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「エンジニア35歳定年説」を3つの観点で整理してみた

「エンジニア35歳定年説」を、
・個人の経年変化(欲求や成長)
・組織マネジメント
・技術革新における職種の成熟

の3つの観点で整理していきたいなと思っています。

肌感として、また、ここ数年言われていることですが、「『エンジニア35歳定年説』は古い言葉」だな、という感じはあって。
「どういう背景で『エンジニア35歳定年説』という言葉が生まれて、どういった形でそういった捉え方がなくなっていくのか。今後もそういった言葉は特定の職業に当てはめられる(「データサイエンティスト◯◯歳定年説」的なもの)可能性はあるのか?」というところを咀嚼したくなりました。
「セールス◯◯歳定年説」「大工◯◯歳定年説」という言葉は耳にしたことがないわけで、なんでなんだっけ?というところを言語化しておきたかったり。

ちなみに、「エンジニア35歳定年説」的な言葉は1990年くらいには既にあったようで。
「プログラマ定年説」という言葉は、ウィキペディアにも言及あり。

結論としては、
・「エンジニア35歳定年説」という捉え方は一定割合残りつつも、言われ始めた当初ほどではない
・技術革新の過程の中で、特定の職種について「◯◯歳定年説」的な言語化をすることは今後も発生し得る(暗黙の可能性もあり)

という感じかなと思っています。

私見と所感が多めですが、引き続きお読みいただければ・・・!

個人の経年変化(欲求や成長)

欲求は
・もっと仕事ができるようになりたい
・もっと給料がほしい
・もっといい環境で働きたい
といったもの。
承認欲求、他者との比較などから必ずと言っていいほど発生する感情。

こういった感情を昇華するためには
・エンジニアとして成長し、よりよいアウトプットを出せるようになる
・会社に待遇改善を求める
・環境を変える(転職など)
などを選択することになる。

エンジニアとしての成長は
・よりはやくアウトプットできるようになる
・要求をより的確に満たせるようになる
・より難易度が高いことができるようになる
のいずれか。

「よりはやくアウトプットできるようになる」「要求をより的確に満たせるようになる」この2つは、仕事をきちんと取り組んでいれば、ある程度はできるようになる。
お金を出す側(顧客、経営層)にとって理解しやすく、評価ができるので、給与に反映しやすい。
「よりはやくアウトプットできるようになる」は、特定の領域での慣れ的なものを意図して記載しているのですが、「飽き」にもつながってしまうんですよね。
「要求をより的確に満たせるようになる」は、突き詰めるとエンジニアリングから離れてしまう場合もありますし。
一方で、「より難易度が高いことができるようになる」は、それを発揮する場が限られていることが多く、お金を出す側にとって理解しにくい。
よって、給与に反映しにくい。

なので、より難易度が高いことをできるようになりたいエンジニアがより欲求を満たそうとすると、会社に待遇改善を求めたり、自分が活躍できる環境を求めて今の環境を離れることになるわけで。
会社に待遇改善を求める部分は、理解の難しさから他の職種より説明コストが高い。
個人の興味と、会社が評価できること、ビジネスにつながることが直結しない場合もあり。
転職やフリーランスとして働くことが積極的に行われていない時代では、そういった選択肢もとりにくい。

会社が求めることに対応して、できるようになって、ある程度評価されても、時間の経過により飽きがきたり、成長や志向の変化によりやりたいこととのズレてきてフラストレーションがたまったり、ということはあったのではないかな?という感じ。

組織マネジメント

一方で、会社に関する話。
主に、企業慣習と、企業が従業員に提供できる選択肢について。

日本の企業慣習に関して、これまでの数十年を振り返ると、
・終身雇用
・年功序列
・新卒一括採用
という感じ。
業界や企業規模によって、その色合いの濃さは異なると思いますが、多少なりともその文化は日本の会社に今も根付いているかなと。

終身雇用を前提に、年功序列で給与や役職を設定すると、同じ業務(エンジニアリング)に永続的に従事させるわけにはいかない、というのは企業論理として仕方がないのかな?とは思っていて。

となると、
・役職をあげる
・配置を転換する
・特定のミッションを与え続ける
のいずれかの選択肢を提供することになるわけですが、研究開発や技術調査など、「特定のミッションを与え続ける」ということは、ある程度企業体力がないと難しいわけで。
役職をあげるとなると、部下がいて、自ら手を動かしてエンジニアリングをするという機会は減っていったり、配置転換によりそもそもエンジニア職でなくなったり、そういったことにならざるを得なかったんだろうなと思っています。

技術革新における職種の成熟

技術革新により新しい職種が生まれてきたと思うのですが、新しい職種は最初は「エンジニア」などの汎用性の高い言葉で表現され、時間が経つにつれて、職種として成熟してきたと思っていて。
つまり、「エンジニア」が「◯◯エンジニア」、「◯◯エンジニア リーダー」「VPoE」という形で分化していく感じ。
「セールス」でいうと、「フィールドセールス」「インサイドセールス」という形で分化してきているかなと。

企業の経済合理性を念頭におくと、マネジメントまわりと整えてから細分化していくプロセスになると思うので、マネジメントや職位としての縦の細分化と、役割の細分化としての横の細分化については、比較的縦の細分化の方が先に進行するのではないかな?と思います。

そして、「35歳エンジニア定年説」は、マネジメントや職位としての縦の細分化が進む中で、転職やフリーランスという選択肢が少ないことにより発生した言葉なのかなと。

今となっては、ある程度エンジニアという職種における縦の細分化、横の細分化が進み、それぞれの職種の中で「何を以ってスキルが高いとするか」というところにフォーカスされ、スペシャリストとしてのキャリアアップ機会も増えている印象。

それぞれの職種におけるコミュニティも増え、細分化された中でコミュニケーションの密度が濃くなってきているかなと。
過去に生まれた職種についても細分化の整理をし直してみたり、コミュニティを作り直してみるのは面白いかも。
(エンジニア以外でそこにインセンティブが働くかどうかはわかりませんが・・・汗)

さいごに

・転職が一般的になってきた
・フリーランスや副業などの働き方もより選択しやすくなってきた
・エンジニアという職種が成熟してきた
というところから、「エンジニア35歳定年説」という言葉は過去のものになりつつあるかなと思っていて。

なので、結論は以下の感じというわけでした。
・「エンジニア35歳定年説」という捉え方は一定割合残りつつも、言われ始めた当初ほどではない
・技術革新の過程の中で、特定の職種について「◯◯歳定年説」的な言語化をすることは今後も発生し得る(暗黙の可能性もあり)

以上、「『エンジニア35歳定年説』を3つの観点で整理してみた」というテーマで書かせていただきました!
お読みいただき、ありがとうございました!

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