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大好き、君の不幸と君の笑顔『ファストフード物語』

五月十一日。

大好き。なんてストレートな表現だろう。
僕はその言葉を君の笑顔に捧げよう。
胸の内がポカポカするくらい、好きだから。
五月晴れくらい、はっきりした気持ちなんだ。

同じくらい、人の不幸を愛している。
恐ろしくクソみたいな人間ですけどね。
しょうがない。そうやって生きてきたから。
僕は心に悪魔を宿しているんだから。

正邪の天秤が平行になっているんだよ。
それが僕。幸も不幸も味方にする男。
正義と不正義を掛け合わせて生きています。
だって、そうしていないと生きていけないから。

ある日、君は突然死んだよね。ほんと、突然。
僕は無気力。まるでセミの抜け殻みたいになっちゃって。
だいぶ痩せたんだよ。頬骨も出っ張っちゃったな。
君はどこへ行ったの? 僕も連れてけよ。

僕は君を愛している。それはずっと変わらないね。
だけど同時に不幸も愛している。それも変わらない。
そうやってバランスをとって生きているんだ。
歪んだ思考は、僕を生かすための点滴だな。

君を愛している感情は、間違いなく不幸だ。
僕が不幸を喰らい尽くすほど、君を愛してしまう。
君の笑顔は、僕を不幸のどん底に突き落とす。
僕が不幸にキスをすれば、君としたことになる。

大好きだよ。君の不幸も君の笑顔も。全部好き。
だから僕はあらゆる君を飲み込んでいくんだ。
重いなんて、誰にも言われたくないよ。
僕の気持ちを知っているのは、僕だけしかいない。

価値観なんて、当人しか知らないんだよ。
だから僕は不幸を愛してしまうことを肯定する。
そうしていつしか僕が生命を終えて死んだとき。
きっとあらゆる感情から解放されるんだろうね。

残るのは、僕が君を愛していた記録だけ。
この日記帳だけが僕と君を描いた印。
もう、そろそろ世界も騒がしくなるから。
そのうち行くよ。そのうちね。

じゃあ、また明日。


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