにやっちゃいます」って姿勢、すがすがしいなと思います。わかってくれるひとだけわかってくれたらいいよって、思い切りがよくってカッコいいじゃないですか。

でも実はバランスいいなと思うのが、カーブドッチさんはちゃんと、ライトに楽しみたい層向けの『FUNPY』とか、上級向けのスタンダードのキュベも造られてるんですよねぇ。

そういうこと、ちゃーんと全部わかったうえで、それでも「好き」をやってるサブカル女子、そんな魅力的なひとのことなんて、絶対好きになるじゃんあたし…!

ということで、こちらはにごり系シャルドネです個性…!
香りは溌剌とした酸に、白桃や黄桃のような甘やかなフルーツ感。蜂蜜のようなまったりとした感じがあって、ほんのりとミントの風味も漂います。
味わいは濃いめで甘やか、まろやかでフルーティ。

意外や意外、見た目やコンセプトのインパクトとは裏腹に、実はわかりやすく飲みごたえがあるワインです。

あれ、おかしいな。ちょっとどきどきしたけど、かなりちゃんと美味しい。見かけの派手さに引っ張られてたけど、ひるがえってめっちゃええ子に思えてきたぞ…!

【3000円ワイン】宝水ワイナリー RICCA シャルドネ 2020[¥3500]

<ワインdata>
国:日本 種類:白ワイン 品種:シャルドネ ヴィンテージ:2020 生産者:宝水ワイナリー インポーター:―

<バランス>
酸味★★★★☆ 糖度:★★☆☆☆ 香り:★★★☆☆

それでは最後に、今回お付き合いさせていただいた3000円ワインをご紹介します。こちらは2022年ゴールデンウィークの、北海道ワ旅で連れ帰ったワインです。ワ旅ワイン、とうとう最後の1本。

こちらは空知地方にある「宝水ワイナリー」さんのワインです。

色は淡いグリーンがかったイエロー。粘性も低く、さらっとした印象です。香りは優しく、酸味と、和柑橘のような苦味をともないます。

味わいは、優しく繊細。アタックの酸度は高めですが、果実味が柔らかく、ドライでシャープな印象があります。後半にふんわりとタンニンのような苦みも感じます。温度があがってくるとフルーツ感が出やすくなって、わたしは少し待ってからのほうが好みでした。

和食に合わせたい、ほんのりとした軽やかさ。お魚のほんのりとした苦味なんかにも寄り添ってくれそう。

あ~、あれだ、癒し系だ~…っ!

なんかほら、つい絶世の美女とか、キャラの濃い派手な女子が目立っちゃうんですけど、実は普段から仲良くしたいのって、こういう柔らかくて親切で親しみの持てる子だったり、するじゃないですか。しないですか?

しかもこの子、実は優しいだけじゃないんです。ちゃんと道産らしいシャープな酸があって、思わず「おっ?」って振り返っちゃう、そういう涼やかな魅力を感じるワインでした。

コメントも控えめ。・・・・誰がどうとは言いませんが!

いやほんと、こうして思い返してみると、日本シャルドネ、みんないい子だったなぁ…!

RICCAを飲みながら、「なんかこれ、どこのシャルドネっぽくもないね」って夫に話したら、「いや、日本シャルドネっぽいんだよ」って言われました。

「フランスのジェネリック」だとか、「ニューワールドらしい」だとか、つい言いたくなっちゃうし、きっとこれからも言っちゃうと思うのですが、日本のワインは、日本のワインとして美味しい。そのことを、忘れずに胸に刻んでおきたいと思いました。

うん。みんな、ありがとう。もう、あなたたちのこと、忘れませんから…!!!!

日本ワインで乾杯!

それでは、ここまでお読みいただいてありがとうございました♪
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また次の、 #3000円ワイン#ワ活 でお会いしましょう。3000円台のワインをこよなく愛する3000円ワインの民、ますたやでした^0^なんかまた記事長くなってしまった!読んでくださってありがとうございました👏♡

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■ ますたやとは:

関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)。夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年、夫婦でJ.S.A.認定ワインエキスパート取得。これからもおいしいワイン、いっぱい飲むぞ~!

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